7.拳銃のバラード (3回目)
 5月22日 (木曜洋画劇場)
今回の放映は3回目ですが、公開当時の文章を紹介します。
山賊兄弟のベドージャとキンキを追う二人のガンマン。黒ずくめの若い賞金稼ぎニグロス(アンジェロ・インファンティ)VS革のマントを羽織った初老のガンマン、グッド(アントニー・ギドラ)。

二人のガンマンが登場する度にバック・ミュージックが流れ、後半の洞窟内の戦い(グッドの電光石火の背面撃ち炸裂!)から、馬で逃げる山賊兄弟をニグロスとグッド人が、馬で追い駆ける時に響き渡る絶妙な音楽。これこそがマカロニの醍醐味、何回見ても飽きない場面です。

ストーリーはどことなく『夕陽のガンマン』に似ているところはあるものの、間延びしない脚本を書いたのは、悪役のベドージャを演じたアル・ノートン(本名、アルフィオ・カルタビアーノ)で、本映画の監督もしています。こういうところがマカロニ・ウエスタンの魅力で、映画作りの上手さでしょうか。

「マカロニ・オヤジとつぶやきの用心棒」(一)に書いてある歌詞は言うに及ばず、全編に流れる音楽の数々、登場人物のクールなファッションと小気味よいアクションの連続、エンディングでの二人のシンプルな決闘。マカロニ・ウエスタンの面白さが本編(約95分)に凝縮されています。

 8.真昼の一匹狼(2回目)
 5月29日 (木曜洋画劇場)
今夜の真昼の一匹狼は、1昨年の4月に放映されてから二回目の登場です。その時もTVを観た記憶が全くなかったので、解説本を参考にして記事を書きましたが、今回はネットの情報を元に少しだけ書くことにしました。

主演のロバート・マークについては、何の記憶もありませんが、ネットに掲載されている写真を見ると、やはりマカロニ風な顔をしています。DVDを国内で取り寄せることは困難なようです。

書き込みにも色々な情報がテンコ盛りで、特に目を引くのは音楽を担当したのが、“ブーベの恋人”のカルロ・ルスティケリで、ほかにもたくさんの名曲があります。“禁じられた恋の島”や“誘惑されて捨てられて”、“鉄道員”、それと筆者が青春の頃、大ヒットした“死ぬほど愛して”などです。

なお、この歌は『鉄道員』の監督・脚本・主演で有名なピエトロ・ジェルミが、同じく監督・脚本・主演をした『刑事』の主題歌です。マカロニ・ウエスタンの名もない映画の一本からネットを介して、このような情報が得られるなんて、感謝感激猫あられです。たかがマカロニ、されどマカロニです。

 9.続・荒野の1ドル銀貨 (2回目)
 6月2日 (月曜ロードショー)
 「ジュリアーノ・ジェンマ特集」に書いてあります。

 10.五人の軍隊 
 6月12日 (木曜洋画劇場)
本映画は監督がアメリカ人のドン・ティラー(『新・猿の惑星』や『オーメン2』などがあります)で、主演も『スパイ大作戦』で有名なアメリカ人のピーター・グレイブス。

共演者の一人が丹波哲郎で、ほかのスタッフはイタリア人、舞台はメキシコ革命の戦時下、ロケ地は多分スペイン、音楽はご存知のエンニオ・モリコーネです。日本での劇場公開が1969年となっており、俳優のみならずアメリカの監督までが、マカロニ・ウエスタンを製作しました。まさにマカロニ・ウエスタンが世界を駆け巡っていた時代でした。

この映画の最大の見所は政府軍の列車に四人が乗り込み、軍用金が積まれている貨車を一車両だけ連結器から外し、さらにその貨車をレール切り替え機で本線から切り離し、(この作業は怪力のバッド・スペンサーが演じていました)貨車が見事に車庫に納まった場面と、その時のマカロニ・ウエスタン特有の音楽です。従来のマカロニ・ウエスタンとは、一味違うスカットした場面でした。

また、五人が政府軍に捕らえられている捕虜を救出したあとで、荒野を疾走する馬と青い空、エンニオ・モリコーネの奮い立たせるような音楽。さらにはエンディングの革命軍による五人の歓喜に満ちた胴上げのシーンでの登場者全員の素敵な笑顔。あのスクリーンにもう一度、会いたい映画のひとつです。

 11.皆殺しのガンファイター (2回目)
 6月19日 (木曜洋画劇場)
木曜洋画劇場でマカロニ・ウエスタンを観るのは、この半年間で7本目です。前回の時は何の情報もなく書きましたが、その後、DVDを購入したのでストーリーを簡単に書きます。

シェイクスピアに憧れる芝居好きのジョー(アンソニー・ステファン)は、謎の死を遂げた叔父から金鉱を受け継ぐ。だが遺言通りに町を訪ねると、金鉱は悪党のバーグ(エドゥアルド・ファヤルド)一味に奪われていた。叔父の死に疑問を持ったジョーは、単身一味に戦いを挑む。単純なストーリーではあるが、クライマックスのマカロニ史上最長の大銃撃戦は迫力あるし、何と言っても戦いが済んでの日本語のやり取りが面白い。

馬に乗ったジョーは、「シェイクスピアという男に会いに行く」と言って立ち去ります。残された人たちが「シェイクスピアって誰?」と言う問いに、
「さあ、海の向こうのガンマンだろう」と答えます。

このユーモアのセンス! これこそマカロニだから許されるジョークです。そう言えば、団塊世代に告ぐ“帰ってきた初老のガンマン達”、4)ギルバート・ローランド『ジョーニー・ハムレット』の中で述べた有名な言葉、「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」というセリフも本映画に使われています。

それにしても、こうしてDVDを何度も観て検証していくと、マカロニ・ウエスタンという映画は何と奥が深いのだろうかと思わざるを得ません。劇場公開時やTV放映時は、ただ単にマカロニ・ウエスタンの醍醐味、一口に言ったら主人公の格好いいガンプレイと残酷なシーン、素晴しい主題歌の数々・・・・・・などでした。今まで何回も出てきた聖書からの言葉、前述のリンカーンの言葉、「愛と暴力では、常に愛が勝つ」。今回のシェイクスピアの言葉、それ以外にも多くの名言が使用されていることと思います。

 12.荒野の墓標 
 6月20日 (ゴールデン洋画劇場)
このところ、ゴールデン洋画劇場がある金曜日にマカロニ・ウエスタンを観るのは、昨年の6月28日に放映された『情無用のジャンゴ』以来、ちょうど1年ぶりですが、マカロニ・ウエスタンが放映されていても、観られなかった日があったのかもしれません。それはともかくとして今夜放映の『荒野の墓標』は、シェイクスピアのロミオとジュリエットのマカロニ・ウエスタン版だという触れ込みだったようです。

ストーリーは完全に忘れているので、ある解説本からの情報を元に、簡単に書かせて頂きます。アメリカ人のマウンター一族とメキシコ人のカンボス一家の土地をめぐる争いに、前者の息子ジョニー(ピーター・リー・ローレンス)と後者の娘ジュリエッタ(クリスティーナ・ガルボ)の恋愛を軸にして、両者の間に血みどろの殴り合い、銃撃戦の連続で結局のところ生き残るのは、原作とは逆にジョニーとジュリエッタだったというのも、いかにもマカロニ的で製作者の努力が伺われます。

ところで、また例によって余談ですが、ネットで「荒野の墓標」を検索すると、取り残された太古の原始林・ピクナルズが出てきます。西オーストラリアの州都パースの北250kmにあり、人々はそこを荒野の墓標と呼ぶそうです。ナンバン国立公園内の一角にできた広大な砂地に、平たく大きな岩石が無数に立ち並んでいる姿は、まさに荒れた大地に突き刺さった墓標のよう。本映画の原題(何故殺しあうのか)を『荒野の墓標』と名付けた人も、アリゾナ・コルトを『南から来た用心棒』と同じで天才的です。ピクナルズのことを知っていたとしたら、もう尊敬してしまいす。

 13.夕陽の用心棒 (2回目)
 七月二十八日 (月曜ロードショー)
 「ジュリアーノ・ジェンマ特集」に書いてあります。

 14.無頼プロフェッショナル
 8月2日 (土曜映画劇場)
この映画はとっくに忘れていましたがネットを検索すると、もう大変です。何が大変だと申しますと、出演者がマカロニ・ウエスタンとしては物凄く豪華なことです。マカロニ・ウエスタンで一番ガンマンの名に相応しいと筆者が思っている主演のリー・ヴァン・クリーフに加えて、人気女優のジーナ・ロロブリジーダ、アメリカの演技派男優のジェームズ・メイソン、『二匹の流れ星』でジャンゴを演じたジャンニ・ガルコ、『新・黄金の七人』のガストーネ・モスキン、それに悪名高きエドゥアルド・ファヤルドとアルド・サンブレロがメキシコ軍の将軍と部下の関係で出演しています。1971年製作で劇場公開はありませんでした。

ストーリーを簡単に書きますと、主演のリー・ヴァン・クリーフ演じるキングは、仲間と一緒に銀行の床をぶち抜いて大金を奪い、列車に乗り込んで逃走する。この列車で知り合った美女(ジーナ・ロロブリジーナ)と意気投合し、クリーフには珍しく結婚するという設定である。まあ、このへんで、誰しも何かがあると思うのは当たり前で、案の定キングはこの美女に有り金残らず奪われてしまう。

その後、キングは昔の仲間を集め、メキシコ政府の火薬庫爆破の仕事を引き受ける。キングたちに火薬庫を爆破させ、再度高い金でメキシコ政府に武器を売り込もうとする死の商人(ジェームズ・メイソン)の依頼だったが、彼の妻はあの時の美女だった。アイデアとしては、やはり乏しいものがあり、スターをたくさんかき集めて製作しても、さほど話題にならなかったようです。

DVDが販売されているので、購入したいと思っています。DVDを観ればまた、いいところを見つけ出すことができるかもしれません。マカロニ・ウエスタンという映画はそういうものであり、誰もが忘れてしまった映画や劇場公開されなかった映画にも、何かがあるものなのです。

(その3に続く)