走る度に記録を縮めていた、あの頃。
走ることに恐怖など微塵も感じなかった。
走れば自己新。
時には一気に34分も短縮した。
初マラソンは、4時間08分。
昔陸上部だったというだけで、
ノリで走ったら見事に撃沈した。
しかし、その後は、走るのが楽しくて仕方がなかった。
5度目の挑戦で、サブスリーを達成。
その後、7回連続でサブスリーで走った。
サブスリーなんて簡単。いつでも走れる。
そう思っていた。
2時間40分を切るのを目標にしてから、何かが狂い始めた。
故障の連続。骨膜炎、腱鞘炎、疲労骨折、全て経験した。
内臓疾患まで起こしてしまい、走れば腹痛を起こした。
思うように走れないことによるストレスも重なって、
心も体もボロボロになっていった。
「暫くは、走るのを控えるように」と、
医者から止められたこともあった。
走れば走るほど、走れなくなり、記録はドンドン遅くなる。
元気に走っていた、あの頃が遥か昔のことのように思えた。
ある日、友人の紹介で、あるブログを読んだ。
そのブログには、「頑張らなくて良い」と書いてあった。
「今までの練習の7割程度の練習でも自己記録は出る」
その言葉が心に突き刺さった。
「ただ漠然と走っているだけではダメ」
「効率良く走って、効率良く休む」
「カラダの使い方のコツさえ掴めば、もっと速くなる」
そんな言葉が私の心の中にある何かを変えた。
「もう走れないんじゃないか」
「故障は、ずっと治らないんじゃないか」
「記録を追いかけるのは無理なんじゃないか」
そんな、暗く重たい思いは、みるみる晴れていった。
「自分のカラダは自分でコントロールしている」
「まずは、自分のカラダを信じてあげることが大事」
私は、自分の脚を毎日15分触るようになった。
そして、自分のカラダの声に耳を傾けるようになった。
朝起きてから、「今日も、一日ヨロシク」と語り掛け、
昼には、疲れている箇所をストレッチしながら、
「痛いところはないか」を確認し、
就寝前には、「今日も元気に走らせてくれてありがとう」
そう感謝の気持ちを語り掛けるようにした。
私は、それを来る日も来る日も続けた。
1ヶ月半くらい過ぎた頃から、みるみる体調が良くなり始めた。
故障も少なくなり、原因不明の腹痛も、自然となくなった。
毎日走れることが本当に嬉しくて、
走れる喜びを心から感じることが出来た。
かつてのように記録に執着することもなくなり
レースに出る楽しさが、より一層増した気がした。
本格的に練習を再開してから、半年後、
久しぶりにサブスリーで走ることが出来た。
もう無理だろうと諦めていた記録が、
以前よりも楽しんで走りながら達成出来た。
家族が、仲間が、皆が、私の走りを見て喜んでくれた。
かつての自分に近づけたと共に、かつての自分とは違う自分が
また新たな目標に向かって走り始めている。
今の私にとって、マラソンは、心と体のバランスを
整えてくれるもの。
だから、カラダを労ることが第一です。
決して、急ぎ足にならずに、一歩一歩着実に前進する。
一歩一歩進んだ先には、かつて目標にしていた
「あの記録」がある。
今はまだ、遠い遠い先にある「あの目標」に向かって、
私は、走れる喜びを感じながら、チャレンジを続けている。
私のチャレンジは、まだ、始まったばかり。
これからが、本当の意味でのチャレンジの始まりです。
私は、この脚と、この体と、この心と一緒に、
遠い先にある、「あの目標」に向かって
これからも、走り続けてゆきたい。