トルコの寝台列車ヤタクとクシェト | アーディで行こう

アーディで行こう

「普通」を意味する便利な言葉、「アーディ」 地元の足として、とことこ走るバスなんかを「アーディ バス」、エジプトではエアコンなし列車を「アーディ」 そんな方法での旅を紹介しましょう。
え、そんなの自分には無理だって? 大丈夫。「アーディ、アーディ」

アーディで行こうドゥ・エクスプレスに乗る
この春、トルコの首都アンカラからアルメニア国境にほど近いカルスまで、約1300kmを2回に分けて、ここを走るドゥ・エクスプレス(東急行)で移動しました。

ポラットルをぶらぶらした私たちが、次に向かうのはカンガル。プールに放たれた魚がついばむことで、皮膚病を治す不思議な温泉のあるところです。直線距離でも450kmありますので、昼間移動するなら1日かかるところ。時間がもったいないと思っていたら、イスタンブールからカルスまで向かうドゥ・エクスプレスがちょうどこのあたりを夕方とおりかかり、カンガルに朝着くというダイヤになっていたので、迷わず利用することにしました。

ポラットル駅で試しに聞いたところ、同駅を夕方5時頃発車で、カンガルまで寝台(2人で約80TL)は空いているということでした。まだ昼過ぎでしたので、時間つぶしと夕食にアンカラへ移動することに。「トルコの鉄道乗りある記2011春(2)YHT」でも触れたようにバイサル社の大型バスでアンカラのオトガル・アシュティへ。そこからメトロでアンカラ駅に行き、窓口でチケットを買おうとすると、なんと売り切れ! こんなことなら、ポラットルで買っとけば良かったと思っていると駅員から「クシェトを4人分買えば1室まるまる使えるよ」とのこと。

ヤタクとクシェト
そうなんです。トルコの夜行寝台には、Yatakヤタク(寝台の意味)と呼ばれる2人用の寝台の他に、KUŞETクシェトと呼ばれる寝台車があります。ヤタクは1人でも個室を占有できる寝台なのに対し、クシェトはヨーロッパでもかつて多かったクシェットと同様、いわゆるドミトリー。日本の個室以外の寝台車にあたります。現在のアジア側トルコではこれも扉が付いた4名用のコンパートメントÖrtülü Kuşetになっていますが、他人と同室になることもありうるところがヤタクとの違いです。1年前にヤタクに乗った際に、娘と添い寝すると意外に狭かったので、ならばとクシェト1室まるごと買うことにしました。

ちなみに、ヤタクは1室2名40~35TL(1名占有の場合70~47TL、列車により若干異なる)の寝台料金がかかるのに対し、クシェトは1名6TLとめちゃくちゃ安い!
なので、4名分購入しても112TLと、寝台に比べてそれほど高くなりません。


アーディで行こうトルコ夜行列車の料金と運賃
トルコ国鉄では運賃に寝台料金を上乗せする日本と似た方式です。ただし運賃は、急行などの種別・車両グレードごとに距離比例で決まっています。特急・急行料金を含んだ運賃ということですね。
運賃込みの列車別料金を早見するなら、トルコ国鉄のこのページ上段のyataklı vagon ücretleri (寝台車両運賃)が便利。

・TAM:一般運賃

・%20 İNDİRİMLİ:20%割引
  学割(13~26歳対象なので若年者割?)
  往復割引(200km以上)
  団体割引(12人以上)
  シニア割引(60歳以上)

私の経験ではよく「お前は学生か?」と窓口で英語で聞かれますので、外国人でもOKのようです。
この表では2割も引かれていないのは、割引が運賃だけで、寝台料金は対象外のため。例えば日本人がよく利用するアンカラeks.の場合、下欄を見ると1人占用寝台料金は70TLですから、運賃は30TL、それの2割引で6TLしか割り引かれないということですね。

・ÇOCUK İNDİRİMİ:子ども料金(7~12歳)
 こちらも運賃のみ半額となります。6歳以下で大人同伴の子どもは、無料です。

なお、このページではYATAKLI=ヤタクルとなっており、トルコの鉄道に関する他の文献でもヤタクルとされていることが多いですが、語尾のlıは「~付きの」という接尾辞で、後ろにVAGONがあるから付いているわけです。なので、寝台そのものはヤタク、寝台付きの~(例えばこのように車両とか、チケットとか)という場合はヤタクル~です。このLIのIはiアイではなく、上に点がないトルコ語特有の文字で、「イ」を発音するように口を横に引っ張りながら「ウ」を出せばだいたいOK。i も別にあります。こっちは大文字でも İ と点がついて区別されます。
ちなみに、クシェトの方は、Kuşetli vagon と li=リになりますが、トルコ語では助詞・接尾辞の母音が語幹の母音に応じて変化する母音調和がされるからです。なお、この接尾辞の基本形は li の方です。

クシェトの構造
アーディで行こう-クシェット室内アーディで行こうアンカラはウルスの名店ウーラクで鶏の丸焼きを肴にエフェスビールという贅沢?な夕食をしたあと、駅に戻れば定刻18時30分発のドゥ・エクスプレスは30分遅延で到着。クシェトは6号車で、その後ろ7号車のヤタクが最後尾。5号車は食堂車で、1~4号車は1+2人がけのサロンsalonと呼ばれる座席車となっています。トルコの夜行列車は、全車両寝台のアンカラ・エクスプレスを除いて、だいたいこのような編成です。
クシェットの構造は日本のB寝台簡易コンパートメントとほぼ同じ。枕木方向に沿って部屋の両側に2段寝台があり、側廊下との間にはドアがついています。上段を使わないとき跳ね上げておくのは同じですが、下段も寝台を跳ね上げると、座席がある構造です。その分、寝台時の上下空間がやや狭いですが、昼間使う時間が長いトルコに適した方式ですね。これはヤタクでも同じです。ヤタクルと違うのは、冷蔵庫やテーブル、洗面が付いていないこと。また、寝台のシーツや布団も、車掌が付けてくれるヤタクとは異なり、乗客自らベッドメーキングしなければならないようです。

さて、ウーラクでも呑み、さらにアンカラ駅のキヨスクでもエフェスビールを買い込んでいた私たちは、出発後1時間もすると眠くなり、20時頃には上の寝台をセットして娘を寝かせ、しばらくして自分たちも眠りについたのでした。