宇野side




次の日から千晃ちゃんは練習に参加した.  よくよく考えたらよろしくねも言わないなんて嫌な奴だと反省して、仲良くしようと決めた.



宇「……」




千「……」




静かな女子更衣室.   耐え切れなくなって私から話しかけた.




宇「あの…千晃ちゃんだよね、よろしくね」



千晃ちゃんは目をまん丸にして驚いた顔をした……って、顔小さっ!




千「……えっ、あ、ありがとう‼︎ 私、伊藤千晃!」



宇「知ってるよ、(笑) 昨日言ってたじゃない、」



千「そっか、ごめんっ、嬉しくて……」



宇「嬉しい?」



千「あの…歓迎されてないと思ったから。ごめんねこんな時期に加入なんて、」



やっぱり…勘付いてたのか.  罪悪感が残る.  こんなに可愛い子を悲しませたなんて



宇「ちょっとびっくりしただけだよ、私だけじゃなくてメンバーもきっとそう。気にしないで」



千「ごめん、ありがとう。あの…名前は、」




宇「宇野、宇野実彩子だよ。宇野ちゃんとでも呼んで!私は……千晃でいいかな?」



千「うんッもちろんだよ宇野ちゃん!!!」



宇「へへ、よろしくね、千晃」



千「こちらこそよろしく、宇野ちゃん」



……いつのまにか、メンバーが《敵》だなんて、そんな考えはすっかり抜けてた.



相手が千晃だったからなのかな、



まぁともかく、この日初めて、私はメンバー内で《友達》を作れました.









その後すっかり仲良くなった千晃にフリを教えていると聞こえてくる怒鳴り声.




ーーおい日高!!!ここのフリ違うだろっ



ーーあってるよお前がちげぇんだろ




ーーあ?お前まじ舐めてんのか?




ーー舐めてねぇよ、どうやったらそんな解釈になるんだよっっ




あぁ、また始まった



秀太と日高くんの喧嘩を横目に見ながらフリを教えるのを続けていると千晃が驚いたように縮こまっていた.   え?何かあった?



千「…宇野ちゃん、喧嘩してるよ…っ」



あ、そうか、千晃は初めてみるのか、



宇「……あー、いつものことだから気にしないで」




千「い、いつも……?」



宇「そう、いつも」



千「そ、そうなんだ……」




驚きを隠せていない千晃を見て、初めて喧嘩が起きた時の私を見ているような気分になった.




千「あの、さ、」




宇「ん?」




千「あの…金髪の男子いるじゃん?あの人、よく喧嘩してる横でダンスの練習してられるね」




宇「あー、あの人ね変わってるの。あんまし関わらない方がいいよ、」



千「そうなんだ…気をつける。名前は?」




宇「西島隆弘。にっしーって呼ばれてるよ」




千「よし、覚えとく」



メンバーのことについて話せる友達なんて今までいなかったから、かなり新鮮だった.



今まで女子一人で抱え込んできた不安やストレスを二人で共有できるのが嬉しくて.



千晃の存在が日に日に大きく、温かくなっていくのを感じていた.



メンバーが怖くて歌を歌えないだとか、みんなより半年遅れてるからダンスが下手なんだとか、色んなことを相談しあって、分かち合って.








ーー……そんな時だったね、マネージャーに呼び出されたのは.




マ「新曲の発表です」




千晃が私を見つめる.  千晃の顔はかなり強張っていて、きっと私も同じような顔なんだろうなとか、



盗みみたにっしーの顔はいつも通り.  なんの感情も読み取れなかった.



{CC646BA6-3C77-42C2-AE78-5C9B27C8782B}



次もいいね70で出します!