宇野side




次の日.






宇「  …おはよ 」






西「 …はよ 」





待ち合わせ場所にいた隆弘はやっぱりどこか不機嫌そうで下ばかり見ていた .  意地っ張りな私は  ごめん  なんて無意味な謝罪をしたくなくて 黙ってしまう.




西「 …行くぞ 」




君は 低音のまま つぶやいて歩き出す .  慌てて横を歩くけど なんかいつもより早くて 私はどんどん早歩きになっていって… 




宇「 …隆弘 」




西「 …… 」




ガン無視のくせにちゃんと歩道側を歩いてくれる 優しさと冷たさが入り混じって私はまた翻弄されて.  だけど横顔にはやっぱりなんとも言えない近寄りがたさがあって少し落ち込む.




そんな君の白シャツにはオレンジ色が揺れていて どこからか湧き出る 安心感.  結局私は単純なんだ .




宇「 つけてきてくれたんだね ネックレス 」




西「 …… 」




宇「 ちょ 隆弘 歩くスピード早いってば 」




西「 学校 遅れる 」



宇「 あと20分もあるし  第1そんな優等生じゃないでしょ 」




西「 …… 」




宇「 隆弘… ? あのさ、 虹川沿い行こうよ 」




西「 は  なに急に、」





宇「 だめ ? 」




大きく見開いた目.  普段真面目な私がこんなことを言い出すなんて滅多にないことだからだろうか .





西「 …飛ばすぜ 」



右の口角をニヤリと上げて 、 私の右手がふわりと取られる .走り出した隆弘の背中と繋がれた手 .  学校への道から方向転換 .




宇「 た たかっ 早いっ! 」



西「 黙ってろ 舌噛むぞ 」




隆弘持ち前のふわふわの茶色い髪が風になびく.  言葉には棘があるのに言い方はどこか優しい君 .  表情は見えないけど優しく包み込まれた手は暖かい .










西「 とーうちゃくっ 」




宇「 はあ はあ… っ  隆弘 早すぎなんだよ ばか 」




西「 ほんっと 運動音痴だよな 実彩子は 」




宇「 馬鹿にしないでよっ 」




西「 ムキになるなって 」




膨らませた頬をぷにぷにと摘んでくる隆弘に更に怒りを覚えてキッと睨みつけてやると シワを寄せながら微笑ましそうに笑う君 .




宇「 あ 私もバイトするから 」




西「 話の流れおかしいだろ てかお前なんで今? 受験なのに」




宇「それは隆弘もでしょ ! 私も隆弘と一緒で週2くらいにしてもらうから 大丈夫 」




西「 ふうん .  で、なんで?」




宇「 笑わない? 」




西「 笑うかよ 」




宇「 留学、してみたいから お金 貯めたいの 」




西「 ああ 、 四葉大学って 英語盛んだもんな 」




宇「それに、隆弘の誕生日プレゼントも買わなきゃだしね?」




ふふ、と笑って隆弘の顔を覗き込むと、どこか憂鬱そうな、微妙な顔をしていた.   あれ もっと応援してくれるかと思ったのにな .




西「 どこで働くの ? 」




宇「 ……まだ、決めてない 」




西「 俺んとこは? 」




宇「…いや それは悪いから 」




西「 人手足りなくて困ってんだよ、逆に来て欲しい」




宇「 同じバイトするってなったら、またママとか千晃とかに誤解されるよ?」




同じカフェで働くってなったら きっと愛梨も黙っていないだろうし .  そういうことになるなら一緒のバイトをしなければいいって話で.





西「 そんなの 、気にしなければいい 」




宇「 私は気にするの 千晃に紹介してもらうから…ごめん」




西「 …そ .  ってか なんで千晃 ?」




宇「 なんかね  千晃の従兄弟さんのバイト先で募集してるんだって.  まだそこって決めてはいないけど」




西「 …ふーん」




あーあ、また機嫌悪くなっちゃった .  最近 本当に高低差が激しいな .




キーンコーンカーンコーン




1時間目の終わりのチャイムが鳴ったのが分かった.  クローバーで埋め尽くされた草っ原から勢いよく立ち上がる.




宇「よし、もうそろそろ行こう ? 」




西「……そうだな」




宇「  …機嫌なおしてよ 」




西「…別に悪くない」




宇「……あ、そ」







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