■まさしく、かねてより警告されてきた「通常震災と放射能災害が複合・増幅しあう『原発震災』」が現実のものとなってしまった 

 16日(水)である。
 朝起きるたびに、福島原発は、さらに悪化の一途をたどっており、暗澹たる気持ちになってしまう。
 まさしく、かねてより警告されてきた
「通常震災と放射能災害が複合・増幅しあう
『原発震災』」
 が現実のものとなってしまったのだ。

 本ブログの読者の矢野さんから、
「有馬温泉は通常の4000倍の放射線を浴びているともいいます。
 私も門外漢なので詳細はわかりかねますが、東大病院の放射線治療チームがツイッターで事実を述べられているので、参照されてはいかがでしょうか。
http://twitter.com/#!/team_nakagawa
 ツイッターアカウントを取得すれば(無料)スムーズに見れると思います」
 との情報を頂戴した。
 有馬温泉は、兵庫県のはず。
 但し、東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一氏は、放射線治療部門の責任者という立場から、今回の、福島原発事故に関して医学的見地からのコメントをテレビなどを通じて発言している方である。
 有馬温泉のことは、今の私には何とも言えないので、皆さんも、是非参照して頂きたい。

■「プルサーマルは事故のリスクが高いだけでなく、事故が起きた場合の汚染範囲が格段に広いといわれています」

 ところで、福島原発の3号機のプルサーマル炉については、テレビではまるで触れられない。
 明らかに情報操作が行われている。
 私が原発問題で独学ながら勉強したのは、チェルノブイリ原発の爆発事故の折のことなので、随分昔の話になってしまったのだが、この度、一度に4機もの原発が崩壊しつつあるという人類がかつて味わったことの無い未曾有の危機に直面していることもさることながら、プルサーマルのその危険性を考慮すると、特に3号機のプルサーマルは無視できないので、国民は正しい情報を得るべきと考え、以下に私なりに情報収集したものを紹介させて頂く。

 以下は、2005年頃に開催されたと思われる、元京都大学原子炉実験所講師・小林圭二氏によるプルサーマルに関する講演
『聞いてよ!知ってよ!危険なプルサーマル計画』(主催:平和フォーラム、島根原発増設反対運動)
 の要旨で、既にネット上に公開されているものだ。
 なお、講演は、島根県松江市で行われたもので、講師自身の了解とチェックを受けたものだとのこと。
 オリジナルを、あるいはもっと詳しく知りたい方は、是非
『プルサーマル、プルサーマルの問題点』
 を検索して頂きたい。
 その前に、以下、『聞いてよ!知ってよ!危険なプルサーマル計画』の要旨の要旨である。

「プルサーマルとは、原発の使用済み燃料から再処理して取り出したプルトニウムをウランと混合した核燃料・MOXに加工し、普通の原発(軽水炉)で燃やして再利用することです。」

「プルサーマルは事故のリスクが高いだけでなく、事故が起きた場合の汚染範囲が格段に広いといわれています」

「1番の危険性は、プルトニウムが
『吸い込むと1gで約50万人を肺ガンにできる』
 猛毒物質であることと、核兵器の材料であることです」


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●「聞いてよ!知ってよ! 危険なプルサーマル計画」 

 プルサーマルとは、現在稼働中の濃縮ウランを燃料とする原発(軽水炉)に、プルトニウム燃料(MOX燃料)を新たに加え使うことである。
 プルトニウムは天然に存在しない。
 原発の運転によってウラン燃料に含まれる燃えないウラン(ウラン238)が少しずつプルトニウムに変わり、徐々に溜まっていく。
 原発の中で高速中性子が減速材である軽水にぶつかると、軽水から熱中性子が飛び出す。熱中性子が燃えるウラン(ウラン235)にぶつかると、ウラン235は核分裂し、2~3個の高速中性子が飛び出す。熱中性子が燃えないウラン(ウラン238)にぶつかると、ウラン238はプルトニウム239に変わる。

 
プルトニウム239は、使用済ウラン燃料を燃料プールで冷却して放射能の減衰を待った上で、再処理工場に運んで化学的に処理・分離して取り出される。
 MOXとは、こうして取り出したプルトニウムを劣化ウラン(採鉱・精練したウランを転換し、濃縮した後の残りかすの燃えないウラン)と混ぜたものである

 MOXの粉末を焼き固めてペレットにし、多数個被覆管に詰めて燃料棒とする。原子炉には、燃料棒を多数本束ねた燃料集合体の形で装入される。多数の燃料集合体(島根原発2号では560体)を並べて原子炉の炉心が構成され、そのうちの最大1/3(島根原発2号では228体)にMOX燃料集合体が使われる。

 なぜ今、プルサーマルの話がでてきたのか
 日本の原子炉政策としてのプルサーマルは1961年の第2回原子力開発長期計画から国の計画に掲げられてきたが、1980年代末にごく少数体の試験(沸騰水型では敦賀1号のわずか2体で1回)を実施しただけで、これまでほとんど動きがなかった。
 ところが、1997年に入って各社が急にプルサーマル計画実施の動きを始めた。
 1995年の高速増殖炉もんじゅの事故が大きな決定的な理由である
 プルトニウムの使用目的がなくなり、プルトニウムを取り出す資源のはずの使用済みウラン燃料が核のごみに過ぎなくなると、再処理工場を作られている六ケ所村や原発の地元は使用済みウラン燃料の捨て場になる恐れを感じ、使用済みウラン燃料の受け入れや原発内貯蔵プールの増設を拒否する。使用済み核燃料の行き場がなくなれば、すべての原発を停止しなければならなくなる

 
一方、プルトニウムは核兵器の材料である。
 日本は核兵器開発の疑いをかけられないように、余剰のプルトニウムを持たないと国際的に約束している。英仏両国に再処理を委託して取り出された40tものプルトニウムが使い道のないまま保管されることになると、国際約束違反になってしまう


 引き続き原発を動かすためには、プルトニウム使用の実績を作らなければならない。国はプルトニウムの新たな使い道として、資源の節約を謳い文句にプルサーマル計画を急いで立ち上げようとしたが、国産MOXの準備が無い。
 関電(加圧水型)は英国BNFLに作らせて輸入したが、反原発団体に製造データの捏造を見つけられて1999年計画は中断した。
 東電(沸騰水型)のプルサーマルは2002年の東電原発の事故隠し事件によって福島県に拒否され、新潟県では刈羽村住民投票によって拒否されたまま、再開の目処はたっていない。

 プルサーマルは商業的ペースで実施されるので、経済性の悪化を最小に押さえる必要があり、安全性より経済性が優先される
 現行の軽水炉をプルトニウムを燃やすのに適した構造に変えることはしないまま、MOX燃料を使う。
 また、加工、輸送、貯蔵等の費用や手間を抑えるため、1度にできるだけ多くのプルトニウムを使おうと、プルトニウムの濃度(=プルトニウム富化度)を高くする。
 推進側は各国に実績があるというが、日本のプルサーマルは世界で実績の無い高含有率で始めようとしている。
 またウラン燃料との混ぜて使うことの問題には目をつぶり、試験過程抜きで、いきなり商業利用でスタートする。

(注)富化度は国によって規制値が違うが、核分裂性プルトニウム最大で、ドイツ:4.65、スイス:5.5、日本:8。全プルトニウム最大で、フランス:6.6(平均5.3)、ベルギー:8.2(平均7.7)、日本:13。

 今の原発となにが違うのか
 MOX燃料はウラン燃料と全く性質が違う。
 MOX燃料は、ウラン燃料に含まれるウラン235とウラン238に加え、プルトニウム238~242の計7種の複雑な元素の組成を持つため、燃焼設計や燃焼管理が大変である。
 しかも、プルトニウム238~242はウラン燃料の20倍以上も中性子を吸収することにより、炉の性質を変えてしまうし、プルトニウムは半減期がウランよりずっと短いため、強い放射性毒性を持つとともに、使わない間も燃料の劣化がどんどん進む

 今の原発はウラン燃料用に設計されたものなので、装荷できるMOX燃料集合体数が制限され(1/3まで、伊方は1/4まで)、燃焼管理が複雑になる。
 今の原発は新燃料の時はプルトニウムが無く、燃焼中に徐々にできて溜まり、1部は燃焼している。
 推進側は
『今の原発でもプルトニウムがあり、燃えているのだから、プルサーマルになっても同じ』
 と主張するが、全くの誤りである。
 今の原発ではプルトニウムのでき方燃え方が炉心全体になめらかな分布をなして進行するが、プルサーマルでは多いところと少ないところが明確に分離し、境界では性質が突然変化するため、燃え方にばらつきがあり、よく燃えた個所で燃料破壊が起こりやすくなる。 
 現場でプルトニウムを扱うようになり、しかも取扱量や流通量が飛躍的に増大する結果、作業者の被曝量が増える
 また、核兵器物質が拡散する危険が増大するため、これまで以上の核拡散の防護措置が要求され、住民監視の強化、情報機密の拡大から管理社会に道を開く。

 運転上の問題もある
 ウラン燃料のみなら熱中性子の分布は滑らかだが、MOX燃料ではプルトニウム集合体が熱中性子を吸収する。
 制御棒は中性子を吸収することによって反応を抑えるが、MOX燃料ではコントロールできる中性子の量が減る。
 電力会社は放置しているわけではなく、燃え方の斑(まだら)をできるだけなくすために、内側に行くほどプルトニウムを濃くするなど十分ではないが工夫はしている。
 沸騰水型では1本の中での濃度を違えている。
 こんなことを考えたら、経済的負担であるし、濃度を間違えたらどうなるかの問題もある。

 燃料そのものの問題もある
 混ぜて使うが、絶対きれいには混ざらず、所々にプルトニウムの固まり、プルトニウムスポットができる。
 その結果、ガス状の核分裂生成物(=死の灰)の放出率が大きくなる。
 プルトニウム富化度を上げるほどプルトニウムスポットは増えるが、日本の富化度は高く、欧米にも例をみない。
 プルトニウムスポットの数と大きさは製造法によって異なるが、現在電力各社が発注を予定しているメロックス社の製法はスポット数も大きさも最も大きい1番劣った製法である。
 MOX燃料とウラン燃料の放射性を比較すると、新燃料で中性子が約1万倍、γ線で約20倍で、トラックで運び、積み下ろし、納める間の作業者の被曝がずっと多くなる
 被曝についてはこんなエピソードがある。
 東電の柏崎3号炉で住民投票の前に討論集会があった。動員された作業者が僕に本当かと訊ねた。僕が本当だと答えても信用せず、保安院の委員長にも尋ねたが、彼がその通りだと答えると気の毒なほどうろたえていた。

 プルサーマルに資源節約の効果はない
 使用済みウラン燃料中のプルトニウムと残っている燃えるウランとの合計は燃料の価値にして新品ウランの約50%。再処理と燃料加工におけるロス率を合わせて約10%とすると、使える量は45%。
 これを原発に入れて燃やすと約1/3燃えるので、使われ、節約することになるのは約15%。
 一方で、プルサーマルは、再処理、MOX燃料加工、輸送、貯蔵、使用済みMOX燃料の処理・処分、被曝対策、核拡散防止対策のそれぞれに、ウラン燃料では不要の大量なエネルギーを余分に使う。
 これらを“節約”分から差し引くとマイナスに?
 国策になっていたプルサーマルを放置していたのは何のメリットもないから。
 電力会社については経済的圧迫で、やりたくなくて、やりたくなくて、しようがない。

 プルサーマルは商業ペースで、ウラン燃料についてだけみても、できるだけ燃焼度を上げようとしている。
 富化度も上げようとしているし、プルトニウムよりもっと危険なアメリシウムなどの放射性物質の燃焼もやってしまおうとしている。

 先行各国はプルサーマルから撤退した
 アメリカ、スウェーデン、オランダ、イタリアは10数年以上前に中止し、ベルギーは最近中止した。
 ドイツやスイスは来年の中止を決定。
 残るフランスも拡大を止め、現状維持の方針である。
 止めた理由の1は経済性、2は核兵器の材料が国中で大量消費・大量移送されることになるからである。
 与党は2/3を越えた。憲法改正の動きには野党の民主党も。原子力基本法も変えられる。
 安倍晋三官房長官は2年前早稲田大学で
『日本は核兵器を持てる』
 といっている。

(質疑応答)
Q 使用済みウラン燃料は?
A そのまま埋めるか、再処理して死の灰を取り除くかだが、日本は後者だ。

Q 推進派から以下のことを聞いたが
1 ふげんは400回以上の実績がある。
2 プルトニウムの毒性は一般の重金属並みで、たべてもすぐ排除される。
3 事故を起した場合のウラン燃料との違いは

A
1 プルトニウム富化度がふげんの場合2%程度だった。
2 未だに「たべても大丈夫」という話が?動燃も撤回した。
  たべてもだめだが、1番危ないのが吸い込んだとき。
3 被害の違いは余りない。ウラン燃料の事故だけでも危険。プルサーマルは今の軽
  水炉が辛うじて持っている安全性の余裕さえ削られていくという問題である。
  島根原発3号は地震が起きるようなところに作るのが問題
  プルサーマルは政治的な問題としてとらえて欲しい。

Q MOX燃料の「英国は品質管理が悪く」といわれたが、英国のにしなかったのは。
A メロックス社のは1番安い。英国のは、高速増殖炉の技術なので、高くつく。
  ボルトが入っているかも知れないし。

Q 国道の近くに住んでいるが。
A 輸送のときの高い線量が許されるなら、5m以内に近づかない方がいい。事故が
  起きない限りは時速80kmで飛ばしているようなので、安全の問題もないかも知
  れない………。

Q プルサーマルの放射性廃棄物は?
A 「再処理できるところがなかったら、許可が下りない」が国の方針。九電は玄海
  のプルサーマルで国内の再処理施設において再処理する。再処理されるまでは保
  管するとしたが、著しい違反である。第2再処理工場は2010年頃から方針を検
  討するといっている。

Q 使用済みMOX燃料の危険性は?
A 核戦争防止国際医師会議報告書によれば、地中に埋められる温度に下るまでウラ
  ン燃料は30~50年だが、MOX燃料は500年かかる。
Q 500年島根原発に?
A 再処理の目処が立たなければ、そういうことになる。



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