おいらが野口悠紀雄の本を読んだきっかけは
ToDo管理をどうしたらよいか? という
関心からだし
これを問題にしたのは
それまで習慣になかったことを
どうすれば習慣として定着できるか?
という課題があったからだ

例えば、おいらは仕事が夜勤なので
職場で一泊することになる
この際、当然顔を洗うために
タオルを持っていくのだが
この仕事を長年やっているにも関わらず
タオルを忘れてしまうことがあるのだ
そこで、かつては職場にタオルを置きっぱなしにしたのだが
靴と同じで、同じタオルを繰り返し使っていると
すぐ繊維がごわごわになるし
匂いもひどくなってしまう

そこで、 自宅で使っているタオルとあわせて
適宜洗濯して輪番にした
つまり、自宅の風呂場や洗面所で使ったものと
職場で使ったものを洗濯し、洗濯済みのものと交換する
というごくごく当たり前のことだ

洗濯済みのタオルは結構なストックになるので
勘違いかもしれないが、こんな具合に交代で使っていると
トータルのタオルの寿命は長くなったような気がする

ただ、職場から持ち帰ったタオルをカバンから洗濯カゴに移し
洗濯済みのタオルをカバンに入れてしまうと
次回出勤の際にタオルが既に交換済みかどうかが
はっきりしなくなるのだな
他方、洗濯すべきものをすぐに洗濯せずに鞄に放置しているのも嫌だ

そこで、帰宅したらすぐに使用済みのタオルは洗濯カゴに入れつつ
新しいタオルは鞄に入れないことにした
出勤前に鞄にタオルがなければ
使用済みかどうかで迷うことなく
洗濯済みのタオルを詰めて持っていけばいいからね

ところが、出勤前に鞄の中を確認し忘れて
職場到着後にタオルがないことに気づくことが続出した

この手のちょっとした忘れ物が相当多くある
PHSを忘れることもある
ウィルコムのX PlateとDELL Streakの組み合わせだと
スマホは通話できない(そういう商品・サービスなのだ)
(あと、ダブレットだとでかくて邪魔だがスマホならそうでもなく
スマホでGoogleカレンダーを参照しながらPHSで電話
なんて使い方ができるので、通話もモバイルもスマホで統一
というのは、おいらに言わせれば端的に不便だ
なので、フィーチャーフォンを支持する気はないが
スマホへの完全移行には反対だ)
加えてスマホは電池の持ちが悪いのでいちいち電源を切っている
このため、常時電源が入っているPHSを時計代わりにしているので
PHSを忘れると現在時刻の確認ができなくなる

どーして腕時計がない?
と言われそうだが、金属アレルギーだからだ
時計の裏面で手首に湿疹ができるため
腕時計は随分長いこと使っていないのだ
(やはり金属アレルギーのため磁気ネックレスの使用もやめた
現在肩凝り軽減策に困っている)

こうした細々とした忘れ物対策のために
昔からやっていることはとにかく大きな鞄を持ち歩くことだ
その鞄に使いそうなものを何でも詰め込んでおけば
外出先で気まぐれでなにかしたくなっても
道具がなくて困る、という事態は避けられるからだ
(その鞄を見た人に「鞄がかわいそう」と言われたことがある
おいらに言わせればブランド物ではないにせよ
中にろくに荷物も入れずファッションで持ち歩くほうが
鞄の存在意義を蔑ろにする愚行に思われる)

だが、PHSやスマホなどは充電が必要なものなので
しまいっぱなしにしているわけには行かないし
メールや電話が着信した時の応答を考えると
鞄にしまいこんでいるわけには行かない
すると、充電しっぱなしで身につけ忘れる、ということになる

これに、曜日ごとに収集される種類が違うゴミ出しだとか
口座引落前の残高照会などなども加わるため
イベントによって、曜日固定、日付固定などパターンが異なる上に
おいらの仕事はシフト勤務なのでパターンがないことから
いつどういうToDoが待ち受けているのかもパターン化できない
(これについては、現在Googleカレンダーに非公開のカレンダーを追加し
逐一記入して確認することを考えているが
下手に繰り返しイベントとして登録すると
処理済みタスクとしての予定を削除した場合
誤って以後の繰り返し予定すべてを削除しかねないこともあり
まだ「これだ」という方法にはたどり着いていない)

そこで、こういった事柄を管理したい、という事なのだが。。。

野口の書いていることはこちらのニーズからは完全にずれていた
なんというか、エグゼクティヴ向けの中長期スケジューリングのノウハウ
という感じで、おいらは実物を見たことがないのだが
「『超』整理手帳」とそのiPhone向けアプリの話なんかは
週や月をまたいだスケジュールを組む際の見通しが良いだの
そんな話がされていて
まぁ、それこそそういうエグゼクティヴには便利なノウハウだろうが
おいらとでは境遇が違いすぎて応用できない話だ
(7の倍数日の曜日を暗記するとか、何の話だか理解できなかったし)

ただ、Googleの利用方法については
盲点を突かれていた

要は、Gmailをメモ帳にする、というもので
ちらと思いついたことなどはGmailでメールの下書きとして保存
というやりかただな

確かに、これだと他に面倒なツールを使わず
アイディアを蓄積できる

あと、Gmailが登場した当初は、かつてのメーラーと違い
仕分けフォルダの概念がないことに戸惑ったのだが
(差出人別などで自動で仕分けるっていうニーズからすると)
これをHDDの中でのファイル保存に置き換えると
フォルダではなくラベルでファイル管理するという発想の転換は
馴染むと便利だという点については
野口の言うことには説得力があった

例えば、本でも何でも良いのだが
それがどういう内容か? ということについては
著者の思惑・意図が最も重要だが
読者に言わせれば、その本の中で触れられていた
どのトピックが印象に残るか、という事は
著者の意図とは独立したものとなる

ましてや、まだ十分に整理されていない
カオスに近いアイディアになると
自分でも明確に「こういう話」とは言えないことは多々あるし
仮に明確になったアイディアだとしても
他のトピックとの連環は完全に断絶できないし
逆に断絶できるようなアイディアには、汎用性とか
利用価値とか言う点で言えば、値打ちがなかったりもする

すると、読書ノートやアイディアの記録を記したファイルを
「どのフォルダに保存するか」と考えた場合
内容に応じたフォルダに保存することになると
あとで見返そうとするとき、「どのフォルダに保存したか?」が
わからなくなってしまう、という事になる
記憶をたどり、言及した話題を思い出し
保存先となりそうなフォルダを調べる
などという手間がかかることになる

その点、Gmailであれば
1つの受信メールに多様なラベルを付けられる
言及したトピックすべてをラベルとして貼り付けることも
原理的には可能だ

すると、アイディアのメモなどはローカルなHDDに保存するよりは
Gmailに自分宛のメールとして送信する体裁で保存し
ラベルを色々貼り付けておけば
後からまとめるにしても、後に展開しそうな派生する話題も
貼りつけたラベルから確認できることになる

おいらは頭が硬いので
Gmailにフォルダではなくラベルが搭載されていることを
端的に不便だとしか考えていなかった
これについては野口の説明を見て
Gmailを使う上でのこちらの発想が間違っていたとすんなり納得した

早速、おいらはこの方針でGmailの使い方を変えた

他方で、長期的に保存して参照するようなメモについては
Ubuntu系Linuxを使っているなら
やはりTomboyが便利なので

・アイディアノート: Gmail
・リファレンス: Tomboy

と使い分けることになりそうだ

あと、ネットで見かけて面白そうなニュースなどについては
Evernoteでクリップすることになりそうだが
こちらはクリップしたきり見返すことが、今のところ殆ど無い

ともかく、一頃はGoogleドキュメントの使い勝手が悪化したため
Evernoteへの切り替えを図ったものの
Linux向けのNevrnoteの使い勝手が悪かったため
色々困っていたのだが(別なソフトが今はあるようだが)
Evernoteは結局スクラップブックのような使い方に特化し
そこそこまとまったことを書く場合はGoogleドキュメントと
一応棲み分けるようになった


あと、野口の影響でなるほど、と思ったのは
スマホのデジカメと手書きのメモだ

外出先でGoogleカレンダーを参照するのは良いが
新たな予定をスマホから登録するのは
やはり面倒だ
文字入力などに時間がかかるのだ
人と会って「今度いつ会う?」などの話をしていれば
なおさらスマホへの登録で相手を待たせるのも失礼だ
となると、さしあたりは忘れないように手書きでメモし
別れてからゆっくりGoogleカレンダーに登録すればいい

あと、何かアイディアを思いついた時
ラップトップを起動するのももどかしいし
スマホからの文字入力はたどたどしい
こうなると、やはり手書きだ
野口の発想で面白いのは
この手書きをスマホのデジカメで撮影し
Gmailの下書きに保存する、という点だ

手書きのメモは断片的なので
字が汚くて自分でも読めないって点を別にしても
書き付けた内容がそもそもどういう話だったのかが
自分でも分からなくなる、ということは、ありがちだろう
(ミステリーでのダイイング・メッセージの解読は
文字自体が読めないのではなく
読めた上で、その記述がどういう意味なのか?
が問題となることがほとんどだが
自分が書いたメモも時間が経つと同じような状態になる)

そこで、メモを撮影してGmailに添付して下書き保存し
できるだけ早めに内容を文字に起こして
それなりのメモに仕上げ直す
とう作業が必要になる

ただ、それでも、「だったら最初からPCで」
という話にはならない
やはり、手書きの方が早いからだ
思いついてからPC起動を待つのはもどかしいし
スマホからの文字入力もたどたどしい
さしあたり手書きにしてしまう、というのは
一見当たり前だが
なるほど、と思った

ただ、デジカメで撮影する必要があるのか?
まぁ、撮影したらすぐにメモを捨てられるし
下手にメモを残しておいても、そのメモをなくしてしまうとか
そういうことを考えれば
撮影してGmailの下書きに保存
あとでその写真を見て文字に起こして
添付されていた画像を捨てつつ
メール自体は下書きで残しておけば
メモの中身は変わっても同一性は保たれる(って分かる?)
これは確かにそうだが
それこそ、手帳とかに記しておけば
そうそう手書きのメモってなくならないよなぁ?
ましてや野口は「『超』整理手帳」を開発してるんだし

ただ、手書きのメモに限らず
街で見かけた看板や風景からアイディアを思いつく場合は
当然あるだろうし
その場合、写真とメモの関連を失わなしためには
メモも写真にして、同じメールに添付して下書きにすると
便利と言えば便利かもしれない

こんな具合に、おいらの当初の目的は
ToDoの効果的な管理方法だったのに対して
野口の話はアイディア・プロセッシングと
中長期的スケジューリングなので
ズレてはいたが、大いに参考になった


それでも、セキュリティの話はちょいとよくわからない
先の原発事故の発端となった洪水で
役所の紙データが水没した話を受け
電子化してクラウドにアップしておいたほうが安心
なんて話があったのだが
この話とソニーなどの大企業から情報漏えいが起こったことを並べ
下手に自社でセキュリティを講ずるよりは
GoogleなどのSaaSに乗ったほうが安上がりで安全、と言うのは
どーなんだ?

ハッキングのリスクはオンラインになっていれば常に生じるし
自分たち向けのバックドアが外部から見つかれば即アウトだ
このようなハッキング対策としてSaaSに乗っかっていれば
どーして安全なんだ? 依然そのSaaSが攻撃対象になりうるだろ
あるいは、そのSaaSを提供する業者に悪意があれば
顧客企業のデータはいくらでも盗み放題になる

これを、洪水で紙データがなくなった話と同次元で扱うのは
端的におかしいだろ?

まぁ、それでも、野口の話は大いに参考になった



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特に、後ろ1/3くらいはクラウドを前提とした場合
日本の通信業が硬直していて世界に追いつけていない
という話になっていて
スマホ応用のノウハウとは別な話になっている

電子政府にしても、結局は問い合わせるべき
リアルな窓口が分かるだけでは使い物にならないとかいう
ごく当たり前だが重要な話から始まって
いわゆる日本の携帯キャリアの間でSIMロックされていることが
携帯端末のガラパゴス化と高コスト化に拍車をかけるため
海外同等製品と比較してあまりに割高で国際競争力を失っているとか
面白い話も随分書かれている