ジェイソン・ステイサムという俳優は実に不思議な人です。確かにハゲではあるけれど、元イギリス代表の水泳選手で、引退後にファッションモデルをやっていたくらいイケメンで、俳優に転向した後も全てのアクションを自力でやるほどエネルギッシュ。なのになぜか面白い印象が先に立つのです。別にジャッキー・チェンのようにアクションをコメディを融合しているわけでもなく、至って真面目な顔で真面目に演じているというのに、どういうわけか「おもしろ」が滲み出てくる。そんな彼の”面白ハゲ”のキャラクターを最高に生かした映画がこの「アドレナリン」シリーズです。あらすじは…

 

シェブ・チェリオスは、LA最大のマフィアに雇われている殺し屋。しかし寝ている間に宿敵から馬の安楽死用の薬を盛られ、余命1時間と告げられてしまう。知り合いのモグリ医者に相談すると、常にアドレナリンを分泌し出し続けていれば毒の回りを抑制できるとのこと。生き延びるために休みなく興奮することを余儀なくされたシェブは、あちこちでバカ騒ぎを起こしながら興奮し続け、やがて恋人のイヴが宿敵の標的になっていることを知り、彼女を助け、復讐を果たし、解毒剤を手に入れるためにさらに興奮しながら奔走する…。

 

バカだ。

間寛平のギャグに「わしゃ止まると死ぬんじゃ!」というフレーズがありますが、それを約1時間半に引き伸ばして映画を作ったようなものです。アドレナリンは興奮や快楽を感じた時に分泌される脳内物質なので、シェブはケンカ、猛ダッシュ、カーチェイス、ドラッグ、果ては彼女との路上セックスとありとあらゆることを試します。その一つ一つは本当にバカなんですが、シェブにとっては命がかかっているので大真面目。真面目な顔をして全力でバカをやるという演技がピタリとジェイソン・ステイサムにはまっているのです。もう始まって5分で全力疾走を始めてそのまま全力で走り切るような作品で、バカ映画なのに観終わった後はなぜか清々しい気分になります。

 

なお、本作には続編があり…

 

 

こちらは、1作目の「アドレナリンを出し続けていないと死ぬ」から「充電し続けないと死ぬ」に変わっただけです。1作目でどう見ても死んだはずのシェブがなぜか生きていて、しかもなぜか中国人の闇組織にやたらと雑な手術をされて心臓を奪われてしまい、代わりにバッテリー式の人工心臓を埋め込まれるという、前作を上回る狂った設定。そして前作を上回る不謹慎で下品な描写をてんこ盛りにした結果めでたくR18指定となりました(1作目はR15)。それでもちゃんと興行収入は黒字でインターネット・ムービー・データベースでは10点満点中7点とそこそこ評価されました。とにかくバカバカしくて元気が出る映画なのでアクション映画好きおよびバカ映画好きは一度観てみることをオススメします。ちなみに「アドレナリン2」と「トランスポーター3」の日本での公開時期が近かったので、当時の私のジェイソン・ステイサムの印象は「何かすると死ぬ面白ハゲ」で固定されてしまいました。