また昨年末のフィンランド旅行の機内で観た映画の感想文です。

 

 

この2016年リブート版「ゴーストバスターズ」を語る上で外せないのが、この映画が本国アメリカで主に男性至上主義者達から受けたバッシングです。 そもそも80年代の旧作「ゴーストバスターズ」2作は大ヒットし当時からのファンも多く、その続編ではなくリブートされるという話が持ち上がった段階から不満の声が上がっていました。そこへ来て女性プロデューサーが就任しさらにオール女性キャストでリブートされると決定してバッシングはヒートアップ。リブート版の出演者たちは人気お笑い番組「サタデーナイトライブ」の出演者で皆売れっ子の女性芸人だったのですが、彼女たちはいずれも「中年」「デブ」「レズビアン」と男ウケの悪い属性だったものだから男性至上主義者達の怒りは頂点に達し、遂に予告編公開でヘイトコメントが公の場に溢れ出しました。

 

 

Youtubeの低評価、ヘイトコメントはまだかわいい方で、出演者だけでなく監督など映画製作スタッフにも嫌がらせが殺到し、中には殺害予告まであったとか。唯一の黒人メンバーを演じたレスリー・ジョーンズはあまりのヘイトリプライの多さにTwitterの更新をやめ、彼女に対するヘイトリプライを煽ったライターはTwitter社より永久BANを喰らいました。

 

男性至上主義者たちは本作を「フェミニズムのプロパガンダ映画だ」とバッシングしました。2015年の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の時と全く同じです。

 

参考↓

『マッドマックス』新作に、「男性の権利擁護活動家」の怒りもマックス(Wired)

 

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がそんなバッシングをものともせずに世界中で大ヒットしたのはご存知のとおり。このリブート版「ゴーストバスターズ」も興行収入2億ドル(約241億円)を突破し制作費を余裕で越え、世界的な評価も悪くはありません。そう、この「ゴーストバスターズ」は本国アメリカの騒動とは関係なく普通に面白い特撮コメディなのです。ただ、面白い中にもやはり全員女性メンバーに入れ替えた”ならでは”の要素はありました。それはゴーストバスターズが最初から最後まで正当評価されないまま終わること。やっていることはオリジナルの男性版ゴーストバスターズと全く変わらないのに、男性版がなんだかんだありつつも市からも住民からもちゃんと感謝されるのに、女性版ゴーストバスターズは徹頭徹尾男性だけでなく同じ女性からもバカにされ続け、最後の最後に”こっそり”市の補助は受けられるようになったものの公式に感謝されることはありません。まあそれでも「住民はちゃんと活躍を分かってるよ!」という演出が加えられているので全く救いがないわけではありませんが。皮肉なことに、本作に対する男性至上主義者達のバッシングは劇中の彼女達に対する周りの扱いと見事にリンクし、いかに現代のアメリカ社会に女性蔑視がはびこっているかを如実に示す結果となりました。しかしそうした女性蔑視が世に蔓延れば蔓るほど、本作がコメディの中に織り交ぜた「男受けしない中年女でもやりたいことをやれ!ビジネスを起こせ!戦え!」というメッセージは光るのです。本作に於いて、ゴースト・バスターズのメンバーを始めとする女性キャラクターは誰も性的な対象としては見られません。代わりに性的対象となるのはクリス・ヘムズワース演じるゴーストバスターズの受付係・ケビン。

 

 

ケビンは若い金髪イケメンマッチョなのに頭の中はカラッポで何一つまともにできないボンクラ。それでも見た目は可愛いから、ただ「目の保養」のためだけにゴーストバスターズに雇われます。キャラクター自体は愛すべきバカで面白いのですが、こうしたおバカキャラは従来のハリウッドでは金髪美人の女優が演じていたものでした。これもまた男女逆転キャスティングだからこそできる痛烈な皮肉であり風刺です。

 

…とまあ、すったもんだはあったものの、むしろそれを分かったうえで観ると更に隠されたメッセージも含めて楽しめる映画となりました。ラストは続編も作れるような感じで〆られていたので、是非バッシングに負けず次回作も製作されて欲しいと思います。

 

ところで終盤の幽霊達の表現やゴーストバスターズの攻撃のエフェクトがIngressのパロディに見えて仕方ありませんでした。幽霊達は青と緑で表現されていたのですが…

 

 

 

この青と緑が入り交じるカオスな感じ、Ingressの激戦区っぽくないですか?幽霊の出現場所が全て線で結ばれるシーンではつい「ポータルがリンクした!」と思ってしまいました。

 

青や緑の幽霊達に対してゴーストバスターズの攻撃色が赤というのも実にIngress感炸裂です。敵陣営のポータルを攻撃してる時ってまさにこんな感じです。もう終盤のバトルシーンは「Ingressの可視化」と言っても過言であはありませんでした。ある意味スマホゲーマーはもの凄く楽しめる作品なので是非チェックして下さい。