僕らのミライへ逆回転 プレミアム・エディション [DVD]/ジェネオン エンタテインメント
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センスのない邦題以外は傑作の映画です。原題は「Be Kind Rewind」で、昔のレンタルビデオに表示されていた「巻き戻して返却して下さい」という注意書きの意味です。ジャック・ブラックが出演しているのでバカ映画だと思って観たのですが、内容は映画愛にあふれたコメディ・ヒューマン・ドラマでした。

舞台は未だにビデオテープしか置いてない昔ながらのレンタルビデオ店。それなりに街の住民に愛されてはいますが、今や再開発のため取り壊しの危機に。そんな中、店員のマイクは店長から店の留守を言いつけられます。しかしトラブルメーカーの友人・ジェリーがやってきて騒動を起こし、磁気で店にあるビデオテープを全てダメにしてしまいました。そこへタイミング悪く年配のお得意さんが「ゴーストバスターズを貸してくれ」と来店。困った2人は年寄りの無知に付け込んで「スウェーデンから輸入した(Sweded)」とウソをつきホームビデオで勝手に映画の”リメイク”を製作して貸し出してしまいます。

劇中で手作り映画を製作するという劇中劇になっているのがこの作品の面白いところですが、とにかくリメイク手法のチープさが秀逸です。「ゴーストバスターズ」では体にアルミホイルを巻いて防護服を作り、「ラッシュアワー2」では公園の遊具によじ登り、「ドライビング・Missデイジー」ではマジックで直接顔に皺とシミを描き込みます。本人達が一生懸命やればやるほどバカバカしくなっていくボンクラっぷり。次第にそのバカバカしいリメイク作品が街の住民みんなを魅了し、とうとう街全体でリメイク作品を作るようになります。ところが、それを著作権協会の役人が嗅ぎ付け、ビデオ店は莫大な罰金を払うことに…

本作で描かれるのはアメリカの下町の人情だったり「手作りと工夫の素晴らしさ」なのですが、嫌な感じにならない程度に「ハリウッド批判」が下地にあります。何でもCGを使い、制作されるのは続編や海外作品のリメイクばかり、そして権利権利と個人の楽しみのレベルまで厳しく取り締まる。「権利」(というか利権)で作品をがんじがらめにするのと、ある程度の「遊び」を許すのとでは、一体どちらが作品を本当に愛してもらえるか?そんな問題を提起している作品でもあります。

ところでこの作品、日本ではミニシアター上映だけでしたがアメリカ本国ではヒットし、これを真似してYoutubeに「Sweded」作品が大量に投稿されました。今でも「Sweded」で検索するといろいろなリメイク作品がヒットするので興味のある方はご覧下さい。