アメリカのめっちゃスゴい女性たち/マガジンハウス
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映画評論家として知られる町山智浩さんの新刊です。といってもこれは映画の本ではなく(女優のエピソードは出てきますが)、タイトルどおりアメリカの55人の「スゴい女性」たちを紹介した本です。もともと雑誌に連載されていたコラムをまとめたものなので、1人あたり3ページ程度と短く正直少々もの足りない印象も受けますが、その分サクサクと読み進めることができ、時間の無い人でも細切れの時間に読むことができるでしょう。「この人についてもっと知りたい!」と思ったらググって各自調べればいいし。
紹介されているのは、政治家や経営者、女優、芸人、アスリート、ジャーナリスト、軍人、宗教家など多種多様で人種、民族、年齢も全てバラバラ。既に故人となっている人もいまが、いずれも様々な形でアメリカ社会に影響を与えている人達ばかり。日本でも知られている人も何人がいますが、大半は日本ではあまり紹介される機会の無い人達です。
読んでいて印象的なのは、紹介されている女性達の多くが貧困家庭に生まれていたり、幼少時に虐待されていたり、人種・民族的及び性的マイノリティだったり、移民だったりと多くが「弱者」側の出身であったことです。しかし皆実力でのし上がり、自分が成功することによって世界が少しでも良くなるよう行動しています。無論このような「一発逆転」はアメリカでもレアケースでしょう。しかし日本はアメリカほど経済格差が大きくなく桁外れな貧困が少ない代わりに、弱者が一発逆転できるチャンスもまた少ないのではないでしょうか?そもそも外国から留学してきた女子学生を新卒採用して重役まで出世させる会社や新卒採用から結婚後も働き続けた女性社員をCEOにする会社が日本にあるか?自衛隊が女性隊員を幕僚にすることはあるだろうか?と考えると、日本がいかに人権面で遅れた発展途上国であるかを実感します。

本書の冒頭で町山さんは紹介します。

アメリカでは現在、妻の方が収入の多い世帯は、なんと全体の4割になりました。2013年には、男以上に稼ぐ女性たちについて調査研究したノンフィクション『リッチャー・セックス』も出版されました。著者のワシントン・ポスト紙の記者リザ・マンディは、女性の収入が上がったのは、今まで男に支配されていた技術職や専門職、管理職、それに経営に女性が進出したからだと書いています。
その理由のまずひとつは、女性の高学歴化。現在、アメリカの大学院の修士課程の6割は女性、博士課程でも52%が女性です。大学院に入るのは、ウチの妻のようにいったん社会人として働いて学費を貯めた30歳以上の人々が多いそうです。アメリカではいくつになっても大学に戻れて、再就職も難しくないわけです。

(中略)

現在、アメリカの企業の管理職の43%、役員の14%が女性です。世界的な巨大企業のトップにも女性は少なくありません。
しかし、日本の企業の女性管理職率は11.1%。先進国でも韓国と並んで最低です。女性役員になると日本ではたったの1%。、100人に1人しかいません。ああ、もったいない。


少子化対策云々言う前にやるべきことはこれです。女性が自由に働けるようにすること。そして社会のあらゆる面で差別を止めること。これに尽きます。