実はフィンランドの友達から本国盤を既に貰っているので同じアルバムを2枚持つことになるのですが、この日本盤にはボーナストラック「銀河 -流れ星銀-のテーマ」と「Let the battle begin!」(FF VIIより)の2曲が追加されているのでこれはこれで貴重です。また、日本盤には収録曲の日本語訳詞とWhisperedの歩みを振り返った解説文が付いています。
私が彼らを知ったのはクリエイティブマン主催の「LOUD & METAL MANIA」のページだったのですが、もうアーティスト写真を一目見て「こいつら絶対に面白い」と直感し、即Tweetしたところ2500RTを超えるバズりっぷりを見せ2chにスレまで立つという予想外の展開となってしまいました。

その時のアー写。「Shogunate Macabre」のブックレットの見開きページにも使われています。
この外見から「勘違いクールジャパンの珍メタル」と思っている人も多いかもしれません。しかし彼らの1stアルバム「THOUSAND SWORDS」も含め、彼らの楽曲はどれも普通にカッコ良いのです。印象としてはチルドレン・オブ・ボドムに近い感じ。そこへ和旋律が加わるのですが、これがまた見事に融合しているのです。外国のバンドが日本的な要素を使用する際、それは大抵日本風ではなく中国風か、または「日本と中国の区別もつかねえのか!」という混同が見られます。ところが彼らにはそれが全く無い。三味線や琴などの邦楽器の音も使用していますが、それも邦楽として美しい旋律で、且つ楽曲に調和しちゃんとメロデスとして成立しています。これは全曲の作詞・作曲を行っているギター&ヴォーカルでフロントマンのヨウニ・ヴァルヤッカ氏のセンスも勿論ですが、アレンジャーの力量も相当なものだ…と思ったら、なんとチュリサスのバイオリニストのオッリ・ヴァンスカ氏の弟さんがアレンジを担当しているとのこと。他の欧州諸国よりも日本の情報や物が少なく、日本人の移民や長期滞在者の少ないフィンランドでよくぞここまで日本文化や歴史、音楽を調査し体得したものだと感心してしまいました。
もちろん「これはちょっと変だな」「勘違いというかまだ認識が足りないのかも」というところもあるにはあります。でもこれはある程度は仕方がありません。どこのどんな人だって異文化を本当に理解するのは難しいものです。また「勘違いしてるけどカッコ良く間違ったせいで独特の作品ができた」という事例があるのも事実。この「Shogunate Macabre」には「Kappa」という文字通り妖怪の河童をモチーフにした曲があるのですが、その間奏がなぜかジャズ!(ちなみにここでのサックス奏者もチュリサスのアルバムに参加してた人)河童の曲をメロデスで作ってジャズまで混ぜるなんて日本人だったら絶対に思い付かないでしょう。
なお、現在私はFacebookでヨウニ・ヴァルヤッカ氏と友達になり何度かやり取りしているのですが、彼は日本文化に対し「興味がある」「好き」という程度のレベルではなく非常に真摯に取り組んでいることをここに書いておきます。雑誌を始めとする日本の音楽メディアは絶対に彼らにインタビューをして記事を掲載するべきです。遠い異国にあってここまで真面目に日本について勉強しているバンドは他にありません。
それにしてもこうしてフィンランド人と交流する度、日本とフィンランドの間にあるギャップを実感します。あまり知られていませんが、フィンランドでも近年他の欧州各国と同様日本ブームが起こり若者を中心に親日家が増えているそうです。ちなみにきゃりーぱみゅぱみゅが「PON PON PON」をiTunesで全世界配信した際、真っ先にチャート1位を獲得したのがフィンランドのiTinesでした。さらに北欧&バルト海沿岸地域最大の日本文化フェスで今年で7年目を迎える「DESUCON」が開催されているのもフィンランドのラハティ市。そんな状況なのに、実際には「日本について書かれているフィンランド語の本やWebサイトが乏しい」らしいのです。あるとしたらアメリカやイギリスなど英語圏を経由した英語の本(Webサイト)で、日本に興味を持って調べようにもソースがまず少ない。一方、日本では毎年LOUD & METAL ATTACKやLOUD PARKといったメタルフェスが開催され必ずフィンランドのメタルバンドが来日し、さらに単独ツアーをやるバンドもいます。では逆にフィンランドのメタルフェスに出演したりフィンランドを単独ツアーで回る日本のバンドがいるか?というとおそらく0でしょう。いてもレーベルが手配するのではなくバンドが自力でやるぐらいで。フィンランドのものが日本に入ってくる事例に対し、日本のものがフィンランドに行く事例があまりにも少ないのです。おそらくこれはマーケットサイズの違いが問題でしょう。人口1億人越えの日本に対しフィンランドの人口は約530万人。だまって日本の中にいて日本語を使っているだけで1億人に対しビジネスできるのに、わざわざフィンランド語の対応をしてたった530万人の市場へ参入する企業なんてあるわけがない。フィンランドから日本の市場へ参入するのは美味しいかもしれませんが。それを今まさにやっている主なジャンルがキャラクター(ムーミン)、雑貨、音楽、モバイルゲーム(RovioとSupercell)でしょう。
そうした現実は頭では分かっていても、やはり何だか勿体無い。日本のものを欲している人々が確実にいるのにビジネスしないのはチャンスを逃しているとしか思えない。とりあえず現時点では個人間で交流・取引するしかないのでしょうか?
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