今日(日付的にはもう昨日)Ozzfest Japan2日目に行ってきました。まあ日本側のプロモーターのフェス運営について主にTwitterでいろいろ言われていましたが、それら諸問題を差し引いても2日目は非常に充実した内容でした。私が主に見たのはAnthem、Steel Panther、人間椅子、Stone Sour、Tool、Black Sabbathですが、もうどれも本当にヤバい。Black Sabbathのステージに至っては神憑っていた…というか人知を超えた”何か”が降ってきたんじゃないかというオーラがありました。

フェスの詳しいレポートは後で書くとして、開催中にソーシャル系のネタで非常に面白い現象が発生しました。というのも「人間椅子」がステージ終了後にTwitterのトレンドワードに浮上したのです。

人間椅子Twitterトレンドワード

Ozzfest Japanに関するTwitter上のつぶやきでは主に「#Ozzfest」「#OzzfestJapan」「#オズフェス」のハッシュタグが使用されましたが、そのどれをチェックしても人間椅子についてつぶやかれていました。確かにステージ終了後はそのバンドに関する感想Tweetがどっと増えますが、人間椅子はいつまでも新規のつぶやきがあり一向に減る気配が無く、さらにRetweetも増えていきました。もっとも人間椅子のギタリストである和嶋さんは前日のOzzfest Japan 1日目のももいろクローバーZのステージにゲスト参加しておりそれに関するTweetもあったのですが、Ozzfest全ステージ終了直後にダメ押しのようにロケットニュース24がこんな記事を公開したのです。

【動画あり】ももクロのステージサポートでにわかに脚光を浴びるバンド『人間椅子』とは?

これでさらに人間椅子に関するTweet数がうなぎ上りに。どなたか知りませんがこの記事を書いたライターさんは本当に良い仕事をしました。Web媒体かくあるべしという見事な記事公開タイミングです。もしかしたらライターさんはOzzfest Japanの現地にいたのかもしれませんね。Web媒体の記事執筆ならネットさえ繋がればどこでもできるから。私も見習いたいと思います。記事タイトルや記事の内容については賛否両論ありますが、私は不特定多数が見るWeb媒体に人間椅子の記事が掲載されたということがまず凄いと思います。多くの人は「誰これ?」と思うかもしれないけれど、そのうちの何人かは自発的に彼らのことを調べるかもしれないし、そのうちの何人かは好きになるかもしれません。まずは情報をネット上に載せることが重要です。

しかし人間椅子が”にわかに脚光を浴びるバンド”と説明されているのは実にWeb2.0的だと感じました。今となってはWeb2.0という言葉も死語となってしまいましたが。私は近年の人間椅子再評価の裏には確実にインターネットの、それもWeb2.0以降のインターネットの存在があると思います。それが如実に分かるのがYoutube。以前このブログにも書きましたが…

人間椅子(バンドの方)を外国人にオススメしまくって得られた反応をざっくりまとめてみる

人間椅子を外国人にオススメする際にいろいろ人間椅子関連のYoutube動画を見てみましたが、大概の動画には日本語以外の言語で賞賛のコメントが付いているのです。ちなみにスペイン語のコメントが結構ありました。それらの動画はもちろんほとんどが無断アップロードなのですが、これらをきっかけとして人間椅子を好きになったメタラーは相当数いると思われます。

考えてみればYoutubeのおかげで状況が好転したミュージシャンやバンドは世界中にたくさんいます。例えばジャーニーの新ヴォーカリストのアーネル・ピネダ氏は元々はフィリピンでジャーニーのカヴァーをやっていた人でした。しかしそのライブ映像がYoutubeに投稿されたことで本物のジャーニーのメンバーの目に止まり、最終的に正式ヴォーカリストとして採用されることに。しかもピネダ氏は貧しい家庭に生まれ早くに親を失くし、ホームレスになりながらも歌うことを辞めなかったという苦労人。以前ならそんな境遇の人が、しかも国籍も人種も年齢層も違う人がアメリカの重鎮バンドの正式ヴォーカリストに採用されるなんてことは考えられなかったでしょう。



また、フィンランドのコルピクラーニだって「酒場で格闘ドンジャラホイ」のお手製珍妙PVがファンによって勝手にYoutubeに投稿されなかったら今ほど世界的に知られた存在にはならなかったかもしれません。そしてそれがニコニコ動画に転載されなかったら日本での人気も無かったかもしれません。



あと今回Ozzfest Japanに出演したSteel PantherだってメジャーデビューのきっかけはYoutubeでした。彼らはもともとアメリカ西海岸で活動していた80年代ヘアーメタルのパロディを行うコミックバンドでしたが、演奏技術の高さと面白いMCが評判になり、ライブ映像をYoutubeに投稿するお客さんが続出し、それでさらにファンが増えて評判になり、彼らが出演するクラブのチケットがソールドアウトになるほどの人気バンドとなりました。そしてさらにそれを聞きつけた80年代メタルリスペクトなプロのミュージシャンがステージに乱入するようになり、またそれが評判になるという好循環が生まれて最終的にメジャーデビュー決定。ちなみにSteel Pantherのメンバーは全員40過ぎ。40歳過ぎてメジャーデビューというのも以前ならとても考えられない話です。



そもそも、なぜ人間椅子はこれまで売れもせず話題にもならず正当評価を受けられなかったのでしょうか?それはテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大既存メディアが彼らを無視したからです。メタル系雑誌ですら特集を組まず、新譜レビューも載るんだか載らないんだかというビミョーっぷり。たまに新聞に載ったりテレビ・ラジオで取り上げられたと思えば青森県内のみのローカル。インターネット出現以前にこのような状況に置かれてしまってはとても新規のファンを獲得することはできません。Web2.0以前は世の中の流行の鍵を握っていたのは4大既存メディアでした。

 しかし時代は変わりました。特にWeb2.0以降は、動画共有サイトがテレビの役割を、ニュースサイトやブログが新聞・雑誌の役割を、ポッドキャストがラジオの役割を果たすようになりました。これらの利点は一個人のユーザーがコンテンツを作れることです。そしてそれらの情報はさらに各種SNSを通じて瞬時に拡散・共有されます。今日Twitter上で人間椅子がトレンドワードになったのもメディアや広告会社が先導したからではありません。Twitterユーザー個々の行動によるものです。以前は流行は4大既存メディアが先導(煽動)して作っていました。しかしWeb2.0以降は個人のふるまいがそれを形作る。それは「流行の民主化」と言えるでしょう。  

ちなみに佐々木俊尚さんの著書「ウェブ2.0は夢か現実か? テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力」は今読んでも気付きの多い良書です。今日の人間椅子のトレンドワード化と合わせて考察すると面白いかもしれません。


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あといきなり話が飛びますが、「○○の民主化」という言い回しは北欧人がよく言っているような気がします。デンマークの3Dゲーム開発エンジン「Unity」のデビット・ヘルガソンCEOも「ゲームの民主化」とあちこちの講演で言っているし、クラウドファンディングで製作資金を集めたことで話題となったフィンランド映画「アイアン・スカイ」のティモ・ブオレンソラ監督もインタビューで「映画製作の民主化」と言っていたし。北欧人が「○○の民主化」と好んで言うのはサービスや製品にユーザーの意見やアイデアを積極的に取り入れて”みんなで作る”という北欧のデザイン文化「Participate Design」が下敷きとしてあるからでしょうか?

まあ長くなりましたが、私の言いたいことは

人間椅子が好きな人はソーシャルメディア上で情報発信しろ

ということです。




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