ROUTER(桜ノ杜ぶんこ)/西村悠
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【願いを現実にする病、『幻想病』。
少女ルータが目覚めると、そこは幻想病によって変質した不思議な世界だった。
ルータは初めて会った他人、シノツクと一緒に東京を目指す。
幻想病によって変質し、文明が崩壊した近未来の現代世界を旅していく、情緒と哀愁の入り混じった旅の物語。 】

この物語は、この奇跡をもって結末とする。(p356)


■ 感想とか色々

好きー
冷凍睡眠装置で眠っている〝彼女〟を3年間待っていた青年シノックと、自分の過去の一切を忘れている目覚めたばかりの少女ルータ。
3年間変わらない「夏」の季節、終わってしまった世界で、生き延びてしまった人たちが、旅をするお話

ルータの目覚めを待ち、シノックは彼女にひとりでも生きていけるだけの知識と行動の仕方を教える。
拠点は箱根湯本、目指すは東京の代々木にある研究所。
仲間を探し願いを叶え共闘し過去を知り甦る夢の日々とひとつの悪夢
夜になると化け物が街に現れ、祭囃子を再生する無人の街
商人が行き交い魔法使いが治める活気のある街

話はルータ視点
目覚めた場所での記憶、くらげの病痕、図書館でのひと時、彼のついていた嘘
動き出した季節
もう一度、今度は彼が眠りから覚める


>幻想病によって変質し、文明が崩壊した近未来の現代世界を旅していく、情緒と哀愁の入り混じった旅の物語。
結構このまんま。
〝旅〟も好きだけど恐らく閉じられた世界も好きなんだろうなあ、外界の刺激っていうのはしばしば望まないことと強制イベントが多すぎて私の手には余るから好きじゃない
全力で逃げたくなるから、そういうのない話は好き。でも自分が安全圏にいるときは若者が〝強制イベント〟に苦しんでいるのもそれはそれでそれなりに好き。

350ページからラストまでが大好きです、ベタだろうがなんだろうがご都合主義万歳。
〝夏〟は誰かの病痕(幻想病発病者が死亡した場合、願いが発病者の死後も残り影響を与える場合がある)だったのかな
一瞬シノックの幼少期の幻想病かな、と思ったけど、「最後の日」の日付って確定されてなかった気がするので解らん
実体を伴う(ワニ・竜)もあるし、錯覚だけで実体を伴わない(街の光)もあった
切れば幽霊のように消えるが触られると火傷を負う(子ども)もあったので、病痕は結構バラエティに富んでいる。クラゲ大好きです、クラゲ綺麗だよクラゲ。
ハッピーエンドなら誰も文句のつけようがないほどのハッピーエンドが良い


2008年7月に一迅社から「幻想病」、似た設定で1冊出てます、こちらも好きでした(なので作者の名前も覚えてるぜ)
一迅社のは短編連作(クロスオーバー有)だったけど今回の桜ノ社文庫は長いの1本。
あれ妙に好きだったな~と思って当時の記事見たら予想外にちゃんと書いていて「あ、うん」と思った
好きなのは一貫して2人だったのもあると思う、3人はある意味安定しているけど1人の出方次第で不安定になると思っている
2人だとお互いに自己完結してたらそのままだから、内実が男男/女女/男女のどのコンビでも(本人たちを嫌いにならない限り)安心して読んでいられる

イラストレーターはチガサキトモさん!
人間より風景が好き、扉絵好きだなー!
桜ノ杜ぶんこさん