黒猫ギムナジウム (講談社BOX)/中里 友香
¥1,680Amazon.co.jp

【九鬼白雪は、妖術学校「吽影開智学校」の新入生。
出迎えた卒業生の猫目坊はじめ、ひとくせもふたくせもある同級生や教師たちとの奇妙な学校生活が始まる。
白雪を待ち受けていたのは、帝都の夜廻り、怪異と冒険、友情とミステリー、そして…。 】


わからん!

■ 感想とか色々


語彙で明治時代の雰囲気を出そうとしたり、言い回しでもって独特の感じを出そうとしたり、そういうのはまだ解るし、うつくしいと言えなくもない
が、そもそも私はこれを「ライトノベル」という先入観(偏見や色眼鏡)のもと読み始めたので、頭を切り替えるまでに大分かかった
あらすじでは「異能学園もの、友情、ミステリー、ホラー、冒険入り」って感じだな
異能はそうだが「学園」と言われると、うーん「学園内」ではない
視点=主人公は解るんだけど、他のキャラが出張りすぎ&ページがよく割かれていたのでいろんな伏線をごっとんごっとん落っことしていく割にはこの1冊だけでは私が納得できるまで書かれてはいなかった


九鬼家の白雪は巫女さん的役割の家の生まれなのかな
ほとんどこの子視点で話は進みます
彼女が〝入学〟するときに迎えに来た先輩・猫目坊(遊郭の生まれ。寺で教育を受けていた男)
リサは外国生まれで提督の家に身を寄せる同室の女の子(魔女)
無口な那智も同室。敵対する家の生まれである教師の入間漣と昔馴染み。
橘狭霧は唯一の男の子、白雪・リサ・那智・狭霧の4人で〝夜回り〟をする。
階級が分けられていて、まず最初の試験に受かることが肝要
と思えばあっさり受かってしまったので(笑)、その段階では誰一人欠けることなく話は進みます

色子として潜入し、変死が続く理由を探しに行ったり
それぞれ実質的な課題を出され、謎を解きながら解決しようとしたり
狭霧の生い立ちが語られて使役されていることが判明したり
猫目坊の攫ってきたお姫さまのその後の行方だったり



色子あたりじゃまだ面白かったんだがなあ、猫目坊の育ての親が死んで猫目坊が生き返らせてもう一度燃やしたから
実質的な課題が大嫌い(笑)
白雪さん、なんか解らんがずっと気に食わなくて、気持ち悪いの一歩手前まで行っていたのだけど、ここで大手を振って嫌いになる理由ができた(笑)
「一緒に死んであげる」なんて酷い嘘をついたから。だから嫌い。大嫌い。
あれの中にある、ある種の、なんていうの、気持ち悪い部分が、気持ち悪い。
10年20年したら慣れるのかもしれないけど、今の段階では許容できないし、許容できない自分を許容しているので、あれはただひたすら〝気持ち悪い〟

狭霧はいやに白雪のことを庇うなあと思った。
彼は白雪に奪われたいと言っていたのだけど、白雪と猫目坊との関係といい、
迂遠な言い回しが多いので、どうもはっきりしない
「奪われたい」は殺されたいの? それとも暴いてほしいの?
許しを請いたいの? 甘やかされたいの? 罰してほしいの?
複数なのかひとつなのすら解らない
狭霧の愛の告白(笑)じみた独白のときに、私はすでに白雪さんを気持ち悪いと思っていたし、彼女を評価した猫目坊ほど彼女を評価してもいなかった
だからなぜそれほど彼が白雪にこだわるのかが解らない、彼がなにに怒ったり泣いたり悲しんだり嫌がったり好きだったり、なにをどう選んできたのかが解らない

那智が怖かったのは、入間先生の「もっともふかくやわらかいばしょ」で、「もっともふかくやわらかいばしょ」を傷付けると思ったから
つまり私にとっての「最も深く柔らかい場所」は「幼い頃の記憶」ってことか? とも思った。一理ないこともない。終わったものの中にしか美しさがないのなら。
リサはハキハキしていたのでこの中では1番好きかも(笑)
予想外に最後のお茶会が美しくてよかった。〝兄〟と〝妹〟。

猫目坊は、初め「キレーな顔の男って好きだなあ」としみじみ読んでいた(笑)
白雪が軟禁されているとき、狭霧の前に姿を現し、白雪への言付けを頼むp312で「俺に会いに来てくれるよう、伝えてほしい」と言ったので変わったけど。
こいつ、「タイミングを間違えない男」だ、に。
「そつがない男」と「タイミングの合う男」は好きだが、このとき浮かんだ言葉が「タイミングを間違えない男」だったのでなんだかなあ。かっこいいんだけどそのかっこよさが悔しいとか、「かっこいいじゃねーかちくしょう」っつーやっかみでもあるのか。
まあ猫目坊死んじゃうんだけど。勿体ない、もっと飄々と生きるかと思ってた。
生きることに執着してる雰囲気はなかったけどさ。それこそ最後の狭霧みたいに時折手紙をくれて遠くで生きてそうだった。
遺骨を白雪に渡すのもどうかと思うけどね入間先生。モノがあると縋る。


〝黒猫〟の名前は旧海軍の艦艇(白雪、那智、矢切、橘、狭霧、羽黒、漣など)
この作品の中では「旧海軍の艦艇の名前を黒猫の名前にした」のではなく、「黒猫の名前が(功労や殉職に応じて)(旧)海軍の艦艇になっていく」らしい
まあもうこれがすっごく嫌いで、結局その嫌いは相対的に好きではないだったかもしれないんだけど(笑)
海軍の艦艇や、海自の艦艇(と海保の船艇)の名前がアホなほど好きなのは、それらが〝日本の一部〟に肖っている〝うつくしい〟名前だからだ!! どこの馬の骨ともしれん奴の名前だからうつくしいと思ったんじゃない!! と声を大にして言いたい
岬だの地名だの山だの旧国名だの(あとなに雨雲雪だとか河川だっけ艦種別で一定の法則あるんだろうし、瑞獣とかもあるので全部が全部「日本の一部」ってんでもないがっ)
漣なんて名前うつくしいにもほどがあって大好き、でもうつくしい名前の人がうつくしいってんじゃない
なのに艦艇に付けられる理由は「その人だから」で、その理由が気に食わん、ということである。無論「漣」という名前自体のうつくしさが変わるわけではないが。


話全体に太い筋(猫目坊、猫目坊の攫ってきたお姫さまと提督の繋がり、狭霧の生い立ち)が何本かあって、それなのに視点たる白雪のことは然程語られず、
丁寧に白雪以外のひとりひとり語ろうとして話がぶつ切り
なんか読むのにすっごい時間かかった
遠回しは好きだけど、ぴしゃっと言ってほしいときだってあるんだよ

イラストレーターはmarucoさん!
ああ! ガガガの「此よりは荒野」の人か! わたしこの人好きっ
最初「(違うだろうけど)竹さん?」と思い、表紙めくったら「………睦月ムンクさん?」と思いました、失礼しました
扉絵もあるよー 可愛いよー