吟遊詩人に贈る歌 (集英社スーパーダッシュ文庫)/佐々之 青々
¥650Amazon.co.jp

【「世界で一番の吟遊詩人になって、必ず戻ってくる」
十二歳のレントは、幼なじみのトルチにそう約束して街を出た。
五年後、トルチに告げる言葉を胸に帰ってきたレントはしかし、再会する前に幽霊騒ぎに巻き込まれ、女警吏のテアに騒乱罪で捕らえられてしまう。
テアに幽霊退治を押しつけられたレントは取調室でやってトルチと再会するも、告げる言葉を言えずにいるうちに今度はトルチを想う青年デリックから決闘を申し込まれ――
悲劇の吟遊詩人と悲恋の騎士を生んだ街ルネスで、若き吟遊詩人と魔法人形が奏でるピュアファンタジー、開演。 】

■ 感想とか色々

5年ぶりに会う幼馴染にある言葉を告げに戻って来たレント。(男)
トルチ(女)は会わなかった5年の間に成長していて、仕事を見つけ、新しい居場所を築いていた。
言おう言おうと思いつつ、広場で弾いていたら出てきた幽霊でひと悶着、騒乱罪でひと悶着、幽霊のお悩み相談でひと悶着
果ては警吏に決闘を挑まれるわ、名家の汚点まで引きずり出すわ、不法侵入してあるものを盗み出そうとするわ
「寝覚めが悪いから」解決しようとする昔から変わらないレントに苦笑しつつ、助言を与えたり手伝ったりするトルチ
トルチが好きでレントに決闘を申し込むデリック
デリックの知り合いで幽霊退治を依頼するテア
昔々、メイドと恋仲になって、一緒に逃げようとした英雄
個人的には「毎日花束を持ってきた」フェンが好きです、そのうち花瓶が足りなくなるんじゃないだろうか。枯れる間もない。
彼は、彼女の「気を惹く」という点においては、大分好きです
レントがトルチの気を惹こうとして言った約束よりもずっと好きです



まあ正直惚れた女賭けた勝負で行き当たりばったりは好きじゃないんですけどね
勝負をするのは勝算が高いときだけです、それか勝っても負けても困らないゲームのとき
レントは、作中で何度か、トルチの時間を止めた・止めることについて悩んでいたけれど、それって、結構、凄いよね
相手が自分のこと待ってたって微塵も疑わないんだから(笑)
核心をそれたままどこに行くんだろう、と思ったらいきなり直っていたので驚いた
君たちは、ちゃんと、言葉にして、ひとつずつ、確かめてください。頼みますから…
そういえば、5年会ってない知り合いが捉えられているから身元確認のために来てくれと言われて、行くかあ? と思ったんですが、けっこう行くかもしれない。

幽霊のエリスの「厳しい時代でしたから…」は上手かった
ただ、広場の立て看板は、そうであるのなら尚更管理をすべきだし、「事実書」はハナから信じていなかった
デリックが悪役を演じているのもなんとなく解る、ていうかあいつがフォローのしようない悪人であれば、彼に対するテアの評価が要らんのだよ
発端は家柄に与えられた職務であれ、それでも200年、腐敗なく癒着なく苦情なく公平に真っ当に勤めているのであれば、それでいいんじゃないかなあ
それか、せめて、別々に評価してほしい
帯剣を許しているのは、その剣が、善良な一般人である限り、向けられないことを知ってるからだろう


続刊はもし出るのであれば多分買う~
あーでも表紙にトルチ以外の女の人出てたら買わないかも
お師匠さん所に行くみたいだし、なにより一緒に海を見に行くんだって! いいよねえ。
レントが「もう5年待ってて」って言いかけたところで、連 れ て 行 け よ と思ってしまったので、最後一緒に行ってくれるのは嬉しい展開。
レントが、空回りであれ独り善がりであれ、その行動理由がトルチのためであるのなら。
ただもし続刊でもトルチとレントが成長も反省もなく、ちゃんとふたりで腹割って話し合わないのであれば怒るかも知れない(笑)

表紙の帽子かぶってる人形はレントが師匠から頂いたものです
正直「師匠呼べやなんであんたがこれ持ってんだ」と何度思ったことか(笑)
こういう「過去」と「現在」の相似って、結構過去の方がカッコよかったりするんですが、これは過去の方が「それはねえよ、お前(吟遊詩人)」と思った稀有な例

イラストレーターはCOMTAさん!
可愛いなああああ!!!
そうですそうです決闘のシーン、レントが正装で白、トルチもお着替えして白だったので、あれ? 結婚式? と思ってました。
見開きのカラーの恰好、無言で上着を貸すか、せめて前を閉じたい、あんな可愛いもの他に見せて堪るか
所々引っかかりますが、まあ、可愛かったので、いいかなあ