路地裏ビルヂング/三羽 省吾
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【毎日すれ違うけど名前も知らないふしぎな距離感。同じおんぼろビルで働く人々のそんな関係から生まれる、日常のドラマを描く6篇の雑居小説。 】


すっごくモヤモヤするんだが!!

■ 感想とか色々~

辻堂ビルでのお話。
1階 お食事処 辻堂
2階 あおぞら保育園
3階 辻堂塾
4階 HN不動産分室
5階 オーガニック・ヘルス(株)
6階 辻堂デザイン事務所
屋上 祠あり。

お話の掲載順は

5階のわけあり新入社員
2階の息子との同居を悩むおばさん
3階の司法書士を目指す塾講師
4階のクレーム対応・電話係と泥棒
6階の熱血営業と懲りすぎデザイナー
いつも食事処にいるおじいちゃん(まとめ)

道祖神
5階のやってることがさ! ちょっとね!!
1話目にこれ持って来るか… 後味悪い。
「社会の厳しさが良く解ったね」かと思ったら普通に後味悪い、しかも会社のやってることがやってること。(これ詐欺に近いんじゃ)
情報の持ち出しとか。法人から個人にしろっていうので可笑しいなとは思ったけどさー!!
朝礼とか体育会系、うっは無理だわこれ。
GPS付携帯は迷子になったときよく使うので馬鹿に出来ない。


紙飛行機
2階はまあ普通、50代のおばちゃんが転職を見つける話。
「息子が母親の所有物ではないように、母親は息子の所有物ではない」っていうのは、おばさんが出した答えなんだけど、でも息子さんがあなたのことをそう思っているかどうかなんてわかんねーよ。
「息子が自分のことを所有物だと思っている」と思っているのはおばさんだし。息子さん電話越しにしか出てこないし。
結婚されたそうで。おめでとうございます。
イラっと来た、息子のこと全部解ってるとでも思ってるのかな? よく解らん。
子供と一緒にいる仕事で煙草はどうよ!!>他の先生
陸海空は普通にいると思う。三人揃ってるとかっこいい!
なにを思ってそういう独創極まりない名前を付けるのか不思議で溜まらない。
お子さんに気に入ってもらえるといいですね。


サナギマン
3階! これは良い話、この中では結構好き。
塾講師と経済的に苦しい生徒さん。
生徒さんの弟さんがあおぞら保育園に通うタイガくん。
生徒さんのお名前はヤマトくん。
お母さんが頑張って働いてる。成績がいい。受験をさせたい。でもお金がない。
出来ない言い訳ばかりの塾講師。諦める理由がいつも同じ生徒。
同期の仲間との飲み会。ふらふらしてる奴の経験談。
すっげーかっこ悪い。かっこ悪くて、かっこ悪い。
かっこいいとこなんて電話かけたとこくらいじゃないかな。


空回り
4階、電話係。ひたすら電話かけて電話かけて電話かけて電話かける。上司はクレーム対応。
でも自分で望んでここに来たらしい変人。旦那とのいつもどおりの会話。
攻略本は吹いた、使うんかい結局。
泥棒騒ぎ、自警団、経費で飲み食い。今までの人達が揃う。
(これまでも、3階のお話のときは2階の保育士さんがちょこっと登場してたり、5階のときの話し合い場所が食事処になっていたり、相互にか細く関わりあってはいた)
恐らく内部の犯行、手先が器用な人。
他人の不幸は蜜の味。薄っすら気分が悪くなる話だなあ、この女きらーい。

風穴
熱血営業は会社のためになにをするか。
バッティングセンター て生まれてこの方関わらずに生きてきたんだが(精々バラエティでやるやつを見るくらい)どこにあるんだろ。
地味に群がってる若者が好きだ!!
営業職と技術職の隔たりは異常。
昭和くさい、昭和くさいのかな? これって昭和? 大正くさいとは言わないし、明治くさいっていうと西洋かぶれを言っているようだから昭和でいいや。
自警団の会合のとき寝っぱなしだったお兄さんも出てきます。

居残りコースケ
途中でほんの少しだけ日本の町並み非難してた、美意識の欠落した国ってことじゃん? らしい。おおおお。おおおおお?
コースケさん、起きているのか眠っているのか、聞いているのかいないのかわからない、食事処にいるおじいちゃんの丁稚奉公の頃からのお話。
「忠実な犬」らしい。
それぞれのテナントは転居先探し。保育園と塾は苦労しているようです。
神主さんがいらして小さなお社も動かすらしい。


あとユダヤ人っぽい(「国を持たない虐げられた民」)人がいる、料理が不味いんだって!!
不味い料理ってなんだ!
この人カタコトで、カタコトなのはまあ仕方ないにしても、泥棒騒ぎのとき警官来たらすぐ隠れる。それだけでも大分怪しいって言うのに料理が不味いってなんだ、そのまま頑張らないで放置ってなんだ、料理が不味いってなんだ。
「不味い料理」って食べたことないなあと思ったら、「不味い料理」は「不味い」って言うよりも「飲み込めない」や「食べる気にならない」んだなと最近気付いた。
読んでいる間ずーっとイライラしていたんだけど、おじいちゃんのお話でしんみりした。

オブジェ制作 金沢和寛さん
撮影 釜谷洋史さん
装丁 関口信介さん



路地裏ビルヂング (文春文庫)/文藝春秋
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