僕は長い昼と長い夜を過ごす (ハヤカワ・ミステリワールド)/小路 幸也
¥1,890Amazon.co.jp
【ミステリ・青春・家族etc… 少し奇妙で胸を打つ小路ワールド最新作。
僕の一日は五十時間起きて二十時間眠る。
拾った二億円と謎の<種苗屋>ナタネさん。奪還屋、強奪屋。
非二十四時間睡眠覚醒症候群。
15年前、強盗に殺された父親。ゲームプランナーとしての経験。
すべてのピースを活かして、周りのひとたちを守るんだ。
50時間起きて20時間眠る特殊体質のメイジ。
草食系でのんびりした性格に反し、15年前、父親を殺されたというハードな過去の持ち主。
現在はゲームプランナーをしつつ、体質を活かした<監視>のバイトをしている。
だが、そのバイトのせいで二億円を拾ってしまい、裏金融世界の魔手に狙われる羽目に。
メイジは戸惑いながらも知恵と友情を武器に立ち向かうが、この利とも枷ともなる体質が驚愕の事態を招く。】
■ 感想とか色々~
ホームタウン、かなあ。驚愕の事態、というほどでもない。
一応2億円を不本意に手に入れて追われる身ではあるけど、1番危ない所も庇ってもらえるし、仲間(登場人物)が確実に増えていくのでRPGみたいだった。
青くさいっちゃ青くさいがそれこみで読んでるのでそこはいい。
50時間の昼と20時間の夜を繰り返し、<監視>をしながらゲームプランナーとして勤めるメイジ。
明るいお嫁さんと結婚をし工場に居る長兄、地元を離れ千葉で暮らす警察官と結婚した妹。奪還屋と強奪屋。
表側に出せないお金を盗まれたらどうやってカタをつけるか。
父親に暴力を振るわれていた母親の失踪、15年前に殺された父親の時効が迫る。手助けしてくれる弁護士役のナタネさん。
顔は知らないけどなにかと助けてくれるハッカーのリロー。
刑事の新島さん、両親のいなくなった三人を親以上に育ててくれた職人さん。怒ろうと思って家を訪ねた看護師の麻衣子さん。
上司のバンさん、同僚の安藤さん、もうひとり、弁護士さんも乱入したり。
正直麻衣子さんの件は強引だし、あれはなんというか「自分に好意を寄せてくれる女性」を好きになったのであって麻衣子さんが好きなのか? とも思う。メイジはあまり麻衣子さん見てないし、ナタネさんのがちゃんと見ていた気がする。
安藤さんも後半でががっと出てきて、あんまり…… 実際ゲーム作るわけでもなし。安藤さんのお兄さんは確かにいい人だと思うけど、御家庭に事情がある率多くないですか。
(麻衣子さんは比較的一般的なご両親でした、でもお父さんそれでいいのか、緩いなあ鳥取)
50時間起きる、とはいっても、特に役立ててるわけではない。
ただ社長の飛行機あたりで上手く利用したとは思う。
発端の監視もこれがなければ成り立たないけど、1ヶ月2ヶ月の長期間にわたっての逃走や、こっちから奇襲かけるならまだしも、そんなに表に出ていなかった。
お兄さんが「もしかしたら家の下に母さんいるかも」とは言い出せないだろうな…。
掘り起こしたにしても(メイジと妹さんは実家に居なかったから、こっそりやろうと思えば出来た)、結果が結果であれば隠すだろう。それこそ「墓の下」まで持っていくと思うよ兄ちゃん。
「生きているかもしれないし、死んでいるかもしれない」状態からの変化。
ナタネさんとのエピソードがじんわり来た… この人のはこういうのが読みたい。
プランナーのストーリー作り。お父さんは結局メイジが殺したのかなあ。
そうした方が劇的ではあるが、現実は全く関係ないのに顔を出すものがある。(それこそ馬鹿馬鹿しいけど仲川さんに愛人がいたかもしれない。)
小説って本当に綺麗に収まるよね、てこの前言われて驚いた。
ハッピーエンドにしろバッドエンドにしろ綺麗であることに変わりない。
「どんな場合に於いても、<和>を重んじる日本人の心はなかなか理解してもらえない」(P300)
理解してくれなくていいからこっち来るな
しかし実際の話、私はキリストもイスラムもユダヤも理解する気はないし、そこら辺お互い様だと思う。
装画は丹地陽子さん!
好きー
文庫版~
僕は長い昼と長い夜を過ごす (ハヤカワ文庫 JA シ 5-1)/早川書房
¥882Amazon.co.jp
文庫版のイラストレーターは平沢下戸さん!