ジハード〈4〉神なき瞳に宿る焔 (集英社文庫)/定金 伸治
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【アスカロンの戦いの後、聖都イェルサレムに迫ったリチャード獅子心王が突然、半年間の休戦を求めてきた。
和戦を巡って、イスラム陣営が混乱するなか、王者サラディンの意を受け、和平交渉の使者としてヴァレリーは敵地へと赴くことになった。
膠着状態に陥った局面を打開することができるのか。
果てしない戦いに救いはあるのか。しかし、ついに思わぬ犠牲が…。
佳境に突入する第四弾。 】

天秤みたい。

■ 感想とか色々~

アスカロンの永久支配権と半年の休戦。
使者として立つのはアーディル。徐々に病に侵されていくサラディン。
出奔してきたウィルフレッド・アイヴァンホー、アーディルと彼をほしがったのはロビン。
政略結婚やら寝返りやら亡命やら忙しかった。兄さんと姉さんの体力すげえなあ…。

シャラザードは後半のひとつ大きな所以外はお母さんでした。お母さんいいよお母さん。
ウィル視点でエルシード(人)vsエルシード(馬)だったあとの説教なんか素敵過ぎるっ。
下水にはまっていた子猫助けちゃうような兄さんは 「氷炎」を演じていたと リチャードに近づきたかったと言っていたけど あたしにとっちゃお兄さんはどこまで行っても“「氷炎」を演じているお兄さん”でしかない。

内部の叛乱は黒人のレワニカさんが起こしたり。
もうひとりの皇子はアル=アジーズ。こちらは終ぞ正されることのない自分以外に利益を生まない者でした。
エルシードのもとに残された三通の手紙。兄さんが使者に行っている間。
辛い選択を強いたと詫びる声。
一緒にいたは一緒にいたけどここまでいちゃついてんの初めてじゃないかなー(笑)
いえ可愛いからいいですが、兄さんは時々さらっと凄い。
「私が引き取ってあげるし…」は え と思った。馬の後ろ足で蹴られてなんで平気なんだ。
ロビンとウィルを連れて帰って来たときの姉さんとかもう大好き!

あ、あとラスカリスとルイセが死んじゃった。
ルイセはまだドラマがあったような気がするんだけど、どうにもラスカリスが 「え あれ ここで終わりなの?」という気がした……。
死を過剰に装飾されることは嫌いなはずなのになあ、あっさりすぎて実感が湧かない。
ラスカリスの死にしたって取る行動はアーディルとエルシードは正反対だったな。
アーディル兄さんが夢に見たときのあの会話は好きだった! 繋がっていく。連なっていく。地の分が入り込まない会話。
姉さんも兄さんもどうしてそう相手がいない所だと嬉しいことを言ってくれるのか。
神さまだって好きな人連れて行きたいよな。わたしは勿論神さまじゃないけど、どうせだったら好きな人を連れて行きたいし。愛された子ほど早世だというのなら。
戦に負けてたり命からがらだったりギリギリの崖っぷち連続だからそれが平均になってきたかな。あんまり、……なんというか、悲しくない。

みなさん勘が宜しいのか聡いのか敏感なのか 形だの資質だのよく解りますねー…… と思った。
欠けた円。でこぼこで、いびつな。角度によって変わる。一定ではない不規則な枠。
戦争の策、というほどではなかったかな、アーディル兄さんの「先読み」は相変わらずでしたが、寝込んでたりにこにこしてたり。
エルシードが怒ってると兄さんが嬉しいように、兄さんがのんべんだらりとしてるのを読むのが好き。それでまた姫さんに怒られちゃえ。

イラスト:高橋常政さん、デザイン:岡邦彦さん
解説で乙一さんが書いていた この激しい人事異動、まるで出版社内部のようである。実に目が離せない。が凄く好きです。吹き出して笑った。
同じく解説、質問5の乙一の考察でもさらりと酷いことを言っているのがよかったです。


ジハード〈3〉氷雪燃え立つアスカロン (集英社文庫)/定金 伸治
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