春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)/米澤 穂信¥609Amazon.co.jp

【小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。
きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。
それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。
名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。 】


羊の着ぐるみ
高校の合格発表から始まり、リポーターのインタビューを断って、約束どおり温かいものでも、としたところでまた掛けられた声は――小学校以来の同級生・堂島健吾
本来ならそのままで終わるはずだった旧友との再会に、入学間もない頃くっ付いてきたのは消えたポシェット探し。
僕は笑ってやり過ごし、小山内さんは隠れてやり過ごす―――そう決めた“小市民”。
学校の中での堂々巡り、携帯電話を持っているのに追いかけっこをして、同志かと思った女子生徒は意外と大胆、待たせている小山内さんにも悪いし、そろそろ切り上げたいんだけど――。
「それなんだけどね。ぼくが思うに、この件は目撃者の証言で片がつく」



For your eyes only
新聞部に入った健吾に頼まれたのは「絵画」について知恵を貸してくれ、というもの。
いまが最高、という一瞬がある。
この一文から始まる二作目は、“世界で一番高尚な絵”を書こうとした美術部の部員の置き土産。
置きっ放しになった2年間。ほとんど同じ2枚の絵。タイトルの意味。かつてのインタビュー。
びりっと破いちゃうお姉さんが大好きです…!

「高尚と低俗とで常に低俗の方が多いなら、それってただ数の多寡を論じているだけじゃないのか」



おいしいココアの作り方
堂島宅に御呼ばれしてのココア討論会。
堂島から小山内さんを上手く庇えなかった小鳩くんは、その代償のように昔のことを蒸し返される。
中学での三年間。昔と今の違い。
中々お手洗いから戻ってこない小山内さんを見に行くと、聞こえてきたのは堂島(姉)と小山内さんの会話。
「おいしいココアを三倍作るには、濡れた存在が四つ必要。四つ目はなにか。」
堂島の…堂島のズボラ加減が……! オチに思いっきり笑ってしまいました。いやぁ、そう来るか。


はらふくるるわざ
理Ⅰでのテストの途中、突如起きた破壊音。
思い出そうとして、思い出しかけて、思い出せないままだった問い。
小山内さんのヤケ食い。
テスト中の余所見もそうですが、自転車やサカガミ、奪われたいちごタルトもそろそろ終結。


孤狼の心
これまでの短編に混ぜられた“ヒント”を元に、小鳩くんの本格的な推理があり、小山内さんの本性が現れました。
うわああああそうかそう纏めるのか!と上手さというかさり気なさにも拍手ですが、特に小鳩くんの話術「%」も凄かった…!
まぁあそこで全部掛けちゃうのはズルいと思ったけど、流されますなきっと。
自動車学校と年齢、法律、下っ端の1年生と、盗みに入られたイオキベさん。
ケータイの機能には力が抜けました。小鳩くん…買い換えようぜ……!



春期限定いちごタルト事件 前 (Gファンタジーコミックス)/米澤 穂信
¥580Amazon.co.jp
→(コミカライズの感想