ぼくは勉強ができない (新潮文庫)/山田 詠美
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【ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―――。
17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。
ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。
母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。
この窮屈さはいったい何なんだ。凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。】


ぼくは勉強ができない
数表の差で学級委員が脇山になったとき、くすりと笑って僕の横を通り過ぎた。
思い出すのは小学生の頃。転校すぐに行われた学級委員決め。
秀美の書いた名前と、率直過ぎる質問、クラス委員の素質と、優しそうな伊藤友子。
いい顔の桜井先生。


あなたの高尚な悩み
虚無とか退廃とかいう言葉が好きなサッカー部の植草と、貧血気味の黒川礼子。
頭痛になれば掻き消えてしまう国際問題。幼馴染で美人の真理。
桃子さんの所に押しかけて揺り起こす秀美が可愛い。


雑音の順位
政治家になる!と言い始めたクラスメート。
理由を聞けば、飛行機の音が煩いから。
隣人の生活をする音が煩くて、それに盛り上がる男子学生。
桃子さんとの一波乱。叩いても開かないドア。嫉妬の音


健全な精神
真理が好きだ―――! 特にP80の“純愛ごっこ”のくだり。
停学になったと回ってきた手紙。遊びに来てと誘われた。
健全な体に健全な精神が宿る。思春期の頃の健全なんて消えちゃえ。


○をつけよ
一番好き!
避妊具を落とした秀美と、出てきた言葉が「不純異性交友」、殴る手前の説教。
「セックスすると、成績が下がるって証拠でもあるんですか?」のP107がお気に入り。
バッテリーの巧の「髪を切ればボールのスピードが上がるのか」と根本が一緒な気がします。
道理の通らないことを平然と言わないでほしい。なんでゴム持ってて怒られなきゃいけないんだろう。


時差ぼけ回復
珍しく引いた風邪。薄情と言うわけじゃないけれど、なにかがあったな、と思わせる同級生の見舞い。
クラスメートの自殺。前に聞いていた一時間の空白。それに合わせなければいけない社会。


賢者の皮向き
努力した美人も生まれつきの美人もどちらでも好きだけど、自分の能力を把握しようとしていない、という点ではどちらも嫌いになります。
男子生徒内での校内ベストスリー。可愛いと有名の山野舞子。告白しようとする川久保。 
P152の「自然体っていう演技してるわよ」が痛恨。香水でも石鹸でもどちらでも。


ぼくは勉強ができる
進路選択を迫られ、甘ったれるな、と軽く叩かれる。
舞い込んでくるのはじいちゃんが倒れたという知らせ。
お母さんが可愛いな。


眠れる分度器
小さい頃の秀美。奥村先生視点。子供の立場になってくれる白井教頭。雀の死体。つまらない民主主義。貧乏な赤間。小鳥の為に集められるパン。
秀美と言う生徒がどれだけ厄介か、お母さんがどれだけ曲がっているか。
P239の同じなんです、が好き。


■総じて
中学に読んだときほど楽しめなかった……あれ。
最初に秀美の“他者と違う”というのが鼻についちゃったからかな? 下手すりゃ中二病。
そもそも、「女の子のナイト」になるために知識つけてるわけじゃないし、人としての魅力と異性としての魅力って全部がイコールじゃないと思う。
女にモテなくたってカッコいい人はカッコいいし、なんでこんなのがモテるんだろう、っていう人もいる。
秀美のような人は好きだけれど、違うことに酔いかけているような。
嫌な教師を痛快に切ってくれるのは前と同じで楽しめました。
ただ、もうちょっと同級生、頭よくしてもよかったんじゃないのかなー。