七姫物語 (電撃文庫)/高野 和¥578Amazon.co.jp

【ある大陸の片隅。
そこでは、七つの主要都市が先王の隠し子と呼ばれる姫君を擁立し、国家統一を目指して割拠した。
その中の一人、七宮カセンの姫に選ばれたのは九歳の孤児カラスミだった。
彼女を担ぎ出したのは、武人のテン・フオウ将軍とその軍師トエル・タウ。
二人とも、桁違いの嘘つきで素姓も知れないが、「三人で天下を取りにいこう」と楽しそうにそう話す二人の側にいられることで、カラスミは幸せだった。
しかし、彼女が十二歳になった時、隣の都市ツヅミがカセンへの侵攻を始める…。
第9回電撃ゲーム小説大賞“金賞”受賞作。
時代の流れに翻弄されながらも、自らの運命と真摯に向き合うひとりの少女の姿を描いた新感覚ストーリー。 】


みなさんやっていることは結構ちゃんと「国とり」なのだけど、どうしてか物々しい雰囲気はなく、むしろ穏やかで優しい空気が流れているお話でした。

■登場人物
仕立て上げられたお姫さま役を演じる カラスミ。
呼吸をするように嘘を付く策士は小柄な大人 トエル・タウ。
市を横切る度に連れている女性が違うような自由すぎる将軍 テン・フオウ。
一番辛辣で鋭い、カラスミを東和七姫空澄姫にしてくれる 衣装役さん。
音無しの数少ない末裔、無音を身に付けた灰色羽織の無口な少年 ヒカゲ。


■基本的にゆったりまったり
侵攻とは言っても生々しいものではなく、戦はあるけれど空澄はそこに立っていない遠方の地。
渦中となるだろう人とは出会うのに、彼女の気性と地の文はどこまでも穏やかです。
刺激が少ない分柔らかいので、読んでいてほんわかします。知りたがり屋のお姫さま。
策略は文官に、戦場は武官に。
間にいる空姫は、ただ世界を見てみたくて、甘いものが好きで酸っぱいのがダメな、女の子。


この子が視点なもので、どうにもトエル・タウとテン・フオウに対する表現ばかりが残ってしまいますが、あの2人に担がれることを是とし、自分の知りたいことに率直なカラも大した器だよなと思います。

七姫を七姫として擁立する前に、他の都市を回って財を成しては破綻していたそうで。
「面白いから」財を成し、「詰まらないから」破綻した、と思える所がまたこの2人の凄いとこなのだけど。


■舞台となる東和と、遠く離れた中原
中原での大戦争、疲弊した土地が狙うのは、裕福なこの東和。
傭兵崩れといわれるテン・フオウと、世界の半分は嘘で出来ているというトエル・タウ。
七姫宮都市の「カセン」や、それ以外の都市での交易、名産品。七葉と呼ばれる商業組合、八枝の交易路。
宮姫自身の呼び名と十二の詠み枝葉は漢字好きとしてはかなりそそられました……素敵だ。

琥珀と常磐、黒耀の登場。