細音 啓
イヴは夜明けに微笑んで

【誰かのもとへ還りたい--切ない願いが紡ぐ、詠うファンタジー!
物体の名前を詠うことで呼び寄せる召喚術・名詠式。その専門学校に通うクルーエルは、異端の夜色名詠を専門にしている転校生・ネイトに興味を抱いていた。同じ頃、学校に伝説の名詠士・カインツが現れて--!?】

正直、主人公ズの恋愛より、カインツさんと<始まりの女>イヴマリーのお話が読んでみたかった。
この二人でひとつお話造れると思うんだ! 十分面白いと思うんだ!
と最初に主張こそしますが、夜色の髪の少年、ネイトと、緋色の髪の少女、クルーエル含め、
級友達から世界観、果ては召喚するためのオラトリオまで、非常に透明感が強く、清廉な仕上がりだったなァと思っております。
得になぁ、セラフェノ語が、字体含めて、物凄くキレイなんだ。美しい。
学校を破壊するほどの事件が起きているのに、それに立ち向かう虹色名詠士・カインツ(大好き)を筆頭に、美しく戦っている、という表現がこれほど似合うのも貴重。

引っ張った感は正直強いけれど、大きい黒トカゲ(と呼ぶと怒る)アーマと夜色の真精・イヴの存在は味に深みを増してくれました。
美麗な竹岡美穂さんのイラストも然ることながら、未来に期待していた学生時代の別れとは違い、二度目の別れは、もうお互い大人になっていて、全てに近いことを知っていて。
死んでしまった者は戻らないけれど、もうそのシーンではイヴ……!と胸が詰まりました。

かつてカインツと同じく生徒だった人達が母校で教師をやっているというのも面白いですね。
これから生徒達と一緒に色々絡んでくれれば嬉しいなァと思います。
イヴもまたでるでしょうし。どんなにそれが遠い先のことであっても。
きっとカインツは待つと思うんだ!