豚インフルエンザ: WHOの発表より | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

豚インフルエンザ: WHOの発表より

WHOが豚インフルエンザについての緊急発表
を行った。
概要は以下のとおり。

1. アメリカではカリフォルニアで5人、テキサスで2人のA-H1N1型豚インフルエンザの発症を確認。
他にも9人が陽性の疑いあり。発症者のうちの1人が短期入院。死亡は確認されず。

2. メキシコではメキシコシティで3月18日から調査が始まり、4月23日の時点で854人を超える肺炎患者とそのうち59人の死亡が報告されている。San Luis Potesi(中央部の主要都市)では24の発症例と3人の死亡が報告されている。Mexicali(カリフォルニアの南端と接する都市)では4人の発症(死亡者なし)が報告されている。

3. メキシコの患者のうち18人はカナダでの検査でA-H1N1型豚インフルエンザであると確認され、そのうち12人はカリフォルニアの発症例と遺伝子的に同一だったことが分かった。

4. これらのうちの多数は、若い成人による発症である。インフルエンザは通常小さな子供と高齢者が主な感染者となるのが普通だが、メキシコではそれらの人々の感染はそれほど目立たない。

5. 本件は動物から人へのインフルエンザ感染であること、複数の地域での発生という地理的な広がりを見せていることに加え、感染者の年齢層が通常のものではないことから、これらの出来事は強く懸念される("these events are of high concern")

6. 今回のA-H1N1型インフルエンザは豚、人間への感染がこれまで確認されていない。現在のところタミフルは有効だが、アマンタジンとリマンタジンへの耐性があることが分かっている。


3月18日からメキシコシティで調査が始まったということは、調査の必要性が感じられてから1ヶ月以上経っている訳だ。

メキシコシティ、San Luis Potesiはメキシコの中央部にあり、アメリカとは数百キロは離れているにも関わらず、国境近くの都市やカリフォルニア、テキサスでも感染例が見つかる、というのは事態の深刻さを表しているのかもしれない。

いたずらに恐怖をあおるつもりはない。
しかし、「発生する確率は低いがもし現実のものになると甚大な被害が発生するリスク」の危険性を正しく認識することは、認知科学的に極めて難しいものであることは実証されている。

各人がリスクを軽視せず、おのおの自衛手段をとることによって、結果として「何もなかったじゃん、心配しすぎ~」って「事後的に」なって笑い話になるのはいいことだから。

リスクを軽視した人も、コストを掛けて自衛手段を取った人たちに見えない形で「フリーライド」するわけだから。
(たとえば、30%の人が自衛手段をとったからパンデミックにならず局地的な流行で済んで、それが5%少なかったらパンデミックになっていた、などということは十分あり得る)

心配性の人を鼻で笑うのは、やめた方がいい、と個人的に思う。

(かつて鳥インフルエンザのパンデミックについて調べたが、やはりわれわれの世代が一番死亡率が高くなるようだ。
なおかつ発症を発見してからすぐに措置を取らないと、爆発的な伝染が起こる可能性が高まる。
以下の関連記事参照。)


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