ベア実質破綻は、人災だ | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

ベア実質破綻は、人災だ

いつものことですが、本文は筆者の個人的な意見です。

ご利用は、計画的に。


ベアが、実質破綻。


木曜日60ドルだった株が、金曜日には半値の30ドルで引け。

日曜日には、何と2ドルで買収されることに。


投資銀行の給料って、かなりの部分が株で支払われるので。

それも、すぐに売れない株。

だから、従業員は基本的に自社株を大きくロングしている。


それが、いきなり、30分の1になったら。

目も、当てられないよ、マジで。

何年働いても、引退できないじゃん。


全く、他人事に、あらず。

自社株は、売れるようになった時点で、すぐ売らなきゃ。


正直、ベアはFEDの失策によって、破綻させられたと思う。


以前も書いた が。

つい6日前に発表された、2000億ドルの資金供給を行う、TSLFは。

実質、ベアを破綻の淵から救い出すための方策だったのに。

担保資産の掛け目も決まっていないという、極めて詰めの甘い状態で、発表され。

実施も27日からと、即効性に乏しく。

FEDが政策を小出しにしているという悪い印象を、市場に与え。


というか、もっとはっきりいうと。

FEDが、しっかりとした準備をしないまま、TSLF実施を発表した、ということは。

2週間以上経たないと実施が出来ない、資金繰り安定化策を中途半端に発表して。

「ベアの資金繰りは危機的な状況にありますよ!」と、全世界に言いふらして回ったに等しく。


ベアをプライムブローカーとして使っていたヘッジファンドが。

ベアの信用力を懸念して、一斉に資産・資金の引き揚げに動き。

一部ヘッジファンドは、自らのそういった行為がベアの破綻につながりかねないことを理解したうえで。

ベアのクレジットも、ショートしていたに違いない。


悪い噂は、今の相場では自己実現する性質を持つ、といみじくも書いたが。

一国の中央銀行が、そんな悪夢を実現させてどうするのだ。アホか。


JPモルガンを経由したBack to Backの形でFEDがベアに資金供給したのが金曜日。

昨日も書いたが。

資金供給することによって、FEDはベアを潰さない、システミックリスクを引き起こすような破綻は許容しない、と市場に強いメッセージを送ったにもかかわらず。


金曜日引けで、ベアのCDSは70bpsワイドニングして700台前半で引けた。

一時は800bpsを超え、8.5/10.5のアップフロントプレミアムで取引されていた。

すなわち、FEDの言うことなんて当てにならん、と市場は思っていた、ということ。


そして。

NY時間日曜日に。

FEDが、公定歩合による窓口貸し出しを、銀行だけでなく証券会社に認める、と発表。


先述したように。

日曜日、たった250mm程度で、ベアは買収され。

その85年の歴史に、幕を下ろそうとしている。


歴史に「たら、れば」は禁物だが。


政策を小出しにすることなく。

3月11日に、TSLFの代わりに公定歩合による窓口貸し出しを、証券会社に認めていれば

あるいは。

既存の枠組みを使って、銀行経由でベアにFEDが資金供給していれば


ベアは、こんなことにはならなかっただろう。


バーナンキは。

先日、上院銀行住宅都市委員会で、「中小金融機関の破綻の可能性がある」 と述べたが。

その時点で、「この人セントラルバンカーとして、大丈夫?」と、たくさんの人が疑問を呈した。


だって、普通はさ。


急に円高行ったら。

日本の政府高官は、「政府として為替市場の変動を注意深く見守っています」、とか。

「急激な相場の変動は望ましくない」とかいうのがお約束で。


金融システム不安を惹起しかねないイベントが起これば。

セントラルバンカーは、「金融システムの安定化のために最大限の努力を払います」というのがお約束で。


「中小金融機関は、潰れても知らないよーん」、なんて、無邪気に言わんわ、普通。

それも、FDICの預金保険基金が、たった510億ドル(5兆円程度)しかない、というのに。

たかだか地銀1行分ぐらい。

そんなこと言っちゃって、システミックリスクに鈍感なのか、この人は、とみんなが思い。

そして、今回のベア実質破綻。


バーナンキは、市場の信頼を、大きく裏切って。

その信認は、大幅に失われた。


そして、今日のNY取引は。

ベアのCDSが、340/380あたりで始まり。

JPMのCDSが、200近辺で取引されていることを考えると。

JPMのベア買収には、不透明性が残っている、と市場は考えているということ。


Park Avenueの東側で起こったイベントの衝撃波は。

取りあえず、Park Avenueの向かい側の金融機関が、せきとめたが。


その衝撃は、実は今、5th Avenueか、Avenue of America近辺まで届いていて。

Times SquareのBroadway東側に、迫りつつあり。


Times Squareの東側の会社のCDSは。

今日のNYオープニングで500台、現在は少し戻して400台後半。

ヨーロピアンセッションで、株価は前日の25ユーロ相当から、17ユーロ台まで売られ、30%近い下落。


ここが万が一飲み込まれると。

Broadwayを挟んではす向かいにある会社に、波及する可能性大。

流石にWall St.より南側に波及することは、考えにくいが。


正直、明日の朝どこの会社がなくなっていても不思議ではない、と思わせるような、FEDの迷走ぶり。

これで、明日FOMCで、ただ75bps利下げするだけだったら。

何のカタリストにもならず。

さらに、また「FEDはBehind the Curve(後手後手だ)」と言われ。


そして、同日にGSとLEHの決算発表が控えていて。

翌日、MSの決算。

そして、その次の日は、東京休日。

金曜日から、イースターホリデーで、市場の流動性は極端に落ちることが予想され。

ちょっとした売り物で、相場が激変する可能性高く。


本当に、ドミノ倒しを未然に防げるのか?

大丈夫か?バーナンキ。

明日の朝、ちゃんとうちの会社、あるよね?冗談じゃなく。

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