終わりの始まり | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

終わりの始まり

今日はマーケットが音を立てて壊れた。

朝、BloombergTVを見て。

ダウが220ドル安、金融銘柄に売り、カーライル傘下のモーゲージ会社がマージンコールに応えられなくて破綻危機、Citiがモーゲージポートフォリオを大量売却へ、と知る。


急いで会社へ。

数字を見て驚く。

ABX、最安値更新。

CMBX 2007-2、AAA格275bps、+40bps(!!)、AA格875bps(!!)

Bear StearnsのCDS、400越え。

CitiのCDS、200越え。

CDX IG9、180台。+18bps(!!)

2006年ビンテージの一流マネージャーのCLOのAAA格、単価で80円台半ば。


そして東京マーケットは。

日経430円安。

CDSインデックスは、一昨日120bps、昨日135bps、そして今日の最ワイドはなんと171bps。


終わりの、始まり。

マーケットが、音を立てて、壊れた。


時価トリガーのある、あるいはギャップリスクのある商品が、トリガーに抵触して。

まとめて解約され。

CPDOとか、マーケットバリューCDOとか、レバレッジドスーパーシニアとか。

極めて限られたタイムフレームの中で、売りが行われ。

売りが、売りを呼ぶ展開に。


(武富士のディフィーザンス、酷いね。SIV担保のCPDOなんて、あり得ない。)


FEDは金利下げてお金を市場にジャブジャブにさせているが。

カウンターパーティリスクを恐れて、金融機関は他の金融機関に資金融通を行わず。

まさに、クレジットクランチ。


ヘッジ取引を行っても。

取引相手方がデフォルトすれば、ヘッジしたことにならないので。

カウンターパーティリスクについて、超慎重。


カウンターパーティリスクを恐れて、担保の値洗いをちゃんとやった結果。

マージンコールを掛けなければならない状態になり。

先述した、モーゲージ会社の破綻や。

ヘッジファンドの、デレバレッジが発生。

デレバレッジは、ポジションの解消だから。

これも、売りが売りを呼ぶ展開に。


GSのCEOがインタビューに答えていて。

今回の市場下落が、彼がこれまでに経験したものと比べ。

「より広範で、より長期で、より深刻だ」

「まだ道半ばか、3分の2来た程度に過ぎない」

と、述べていたが。


全く持って合意。

反転の兆しが見えないどころか。

何がカタリストになるのかすら、No idea。


証券化商品の8割を占める、AAA格。

当然安全なので、スプレッドはタイトで。

これまで買ってきたのは、銀行、一部のリアルマネー、SIVやABCPコンデュイット。


でも、SIVやABCPコンデュイットは、もはや存在せず。


頼りの綱の、銀行は、と言うと。


昨日NY引け時点で、米国のマネーセンターバンクのCDSスプレッドは。


JPM 132bps

BoA 132bps

Citi 205bps

Wachobia 300bps

Wells Fargo 142bps。


ファンディングコストも、これと同様に上昇しているので。

少なくともこれ以上のスプレッドがある投資商品でないと、ネガティブキャリー垂れ流し。


一部のリアルマネーしか、高格付の証券化商品を、買い支えることが出来ない状態。

ヘッジファンドとかには、リターン低すぎるし。


証券会社のCDSスプレッドは。


GS 220bps

MS 250bps

ML 270bps

LEH 300bps

BS 400bps。


これじゃ、証券会社が在庫で抱えるためのファンディングコストを考えると。

すべてのクレジット商品が、ワイドニングせざるを得ない。


金融機関の、リスク仲介能力の低下。

資本注入でしか、リスク許容能力の回復は見込まれないのは、ポールソンも指摘しているところだが。


今日は。

MSに資本注入したCICが、海外投資を凍結、というニュースが北京新報に。

さらに。

Citiが資本不足である、という見解を、Dubai投資庁が示した、というニュースが、昨日のFTに。


中東や中国のソブリンウェルスファンドも、資本入れられないのなら。

だれが金融機関に、資本入れるの?


公的資金以外、あり得ない。


バーナンキとポールソンのコンビが、そこまですぐに踏み切れるのか?

答えは、No。


したがって。


市場回復のキーと見られていた、金融機関の資本増強は、しばらく起こらない。

だから。

終わりは、始まったばかり。


日本にとっても、他人事ではなく。

日本の金融機関だって、3月末の有価証券ポートフォリオの時価評価がどの水準で来るのか。

戦々恐々。

98年、99年、2003年の年度末に、日経平均の引け値がどこになるのか固唾を呑んで見守ったことを、思い出した。


2月の時価評価から、大体どのクレジット商品も数ポイントは下落していて。

当初は減損に引っかからないと思っていた資産も。

例えばCLOのAA格とか。

70円台を割っているような状況。

そうなると。

また、売りが売りを呼ぶ展開に。


がっつりシンセティックCDOを買っていた信金とか、地銀とかが。

大変なことになっているのは、簡単に想像でき。


ひるがえって。

原材料価格の上昇が、最終財価格に転嫁できず。

貸金業法や、建築基準法の改正(というか改悪)のせいで、資金繰りが厳しくなり。

日本の中小企業の破綻件数も増加しており。

海外だけでなく、金融の世界だけでなく。

日本の実物経済も、確実に悪化。


そんな中。

民主党は、日銀総裁のポストを政争のオモチャに。

金融政策の最高決定権者の席が、こんな緊急事態に空席になるかも、という恐ろしい事態。


日本は、終わりの始まりじゃなくて。

もしかして、すでに終わっているかも。