現在の特急車である9300系の営業最高速度は115km/h、「京とれいん」の6300系は110km/hです。このため、「京とれいん」の快速特急は最高速度の差によって先行の特急に引き離され、特急が途中駅に停車している間に差を詰める、という運転を繰り返します。
実際にこの快速特急に乗車してみると、淡路付近を除いて徐行は少なく、比較的スムーズに走ります。（6300系も115km/h運転くらいは十分対応できると思いますが、ここではそれは問わないものとします。）
かつての京阪の「びわこ号」（写真）も、京阪線内ではこれに似たダイヤで運転されていました。転換クロスシートを備えた京阪線の急行車両に比べて「びわこ号」の車内設備が劣っていたことは前にも述べましたが、実は高速性能でも急行車両に遅れをとっていたのです。
「びわこ号」は京津線内の急勾配に対応するため、高速性能を犠牲にせざるを得なかったのです。当時の技術では、これらを両立させることは不可能でした。
この問題を初めて克服したのは、1958（昭和33）年に登場した南海高野線の「ズームカー」です。「日本初の冷房車」もそうですが、南海の先進性は京阪に一歩もひけを取りません。 なお、初代ズームカーの21000系は、現在も一部が他社で活躍を続けています（写真は大井川鐵道の家山駅で撮影）。
京阪の「びわこ号」は急行の直前に天満橋を出発するダイヤでした。そして、急行が途中駅に停車している間に引き離し、次の急行停車駅までの間に追い上げられながら三条まで逃げ切ったといわれています。
「京とれいん」の快速特急のダイヤもよく似ていますが、一つ大きく異なる点があります。 それは、「びわこ号」が急行の直前を走り、「京とれいん」の快速特急が特急の直後を走っていることです。
「京とれいん」の快速特急は、最高速度の差を巧みに利用したダイヤで運転されています。しかし、特急の2分後を続行するダイヤでは、列車としての実質的な存在価値はほとんどないことになります。
現状では、「京とれいん」という車両を選んで乗る人のために走らせているのが実態です。本来は「びわこ号」のように「直前」を走り、京阪間直通客と中間駅の乗降客を分離するのが理想です。
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