去年日本公開の作品。
ノーマークだったのですが、評判が良かったのを知って鑑賞
実在したジプシー出身の女性詩人が主人公です。
2013年 ポーランド
ポーランドを旅するジプシー一族に生まれたパプーシャことブロニスワヴァ・ヴァイスは、幼少時から言葉に強い関心を持っていた。
彼らの言葉で人形という意味の愛称を持つ彼女は空想の世界が大好きで、詩を詠むことが生きがいの少女だった。
やがてパプーシャは成長し、ジプシー一族で初の女性詩人となるが… シネマトゥデイより
1971年 冷戦下のポーランドから始まりますが、
すぐにこのドラマの軸となる1949年に切り替わります。
この年、彼女たちはこの先の人生に関わる一人の青年と出会います。
時代が1971→1949→1921→1925→1952→1939→1971年、
など行ったり来たりするため、忘備録を兼ねて彼女の形跡を整理しておきます。
1910年 パプーシャが生まれる。
1921年 ユダヤ人女性に字を教わる。
1925年 伯父(叔父?)と強引に結婚させられる。
1939年 戦争が始まる。ジプシーもナチスの標的に。孤児を拾う。
1949年 滞在先のコミュティでレジスタンスの男と知り合う。
1952年 政府の、ジプシー定住化政策で旅が終わる。
1971年 彼女の詩が評価され、大臣から表彰される。
字を読めないジプシーたちと違い、
パプーシャは自然と人間を調和させる素朴な詩を書いていました。
それを認めてくれたのが、ワルシャワから来た若い男性。
父親のような歳の夫と無理やり結婚させられた彼女は、
この男性に恋心を抱きます。
もちろんそれは自分の心の中に仕舞うしかありません。
ワルシャワの戻った男性に、彼女は詩を送り続けた。
それが世間で評価された。
しかし、逆に家族にとんだ災いをもたらします。
「詩」のためにパプーシャの人生は変わってしまった。
でも、彼女はジプシーの生活を心から愛していたのです。
お金にも名声にも興味が無い。
書くことだけが生きがいだったのに、周りはそれを許さない。
ポーランドにおける第二次世界大戦~冷戦を描いた作品は他にも少なくないと思いますが、
この時代のジプシーの物語を私は初めて観たと思います。
前述しましたが、民族浄化の一環でナチスに追われ、戦後も厄介者扱い。
戦後の住居は、ユダヤ人の住んでいた家に押し込まれたなど初めて知りました。
また、国に所属するわけでは無いので、言語は彼ら独自のもの。
パプーシャの詩は「翻訳」という形でポーランド語になったようです。
現代人から見ると貧しく不自由な暮らしのジプシー。
でも彼らはその暮らしで充分満ち足りている。
教養が必要か否かも、
現代人の価値観をジプシーたちに押し付けてはいけないのだと思いました。
作品としては、モノクロの映像が幻想的でした。
夜の月、雲の中から注ぐ陽、湖の上の光。
自然の風景はどれもカラーでは味わえない映像。
パプーシャの少女時代と、大人になった女性があまりにも似ていないのが残念かな。
ワルシャワの男性はとてもハンサムだと思ったら、
ポーランドの人気俳優さんだそうです。
向上心は時によって生きていく上に邪魔になることもある、
そんな環境に育ったパプーシャの人生ドラマです。