2010年 カナダ・フランス


ある日、カナダで暮らす双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)の母親ナワル(ルブナ・アザバル)が永眠する。後日、長年彼女を秘書として雇っていた公証人(レミー・ジラール)により、母の遺言が読み上げられる。その内容は、所在がわからない自分たちの父と兄に手紙を渡してほしいというもので……。 (シネマトゥディ)より


重たい話だと聞いていたので覚悟して鑑賞しましたが、

中東の戦争は、過去の話では無く

ご存じのように今でも続いているので、

母ナワルの過去とは言え、現実的でリアルな内容でした。



最初は何故ナワルがプールサイドで倒れたのか全く分かりませんでした。

それが明らかになるのは最後の最後です。



この「ナワル」から順にタイトルが付き区切られたストーリーです。

時代が行ったり来たりするのですが、

ナワルと娘ジャンヌの区別が一瞬分からなくなります。

顔が似ているだけでは無く、中東ということで頭からスカーフを被っている場面があり、

顔がよく見えないことがあるからかな。



とは言え、この舞台レバノンはフランスの統治が続いたため、

イスラム教だけでなく、キリスト教の信者も多いのですね。

民族はアラビア人が大多数ですが、

言語はアラビア語とフランス語を使うようです。

それゆえ、ナワルと子供たちは、

アメリカでは無くフランス語を使うカナダ東部に移住したようです。



レバノン内戦が舞台と言えば、

最近では2008年にゴールデングローブ外国語作品賞を受賞した「戦場でワルツを」

周辺の中東諸国や多国籍軍を巻き込んで、

私には読んでも理解できないほど複雑な内戦です。





その内戦の真っただ中にいたナワル。

彼女の過去も壮絶でした。

普通の女性のように戦火の日に逃げているのでは無く、

その火の中に自ら飛び込んでいるのですから…ガーン



ネタバレ無しで観たので、私も最後まで気づかなかったのですが、

彼女が投獄中に出てくる拷問人の男が、

この作品全体のカギになります。

この拷問の時の映像が殆ど出てこないので、

私はそこに全く気が付きませんでした。

「1+1=1」だったのです…ショック!



生前から謎めいていた母の過去。

「マディソン郡の橋」で、亡き母の不倫を知った子供たちを思い出しました。

やはり娘のほうが、それを受け止める力を持っています。

でも息子はまかなか現実を認められない。

母とは性の違う息子はそういうものなのかも知れませんね。



遺言は守られ無事にお墓に葬られたナワル。

そしてその前に立ち尽くす一人の男。

過去と現代の登場人物の息遣いが聞こえてくる作品でした。


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