2010年 イラク他
フセイン政権崩壊後の2003年4月。
クルド人の祖母と孫のアーメッドは、
ナシリヤ収容所に収監されているらしいアーメッドの父親に会いに長い旅に出ます。
今年のアカデミー賞の外国語作品を受賞したのはイランの作品。
こちらの作品はお隣のイラクの作品です。
「えっ、イラクで映画なんて撮影出来るの~?」と思いますよね。
確かアフガニスタンが舞台だった作品は、
あまりに危ないので別の国で撮影したと記憶にあります。
イラク人のアルダラジー監督の話によると、
監督の前作の撮影時は「アルカイダに2回誘拐された」とか。
本作品では警察と軍が護衛してくれたそうです。
そこまでして撮られた作品ですから、駄作なはずは無く、
いくつものメッセージを含んでいます。
先ず、主人公の祖母と孫がクルド人であるということ。
祖母はアラブ人が話すアラビア語を話せません。
そしてクルド人はフセイン政権に迫害され続けてきました。
少年の行方不明の父親は無理やり連れていかれて兵士となっています。
何より私がビックリしたのは、
サダム・フセインが失脚した2003年が舞台のこの作品で、
2人が探しているのは、かのイラク戦争の犠牲者では無くて、
1991年の湾岸戦争の犠牲者だということ
エンドロールにありましたが、
イラクの過去40年の行方不明者は40万人以上。
2009年まで300の集団墓地が発見され15~25万人が身元不明者という事実。
アラブ人もクルド人も虐殺または見殺しにしたこの惨事は誰のせい
もはや核を持っていたとか持っていなかったとかの問題では無いと思いました。
DVD特典の監督のインタビューは見ごたえがありました。
イラクには映画産業が無く、主なスタッフは欧州人。
ところがイギリス人たちは北部の撮影で帰ってしまい(危険だから)、
残ったフランス人たちにも自国から帰国命令が出たことなど…
この作品はイラク現地で撮影することに意義があるのですね。
また、主役の2人(素人)が出演するキッカケになった話も興味深かったです。
最後にトラックの荷台から少年が見たのは沈む夕日とバビロンの遺跡の入り口。
紀元前300年に建てられたバビロンの空中庭園。
実物はどんなに素晴らしかったのでしょう。
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