2011年


終戦末期の1944年、サイパン島。

日本の統治下にあったこの島は、アメリカ軍の上陸を簡単に許し、

日本はこの島を手放してしまいます。

アメリカ軍に追われた軍隊たちは、天皇陛下の名の下、タッポーチョ山に逃げ込み、

アメリカ軍とすさまじい戦闘を繰り広げます。

率いる陸軍大尉の大場栄(竹之内豊)は、約200人の軍人民間人を避難させていましたが、

食料も衣料品も底を付き、収容所の日本人たちと連絡を取り合います。


原作はアメリカ海軍の軍人が書いたノンフィクション小説で、

もちろん大場大尉など実在した人物が登場しているそうです。


サイパン島がアメリカ軍に渡ったいるのにもかかわらず、投降しない日本人。

軍人たちは、部下の前で死ぬことを手本とするように教えられているから、

戦わずに逃げるなんてとんでもない。

また、民間人はアメリカ人を人食い鬼のようと思っています…目


戦争中の人間の狂気は敵も味方も同じ。

自分の身内を殺したアメリカ軍が憎い、

でも、日本軍も家族のいるアメリカ人を殺しているわけで、

もうキリが無いのは冷静に考えれば分かることなのですが、

この状況の中、誰も冷静に考えることなんか出来ないのも当然のことです。ガーン


血気盛んな軍人たちを率いてきた大場は、

最初は「一人でも多くの敵を殺すこと」を目的にしていましたが、

苦しむ味方を目のあたりにして、

「一人でも多くの命を守ること」を考え始めます。


豪華キャストで作られた作品で、

私は竹之内豊の出演作は初めてかな~

線の細い俳優さんに見えましたが、熱意は伝わって来ました。

な~んとこの作品で今年度のブルーリボン賞主演男優賞を受賞されましたクラッカー

よく見る俳優さんよりは、竹之内さんの方が新鮮だったかも。


特典映像を観ましたが、過酷な撮影だったようですね。

荒い息遣いを出すために、その場で走ってからセリフを読む竹之内さんです。アップ


劇中に流れる「椰子の実」は私が好きな曲です。音譜

藤村の掻いた望郷の歌。情景が浮かんできます。

若い人は聴いたことが無いかな~あせる


自分たちは死ぬために戦っているのでは無いと気が付いた大場。

でも投降するにはもっと上の上官の命令が無いとダメなのです。

年配の方なら憶えているでしょうが、

ルバング島の小野田さんも、確か当時の上官の命令でやっと山を降りられたはず。


作品に出てきた最後の投降場面。

これが実際の写真に残っていてネットでも見られます。


サイパンは大場隊がいたから日本に帰国できた人もいるでしょうが、

当時日本が統治していた小さな島々。

ここには小野田さんやグァムの横井さんのように、

戦後何十年も山や森に隠れて、上官からの投降命令を待っていた人もいました。


私の祖父はスマトラ島で戦死しました。

もちろん骨もありません。

祖国から遠く離れた小さな島で、幼い子供にも会えずに死んでいった人たち。

大場大尉はヒーローではありませんが、

こういう上司がいたら、助かる命もあったのでしょう。


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