昭和37年 大映
天正時代、織田信長が勢力を拡大する世の中、
伊賀では百地三太夫と藤林長門守がそれぞれ忍者の統括をしていました。
三太夫の下忍石川五右衛門は、三太夫の妻と密通しそれが知られてしまい、
盗賊として織田信長の暗殺を強要されます。
堺の女郎でマキという女にほれ込んだ五右衛門ですが、
長門守の下忍木猿も大阪に現れます。
村山知義の原作を映画化した作品です。
私は高校の頃原作を読みました。
探したら本棚に茶色くなった文庫本がまだありました。
(活字が超小さくて、近眼で老眼の私はメガネを外さなくては読めません)
原作は、小説というよりも、歴史書であり、忍術書であり、作者の随筆のようでもあり、
その中に百地三太夫の物語が埋め込まれている形です。
また、映画の主人公は雷蔵の五右衛門ですが、
原作は前半はカシイという下忍が主に動いていて、
五右衛門は後半部分にしばしば現れます
映画の方は、
五右衛門に市川雷蔵、
三太夫…伊藤雄之助
木猿…西村晃
葉蔵…加藤嘉
信長…若山富三郎
イノネ…岸田今日子
マキ…藤村志保
往年の日本映画のスターたちです。
現在お元気なのは藤村志保さんだけかしら~?
私が八代目雷蔵を知ったとき、彼はすでにこの世の人ではありませんでした。
去年で没後40年。
未だファンの多い大スターです。
昨年も忍者の世界を映した邦画が公開されましたが、
こちらの古いモノクロ作品は、
戦国時代に暗躍する忍者の姿を想像するのに充分です。
もちろんCGも無く、
三太夫の早足が早送りだな~と思うくらいのシンプルさ。
残虐な場面もモノクロだから観ることができたのかも知れません。
先日テレビ放送をしていたのを久しぶりに観て、
お目当ての雷蔵よりも、
伊藤雄之助の存在感に圧倒されました。すっごく怖いです。
この作品でブルーリボン助演男優賞を受賞しています。
この作品の一番大きなカラクリは、原作では最後に暴かれるのですが、
映画では中盤に早々と見せてくれます。
それが分かってしまっても、映画はおどろおどろしい雰囲気を保ち続けます。
砦の女岸田今日子の妖艶さとは裏腹に、
藤村志保の清純な姿(女郎役ですが)がこの作品のたった一つの安らぎかな。
原作はとても奥深いです。
でも難しくて、総て私の頭の中に入れることは出来ませんでした。
その点映画は大衆向きで、楽しめると思います。
忍者映画の原点ともいえるこの作品はオススメですよ~。