1974年 アメリカ
主演のアート・カーニーがこの年アカデミー賞主演男優賞獲得作品。
NYのアパートを区画整理のため立ち退いた72歳のハリーは、
相棒の猫トントと共に長男の家へ居候します。
そこの家族の確執に気を使った彼は、今度はシカゴの長女を訪ねて旅に出ます。
新しい旅の連れ合いとの出会い、別れ、
ハリーは今度は西海岸に住む次男を訪ねることにしました。
頑固で偏屈な老人が、友人の死で自分を見つめなおし、
また、心が離れ離れになっていた子供達を訪ねる旅。
旅の途中出会うのは、自分と同じ一人ぼっちの老人であったり、旅する若者であったり。
「死」がそれほど遠くないところまで生きてきた男のロードムービーです。
同じ、偏屈な老人が一人で旅をする作品で私は大好きな「ストレイト・ストーリー」があります。
そちらの老人は田舎の頑固者おじいさんで、やはり遠くに住む疎遠の兄弟を訪ねました。
一方、ハリーは元教師で都会人。
前者は、旅の途中出会った人たちとの触れ合いが大きかったと思いますが、
この作品は、あくまでも老いていく自分と家族を見つめ直す旅に見えました。
だてに長く生きていない人生の先輩達の会話は面白いですね。
「家を追い出されたら俺の家へ来いよ。」
「いや、一緒に住んだら、気難しい俺とはうまくいかないよ。」
「大丈夫、女房とは40年一緒に暮らせたから。」
こんな感じの会話でした…
私が心に残っているのは長女ジェシー(エレン・バースティン)のセリフ。
ハリーが自分の事を好きかと聞いた時、彼女が言った言葉、
「年中好きではないけど、愛している。」
親子ってそんなものかも。
だって言い争いもよくするけど、嫌いになるなんて有り得ないですよね。
トントのわがままのせいで、思わず風変わりな旅をすることになったハリー。
行き着いたのは、第二の人生を充分謳歌できる素敵な場所でした。