がんばれ、日本!いや・・・
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ワールドカップ、
日本初戦の夜22時頃は、会社にいた。
少し離れたデスクには、
4年目の女性社員、秋沢かなこが座っていた。
かなちゃんは、コツコツと仕事をこなすしっかり者。
口数は少ないが、
ときおり、ぽろりと発する冷静な分析に、
感心することもある・・・
そんな子だ。
「まだ、帰らないの?」
と、私は聞いた。
「え、ああ、リサさんこそ、遅いですね」
「私は、ただダラダラやってるから・・・」
そうなのだ。
このところ、どうも集中力がない。
試合開始までになんとか帰りたいのだが、
つい、ぼ~っとしてしまい、
どんどん、時間が過ぎてしまう。
「今日のワールドカップ、見なくていいの?」
「よく分からないんです」
「私も、あんまり分からないけど、
なんとなく見ようかなって感じだよ」
すると、かなちゃんは唐突に言った。
「リサさん、結婚生活って楽しいですか?」
え・・・・
「結婚したら、いつも家に誰か、いるんですよね。
いいですね、結婚って・・・」
「かなちゃんは、一人暮らしなんだっけ?」
「はい」
「彼は?」
「いません」
なるほど。
独りの家に帰りたくない今の気持ち・・・なんとなく分かる。
特に、世間が浮かれて騒いでいる夜。
クリスマスとか、大晦日とか、
今宵のような一夜は、そうだ。
独り暮らしも長くなると、むしろ、一人が快適・・・
なんて思うことも増えるけど、
26歳のかなちゃんには、まだまだ堪えるのだろう。
などと、考えていた矢先のことだった。
「はい!もしもし」
かなちゃんの携帯が鳴った。
「あ、終わりそう?
うん。いいよ。
なんにもないけど、うん。」
みるみる、かなちゃんの声が明るくなっていく。
「そんなこと言われても、
じゃあ、そっちがコンビニでなんか買ってきてよ!」
相手は、男子のようだ。
「普通に見るだけだからね。
分かった。じゃあ、あとでね。」
電話を切ったかなちゃんは、
いそいそと、荷物を片付けはじめた。
「お誘いあったの?」
「え、はい、友達3人とうちで、
ワールドカップみようってことになって・・・
ダッシュで、部屋片付けないと・・・」
「そっか、おつかれさま~」
「失礼しま~す」
紅潮した顔で、かなちゃんは小走りに出て行った。
それとなく聞いてしまった電話の様子で、思った。
ひょっとしたら、かなちゃんは、
電話の相手のことを、ちょっと好きなのかもしれない。
今夜、ビールを飲みながら・・・
大声を張り上げる彼の横顔を盗み見ながら・・・
「がんばれ~!」とか、「日本!」とか一緒に叫んだりしながら・・・
かなちゃんの恋も盛り上がるといいなあ。
コントロールは、正確に、
相手の胸にパスしてほしいな。うふふふ・・・・・
なんて妄想していると、電話が鳴った。
「まだ仕事?」
松山さんからだった。
気がつけば・・・・
・・・・
・・・・
23時20分・・・・
ぼ~っと病が、ますます進行中。
頑張れ ! 私・・・・
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