その手を退けろ 前編  | 恋愛前夜

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はじめまして。
ここは、私が大好きな漫画から想像した小説を中心に載せているブログです。
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好きが深まって、個人的に小説を書いています。
心の広い方、二次小説に理解のある方のみお読み下さい。

「蓮…俺がもうキョーコちゃんとのこと協力出来ないって言ったらどうする?」


楽屋で出番を待っている時、突然真剣な顔をして社さんが聞いてくるから、俺は面食らってまじまじと社さんを見た。

協力出来ないって言ったらどうする?

社さんの言葉を頭の中でゆっくりと反芻してみる。
社さんは、俺が最上さんのことを好きなのを知った上で、最上さんのスケジュールを把握して、ラブミー部に食事の依頼をしたり、2人きりになれるように時間を調整したりもしてくれている。

それが、出来なくなるってことか?

最上さんの仕事が忙しくて調整出来なくなった?
椹さんから、スケジュールを聞けなくなったとかか?

確かに最近の彼女の活躍は目覚ましい。
それは、芸能人として喜ばしいことだ。
会えないのは社さんのせいじゃない。
今は、最上さんと個人的に連絡をとることも出来るし。

でもどこか社さんの様子が変だ。



答えられなくて、困惑気味に社さんを見る。

暫く見詰め合ったまま、楽屋は静寂に包まれた。

「嘘だよ・・・」

先に言葉を発し沈黙を破ったのは社さんだった。
さっきの真剣な表情は何処へやら、クスリと笑って、真っ直ぐ俺を覗き込んでいた視線を逸らし、簡易椅子から立ち上がった。
スタジオの様子見てくるな。そう言って、部屋を出て行ってしまった。
いつもと違う社さんが心配になって、社さんが出て行ってから、俺も後を追うように部屋を出た。

携帯電話を耳にあてながら足早に歩く社さんに躊躇い、声をかけられないでいると社さんはスタジオを通り過ぎていく。

何処に行くんだ?

廊下の角を曲がると奥の部屋から人の声がした。

少し開いたドアから中を覗くと社さんの姿がある。
誰かと話してる?

「ねぇ…キョーコ。俺たちのこといつ蓮に言おうか?」
「でも……何て言ったらいいのか」
「いつまでも隠しておけないよ?」
「でも…社さん」
「社さんじゃないでしょ?」
「………倖 一 …さん」
「うん、まぁ良しとしようか」

聞こえてきたのは、信頼しているマネージャーと愛しい最上さんの声。
はにかんで顔を赤くし、可愛らしく笑う彼女の頭を社さんが悪戯っぽく笑いながら、撫でている。
最上さんは社さんが触れるのを素直に受け入れている。

なんだ?
この会話。
2人は付き合っているのか?

突然の状況に頭が全く働かない。

考えが纏まらない。

愕然として俺はその場に立ち尽くした。