授業の終了のチャイムと共にそれぞれ思い思いに交換している。
多く作った人は、別のクラスや好きな人に渡す準備をしていた。
ちょっと焦げてるし…美味しくなさそう。
こんなんじゃ誰にもあげられない。
皆見に・・・あげられない。
「春湖!」
あたしの名前を呼ぶ、皆見の澄んだ心地好い声に振り返る。
「春湖…交換しよ?」
「え!?」
何言ってるの?あれだけ騒いでたから、失敗してるの知ってるのに。
「だから、俺のとクッキー交換しよ?」
「だ…ダメ皆見!これ失敗してて絶対おいしくない」
首を左右に振って、あたしはラッピングしたクッキーの袋を後ろに隠そうとしたら、皆見にひょいっと取り上げられた。
「ダメ!!返して」
「いーの、俺はこれ食べたいの」
「あっ!」
止める間もなく皆見は、あたしのクッキーを口に放り込む。
「うん、おいしいね。春湖らしい味だ」
「あたし…らしい?」
「うん…元気で、優しくて、真っ直ぐで、一生懸命な味」
「ふふっ何…それ」
皆見の言葉に泣きそうになった。
「皆見ずるーい、んーどれどれ?………ん、春湖の味だね♪♪」
「悠~ずるい、私も私も」
「じゃあ、俺も」
「俺も」
「俺もちょーだぃv」
悠につづいて、百花や御堂君、手嶋野君や同じ班だった瀬々君までもが、皆見の手にあるあたしの美味しくないクッキーを食べていく。
そして、あっという間になくなってしまった。
「「「「「ごちそうさま」」」」」
「お前等…俺いいって一言も言ってないのに」
「なによ~!ケチケチしない!はい春湖」
「あ、広木」
皆見のクッキーを悠が取り上げ、渡してくれる。
「次の授業始まるよ~!行こ」
悠の声に皆が4組の教室へと歩き出した。
「皆見…」
皆見のセーターを引っ張る。
「春湖どうしたの?」
「ありがとう皆見」
「?????」
「えーとクッキー」
「ああ!手嶋野の教え方が良かったから、ごめんこんなのがホワイトデーの御返しで」
「ううん、嬉しい。ありがとう」
「あ、いや、うん・・・」
皆見の赤面にあたしもつられて顔が熱くなる。
「ハーイ。そこのバカップルいちゃつかな~い」
「広木そこは、スルーしてやれよ」
「わー、バカップルバカップル~」
「西園~!」
追い越し通り過ぎていく友達の言葉に、皆見と顔を見合わせ笑った。
「あっ、瀬々!」
最後に通り過ぎようとした瀬々君を呼び止め、皆見が何かを投げた。