クローバーに想いを隠して 中編  | 恋愛前夜

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はじめまして。
ここは、私が大好きな漫画から想像した小説を中心に載せているブログです。
作者さま、出版社さま、その他関係者さまとは一切関係ありません。
好きが深まって、個人的に小説を書いています。
心の広い方、二次小説に理解のある方のみお読み下さい。

授業の終了のチャイムと共にそれぞれ思い思いに交換している。
多く作った人は、別のクラスや好きな人に渡す準備をしていた。

ちょっと焦げてるし…美味しくなさそう。
こんなんじゃ誰にもあげられない。
皆見に・・・あげられない。

「春湖!」

あたしの名前を呼ぶ、皆見の澄んだ心地好い声に振り返る。

「春湖…交換しよ?」
「え!?」

何言ってるの?あれだけ騒いでたから、失敗してるの知ってるのに。

「だから、俺のとクッキー交換しよ?」

「だ…ダメ皆見!これ失敗してて絶対おいしくない」

首を左右に振って、あたしはラッピングしたクッキーの袋を後ろに隠そうとしたら、皆見にひょいっと取り上げられた。

「ダメ!!返して」
「いーの、俺はこれ食べたいの」
「あっ!」

止める間もなく皆見は、あたしのクッキーを口に放り込む。

「うん、おいしいね。春湖らしい味だ」
「あたし…らしい?」
「うん…元気で、優しくて、真っ直ぐで、一生懸命な味」
「ふふっ何…それ」

皆見の言葉に泣きそうになった。

「皆見ずるーい、んーどれどれ?………ん、春湖の味だね♪♪」
「悠~ずるい、私も私も」
「じゃあ、俺も」
「俺も」
「俺もちょーだぃv」

悠につづいて、百花や御堂君、手嶋野君や同じ班だった瀬々君までもが、皆見の手にあるあたしの美味しくないクッキーを食べていく。
そして、あっという間になくなってしまった。

「「「「「ごちそうさま」」」」」

「お前等…俺いいって一言も言ってないのに」
「なによ~!ケチケチしない!はい春湖」
「あ、広木」

皆見のクッキーを悠が取り上げ、渡してくれる。
「次の授業始まるよ~!行こ」

悠の声に皆が4組の教室へと歩き出した。

「皆見…」

皆見のセーターを引っ張る。

「春湖どうしたの?」
「ありがとう皆見」
「?????」
「えーとクッキー」
「ああ!手嶋野の教え方が良かったから、ごめんこんなのがホワイトデーの御返しで」
「ううん、嬉しい。ありがとう」
「あ、いや、うん・・・」

皆見の赤面にあたしもつられて顔が熱くなる。

「ハーイ。そこのバカップルいちゃつかな~い」
「広木そこは、スルーしてやれよ」
「わー、バカップルバカップル~」
「西園~!」

追い越し通り過ぎていく友達の言葉に、皆見と顔を見合わせ笑った。

「あっ、瀬々!」

最後に通り過ぎようとした瀬々君を呼び止め、皆見が何かを投げた。