ボクセキ
V・Dの朝のお話です。少~しだけ切なめBL?ご注意を。
--------------
バレンタインは、男子だってドキドキするんだ。
女子にアピールする者。
念入りに風呂に入る者。
寝付けない者。
貰う当てがある者。
どうせ今年もと諦めている者。
バレンタイン前日の男も色々と大変だ。
どんなに関心がない振りをしていても、バレンタインを迎えた朝は、心なしか落ち着かないものだ。
それは、男子高校生も一緒で・・・
「おーい皆見~!」
「上岡?おはよー」
「おはよ」
駆け寄ってきた中学からの友人を晴澄は笑顔で迎え、歩き出した。
「はい!ハッピーバレンタイン」
鞄をごそごそと漁り、上岡が小さな箱を差し出す。
「くれんの?ありがと」
「いいえ~どういたしまして」
「今日初めてチョコ貰った」
「やだ、ほんと?春湖ちゃんより先にあげちゃった?」
ごめんごめんと大して悪びれた風もなく手を合わせる上岡に晴澄は貰ったチョコを軽く振った。
「一目で義理とわかるようなチョコに春湖が何か思うわけないだろ」
「あはは、それもそっかぁ」
「いって」
上岡に思い切り叩かれた肩を押さえ、顔をしかめる晴澄を気にする様子もなく上岡が走り出そうとする。
「ごめん、今日うちの組1時間目家庭科なの!」
「家庭科?」
「4組は?」
「ああ、ホワイトデーだよ」
「あ~やっぱ2つの日に分かれるんだね。うちは、今日だから皆、張り切っちゃって朝から準備あるの!だから先に行くね」
「転ぶなよ!これありがと」
「うん!じゃーね」
上岡は、1度振り返って晴澄に手を振り、今度こそ走り出した。
「んだよ晴澄。朝からモテてるな?」
「うわっ何だよ七浦!部活は?」
「朝練は休み」
上岡を見送った晴澄の背に七浦がのし掛かる。
「重っ!!」
「七浦やめろよ~おはよ晴澄」
「いいぞもっとやれ七浦」
止める御堂とけしかける元井。
晴澄の周りは、一気に賑やかになった。
「ちょ何?友達から貰っただけだろっ」
「「それでも許せ(ね~)ん」」
「あ~槙くれねぇかなー」
「ひ、広木くれるかな?」
「どうだろ貰えるといいな」
七浦・元井が意中の人の名前を呟き、御堂が慰めるという構図が出来上がり、晴澄は思わず笑みを溢した。
「何だよ!貰う予定のある奴の余裕か晴澄」
「ギブ~ギブ~」
今度は七浦と元井が2人係で晴澄にのし掛かり首に腕を回す。