4.ドラッカーと私③
ドラッカーの本の翻訳者の上田惇生さんはドラッカーの本の「プロフェッショナルの条件」のあとがきに、次のように書いております。
「ドラッカーには、根底に人間の喜び、苦しみ、悲しみという血がかよったものがある。社会的存在としての人間への愛がある。マネジメントの「師の師」の域などははるかに超えている。ドラッカーの世界では、すべての鍵は、一人ひとりの人間にある。関心の中心は、常に自由で責任ある社会における人間の位置づけ、役割、尊厳にある。組織の機能というものを、社会の機関としてだけでなく、一人ひとりの人間の成果と貢献と自己実現の手段と位置付けている。」
ドラッカーはその「プロフェッショナルの条件」の、「自らの成長に責任を持つ」の項の中で次のように語っています。
「成長するということは、能力を修得するだけでなく、人間として大きくなることである。責任に重点を置くことによって、より大きな自分を見られるようになる。うぬぼれやプライドではない。誇りと自信である。一度身についてしまえば失うことのない何かである。目指すべきは外なる成長であり、内なる成長である。」
ドラッカーが説くのはHOW・TOWではありません。学者学者的な理論でもありません。現実の経営を通じた深い洞察に基づいたマネジメントの考え方の基本と原則です。
日本の経営学の第一人者、一橋大学の野中郁次郎名誉教授は、
「ドラッカーの経営論の根底には人間に対する深い洞察がある。その実践知が、多くの経営者を魅了して止まない」と語っています。
私は、もしドラッカーがいなかったら、企業人は今より暗い世界に住んでいることになっていたのではないかと思うのです。
今回はここまでです。