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一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。恋にからめとられる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への―。醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書き下し長編。
タイトルそのまんま。
盲目的な「恋」の章と「友情」の章、2つの章で描かれます。
「恋」は蘭花の盲目的な恋を蘭花の視点で、
「友情」は前の章の話をなぞるように、留利絵の盲目的な友情を留利絵の視点で。
第一章「恋」
元タカラジェンヌの娘で美しい蘭花と大学のアマチュアオーケストラの指揮者としてやってきた茂実星近との恋。
幸せを絵に描いたような二人にやってきた綻び。
そして茂実の堕落。
プロの指揮者としてやってきた茂実が魅力的に見えるのも、茂実の彼女でいられることが誇らしいこともわかる。
成功していた時の、とても魅力的だった彼を見ているからこそ、彼が堕落していっても、どうしようもない男になっていっても、彼を切り捨てられない、その気持ちもわからなくはない。
何せ恋は”盲目”だから。
自分を一歩外から冷静に見ればわかるのに、わからなくなってしまうのが"恋"。
周りのみんなからもう別れた方がいいと言われても、別れたくないと思ってしまうのが”恋”。
蘭花の恋みたいなのを、恋に溺れるっていうんだろなぁ。
それにしても茂実の駄目男っぷりはひどい。
正直、大学生から見た年上の社会人は大人だし格好よく見えちゃうんだよね。
だけど二十歳そこそこでそんなデキた男ってそうそういない。
すごく大人に見えるだけで、実際そんなに大人じゃないのが現実。
茂実だって操り人形だったわけだしね。
第二章「友情」
子供の頃から容姿にコンプレックスを持っていた留利絵。
容姿を故にバカにされ、見下され、屈辱感を味わってきた彼女にとって、男子は怖い存在で、後ろでくすくす笑う女子は敵だった。
そんな留利絵が美しい蘭花と仲良くなった。
正直、第一章を読んでいるときは、留利絵がこんなかまってちゃんだったことに気付きませんでした。
留利絵の友情は”盲目”と言うより”執着”に近いかもしれない。
最初の蘭花の視点で読んでいたシーンを、留利絵の視点で読んだ時、ぞっとしました。
女子特有の嫉妬、独占欲。コンプレックスがありすぎて、それらが強すぎた留利絵。
相手に「選ばれた」存在、誰よりも「特別な」存在でありたいと願う気持ちはわからなくもないんですけどね。
ある意味、留利絵の執着心に蘭花が気付かなくて良かったのかもしれません。
辻村さん得意のミスリードがあったので、そのままミスリードされてしまった人もいっぱいいるのではないかと思います。私も一瞬騙されそうになりましたから。
でも最後まで読んで確信したのは彼女の友情は間違いなく”友情”ではなくただの”欲”だったということ。
蘭花は茂実との恋がもしなかったとしても、留利絵と友達になってしまったことでいつかは破滅していまう日が訪れていたように思う。そう考えると盲目的な友情は恋以上に怖いのかもしれない。
★★★