池井戸潤 『ロスジェネの逆襲』 | 映画な日々。読書な日々。

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ロスジェネの逆襲のあらすじを知る=ドラマ「半沢直樹」のネタバレになりかねないので、半沢を楽しみにしている方は最終回見るまで読まないようにご注意ください。


ときは2004年。銀行の系列子会社東京セントラル証券の業績は鳴かず飛ばず。そこにIT企業の雄、電脳雑伎集団社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだ。ところが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った主人公の半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、周囲をアッといわせる秘策に出た―。直木賞作家による、企業を舞台にしたエンタテインメント小説の傑作!


ドラマ・半沢直樹大ブーム中ですが、続編です。

ドラマの原作、「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」は2年ぐらい前に図書館で何読もうかなーと思いながら、このタイトルはイケてないなぁと思いながら手にしたんですよね。


それが今や押しも押されもせぬ大ヒットドラマの原作。

タイトルを「半沢直樹」としたことから上手いなーと思ってましたが、配役もキャストの演技も脚本もいいんでしょうね、原作も面白かったけど、ドラマはそれ以上です。


そしてシリーズ3作目となる「ロスジェネの逆襲」。

ドラマの俳優さんたちをイメージしながら読めたのと、ドラマの面白さもあって、前2作より面白く感じました。

が、ロスジェネの逆襲の序章であって、ロスジェネの逆襲ではないです。

バブル入社の半沢が、ロスジェネ世代に告ぐ、みたいな感じかな。


半沢直樹の出向先、東京中央銀行の証券子会社の東京セントラル証券は、業歴は浅く企業買収の実績もほとんどない。


その東京セントラル証券に持ち込まれた新興IT企業・電脳雑技集団からの買収案件。

巨額のアドバイザー手数料が見込める案件だったが、スキームの提案をする前にアドバイザーの座を親会社である東京中央銀行に奪われてしまい、大型案件を逃した責任を問われる半沢。


一方電脳雑技集団から買収を仕掛けられた東京スパイラルの瀬名は、アドバイザーである太洋証券から防衛策としてホワイトナイトを用意する提案を受ける。


タイトルにある「ロスジェネ」=ロストジェネレーション世代の人物は、半沢の部下の森山と、買収を仕掛けられた東京スパイラルの瀬名社長の2人。


森山は能力もないのに上司として存在するバブル世代の入社組に不満を抱き、会社には期待しない、どこか冷めた態度で会社にいる若者。


瀬名は、父親の株の信用取引失敗により巨額の借金を抱え自殺、大学に進学できず高校卒業と共に入社した会社は倒産し、25歳で友人と立ち上げ、右肩上がりの成長を遂げIT企業家として成功した一人。


彼ら2人が逆襲するワケではなく、半沢はロスジェネ世代である彼らを、全力の仕事、そして信念でもって救う。

ロスジェネの逆襲が始まるのは、この話が終わった後からなのかもしれません。


今回も前作同様、騙し、裏切りあり、粉飾あり、責任のなすりつけ合いあり、器の小さい経営者あり。

そして何より銀行の人間の汚いこと、汚いこと。


銀行が証券の案件を横取りした経緯。

銀行が持ちかけたスキーム。

買収ゲームの行方。

電脳が東京セントラル証券に買収話を持ち込んできた理由。


怪しい動きの裏には常に何かがある。

隠されていた事実が明らかになっていく過程は相変わらず面白い。


でもやっぱり半沢今度こそ万事休すか?状態になってしまうのがこのシリーズなんですよね。


だけどデキル男、ブレない男、半沢直樹はカッコイイ。


「組織に屈した人間に、決して組織は変えられない。」

「嵐もあれば日照りもある。それを乗り越える力があってこそ、仕事は成立する。世の中の矛盾や理不尽と戦え。」

「戻るとか、戻らないとか、そんなつまらんことは人事部が判断すればいい。与えられた仕事に全力を尽くす。それがサラリーマンだろ。」

「銀行に戻った方がいいなんてのは、錯覚なんだよ」

「自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。」

「人事が怖くてサラリーマンが務まるか」

「どこに行かされるかは知らないが、行ったところでベストを尽くす。」


こんな上司いたらついていきたくなりますよねー。

最後に森山に伝えた半沢の信念は長いので書きませんがこれがかなり刺さります。

森山ももっと早く半沢のような上司に出会っていたら、今までの8年間の会社生活がもっと充実していたんだと思います。でも彼は最高の上司に出会えたことで、きっとこれから活躍するはず。その時こそロスジェネの逆襲。


そして実は瀬名がまたカッコイイ。

「どんな時代にも勝ち組はいるし、いまの自分の境遇を世の中のせいにしたところで、結局虚しいだけなんだよ。ただし、オレがいう勝ち組は、大企業のサラリーマンのことじゃない。自分の仕事にプライドを持っている奴のことだけどさ」


中野渡頭取の台詞も良かったなー。

ぜひこのあたり、ドラマで見たいです。

ちなみにオレたち~でもそうですが、やられたら倍返しだ!は、ドラマでかなり誇張されてます。

原作ではそんなに何度も倍返しでてきません。

だからドラマをイメージしてたらちょっとスカっと感が足りないかも。


週間ダイヤモンド連載中の次作「銀翼のイカロス」も早く読みたい!けど連載終了予定が来年4月だから単行本になるのはまだまだ先だー。


★★★★☆