重松清 『とんび』 | 映画な日々。読書な日々。

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とんび (角川文庫)/重松 清
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昭和三十七年。瀬戸内海に面した街、備後市。二十八歳のヤスは、待望の長男アキラが誕生し、生涯最高の喜びに浸っていた。愛妻、美佐子と、我が子の成長を見守り、幸せを噛みしめる日々。それは、幼い頃に親と離別したヤスにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう――。困難に直面するたび、不器用に戸惑い、悩みながら、それでも我が子の幸せ第一に考え、息子を育てる父親の、喜びと哀しみ。魂が涙する、父親物語の最高傑作!


久しぶりに重松さんの本を読みました。

タイトルの「とんび」は、「鳶が鷹を生む」の「とんび」です。

でも、ヤスさんは決してとんびなんかじゃない!

すごく照れ屋で不器用だけど優しい愛すべき父親でした。


時代は昭和30年代後半。

昭和の古き良き時代を背景に描かれる父と息子の物語。


運送会社に勤務するヤスさんは、プラットフォームで荷分けの仕事をしている。

乱暴だけど愛すべき存在のヤスさん。

そんなヤスさんが28歳の時、長男アキラが誕生する。

幼い頃に父に捨てられたヤスさんは、愛する妻・美佐子さんと、かわいい息子アキラに囲まれ、自分は世界一の幸せ者だと「家族」の幸せをかみしめる毎日。


しかしその幸せは長くは続かなかった。

突如降りかかった不幸。

それからヤスさんは男手一つで不器用に、だけど愛情たっぷりにアキラを育てていく。


ともかくヤスさんのアキラへの愛情がすごいです。

例え母親がいなかったとしても、こんなに愛されて育ったアキラは本当に幸せだと思う。


子育ては一筋縄ではいかない。

男手一つが故の苦労、アキラの反抗期、気持ちのすれ違い、親離れ・・・。

アキラが成長するにつれ、アキラとの接し方に悩むヤスさん。


だけどヤスさんには助けてくれる人たちが沢山いた。

アキラを息子のように可愛がってくれる人が沢山いた。


ヤスさんの幼馴染の照雲やその妻・幸恵、照雲の父の海雲和尚、夕なぎのおかみ・たえ子さん。

町のみんなが一緒になってアキラを育ててくれた。


登場人物皆がおせっかいなんだけど、とても温かいんです。

泥臭すぎるヤスさんの不器用さがなんとも歯がゆいんです。

ヤスさんが不器用なせいでうまくいかない様子の描き方なんて本当リアルで巧い。


そしてヤスさんがついた優しい嘘。


正直、「とんび」というタイトルを見て、最初の方を読んだ段階で、話の展開は読めてしまうんです。

それでも優しさがたっぷり詰まった物語はさすが重松さん。


アキラの作文には思わず目頭が熱くなってしまいました。

ヤスさんとアキラの父と子の絆。

重松さんは本当に家族の愛を描くのが巧い。


これ、ちょうど先週からNHKでドラマやってたんですね。

全然知りませんでしたっ。前半見逃しちゃった。今週末の後半は見ようと思います。


★★★★