清宮礼子『大切なひとのためにできること -がんと闘った家族の物語-』 | 映画な日々。読書な日々。

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大切なひとのためにできること がんと闘った家族の物語/清宮 礼子
¥1,260
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お父さん、ありがとう――。映画「おくりびと」の宣伝担当者が経験した、最愛の父との別れ。がんにより設けられてしまった命の期限に向かって歩んだ家族の21ヶ月は、かけがえのない時間だった。家族を守り、深い愛情をもって育ててくれた父。これからも一緒にいられると思っていた。がんと向き合い、家族が力を合わせて闘った姿を真摯な姿勢で綴った、がん闘病記。


レビュープラス さんより献本していただきました。


松竹の映画宣伝部に所属し、映画『おくりびと』の宣伝担当でもあった著者が綴る、最愛の父の癌闘病記。

作家でもなければ癌の専門家でもない。

ごくごく普通の一般女性の視線で、1年9ヶ月の癌との闘いの様子や家族の絆が描かれた一冊。


決して上手い文章ではありませんが、とても読みやすく、癌を患った父、そしてその父を支えるながら癌と向き合った家族の姿がそれぞれの想いと共に綴られています。


突然受けた癌の告知。

自分の家族が、自分の最愛の人がもし癌になったら。


癌をテーマにした映画やドラマは私も含め、みなさん結構ご覧になったことはあるかと思います。

だから癌に対する知識が全く無いわけではない。

けれども自分の周りに癌患者がいなければ、正直「なんとなく知ってる」程度のもので、実際に癌を患った時、自分はどうしたら良いのか、何を選択すればいいのか、多分わからないという人がほとんどなのではないでしょうか。


著者もお父様が癌の告知を受けられてから、なんとか助けてあげたい、最善の治療を施してあげあいという気持ちから、沢山の情報を収集し、最善と思われる方法を選んでいきます。


ただ、癌とういう病気は決して甘くはないし、人それぞれ合う治療、合わない治療がある。

そして癌の進行度によっても選べる治療法の選択肢が変わってくる。

何が最善の治療なのかは試してみないことにはわからず、「最初からこれをしておけばよかった」や「この治療はしなければよかった」ということもあり得るのが難しいところでもあり、決断力も必要。


著者の父の場合は既に告知を受けた時点で末期の癌だった為に、施せる治療はわずか。

そんな中でも、父の為に何がいいのかを徹底的に調べ、父は父で癌と果敢に闘い、そして家族皆で癌に懸命に立ち向かっていきます。


文章の中に「!!」がの表記がかなり多いことからも、著者自身が特別強い女性なわけではなくて、ごく普通の20代後半~30代の女性なんだということが伝わってきましたが、お父様の強さは本当に立派です。実際闘病期間中は本に描かれていないことも沢山あったかもしれませんが、生き続けようと必死に癌と闘っている姿、そして自分が一番辛いのに家族を思いやる優しさのある方なんだな、と思いながら読み進めました。


また癌と闘う中で、著者が入手した情報や知識、実際どういう治療法を検討したか、何をすべきだったと後悔したかなどがとてもわかりやすく記述されているので、癌と闘う方にとっては参考になる情報も沢山あるように思います。


お父様がついに力尽きようとする日の家族のやり取りは正直読んでいて辛い部分もあります。

けれども、家族の温かさやお互いを思う心、家族の絆が感じられ、とても素敵な家族だなと思いました。そして癌との闘いは辛かっただろうけれども、そんな素敵な家族と共に闘い、そして最期を見守られて、お父様はきっと幸せな気持ちで旅立つことができたのではないのかな、と。


この本は今まさに癌と闘う人々へだけでなく、お父様への贈り物でもあるようにも思いました。