有川浩 『県庁おもてなし課』 | 映画な日々。読書な日々。

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県庁おもてなし課/有川 浩
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とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員・掛水は、地方振興企画の手始めに、人気作家に観光特使を依頼するが、しかし……!? お役所仕事と民間感覚の狭間で揺れる掛水の奮闘が始まった!?


全額印税寄付をされることになった有川さんの最新作『県庁おもてなし課』。


舞台は高知県の県庁。

でも高知県に限らず、どこの県庁にも当てはまりそうな、フィクションだけどノンフィクションっぽいお話。

というのももともと有川さんが高知県の観光大使に任命されたことがきっかけとなって作られたお話なので、わりとリアルなことも含まれてるようです。


高知県の県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。

観光立県を目指すべく、県出身の有名人に観光大使になってもらい、特使名刺を配ってもらおう!という企画をしたまではよかったが、彼らの仕事はあまりにも”お役所的”。


そして打診した地元出身の人気作家・吉門喬介にさまざまなダメ出しをくらいながら、過去にパンダ誘致論を唱えた元職員にアイデアをもらいながら、県庁おもてなし課若手職員・掛水が奮闘する。


なかなか面白かったです。

ちなみに高知県におもなし課は実際に存在します。

多分この本の発売と同時に、高知県庁のホームページのアクセスも急激に増えたのでは?と思いますが。


お役所と民間の感覚の差。

私はお役所勤めをしたことはありませんが、これはどこにでもあるのは否めないことなのかもしれません。

そして民間の企業に勤めていても「壁」があるけれども、行政機関はそれとは比べ物にならないぐらいの大きな「壁」があるのだろうこともなんとなくわかります。


もっとこうしたら効率よくなるのに。

もっとこうしたらやりやすくなるのに。

もっとこうしたら喜ばれるのに。


それができない、通らないもどかしさ。


ただ最初のおもてなし課はまだそのレベルにまで達していません。

吉門からいろいろ指摘をされても、何がいけないのかすらわからない。生ぬるーい組織。

おもてなし課からしたら吉門は最初クレーマー的存在のように思えたかもしれません。

だけど本当に県のことを思っているからこその忠告であり、クレーム。


掛水がきちんとその吉門からの忠告に耳を傾けたからこそ、変わっていったおもてなし課。


自分たちの県を、県外の人たちにどう売り込むか。

東京のように便利なわけでも、何でもあるわけでもない。

むしろ何もない。

けれどもその”何もない”ことを売りにする。

これはなかなか目が鱗だったのではないでしょうか。


東京からの旅行客は、東京と同じ便利さを地方には求めているわけではない。

不便さもひっくるめて、地方でしか味わえないことが旅の楽しみだったりもするんですよね。

地方でしか味わえない大自然。

地方でしか味わえない味覚。

地方でしか味わえない不便さ。


変わっていったと言っても、おもてなし課ははっきり言ってまだ最初の一歩の段階。

民間にとっては当たり前のことがやっとできるようになった程度かもしれない。

だけどその一歩はきっととても大きなもので、こうやっていろんな都道府県の行政が変わっていってくれるといいな、と思いながら読んでました。


そして有川さんが描くお話ですから、もちろん恋愛話も盛り込まれています。

掛水の恋、吉門の恋。

掛水の恋は正直それ社会人の恋愛か!というぐらいウブすぎる感は否めなかったですが、逆に吉門の恋愛はなかなかよかったですね~。


ストーリーは前半の勢いに比べて後半若干だれてしまった感じがちょっと残念ではありましたが、それでも有川さんの地元に対する愛を感じられる作品でした。


ただ、この本を読み終わってから私も実際おもてなし課のホームページ を見させていただきましたが・・・。

正直まだお役所ページですね。

県外の人向けのPRが足りないなーと。

正直見ても全然面白くないし、情報が少ない。


せっかくこの本で高知県のおもてなし課の知名度があがったんだから、もっと県外の人が高知に行きたい!と思うようなホームページにしたらいいのに、と思ってしまいました。


★★★☆