会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目の直之。江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、加えて武家社会には身分が高くなるにつれ出費も増えるという構造的な問題があった。直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断し、猪山家の人々は一丸となって倹約生活を実行していく。[上映時間:129分]
思っていたほど楽しめなかった作品でした。
淡々と進む物語は予想していたし、それはそれでよかったんですが、心に響いてくるものがあまりなかったんですよね。
江戸時代後期。
御算用者(会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に関わってきた猪山家。
8代目の直之はそろばん馬鹿と言われるほど天性の数学的感覚を持っていた。
真面目で野心は一切ない。不器用ながらも自分の仕事に誇りを持ち、不正を見逃すことができない直之は、独自の調査でお救い米の横流しの事実を突き止めてしまい、左遷されそうになる。
しかし一派の悪事が白日の下にさらされ、人事が一新。
直之の左遷の取り止めなり、逆に異例の昇進を果たす。
けれども身分が高くなるにつれ出費が増えるという武家社会特有の構造から、猪山家は出費がかさんでいき、いつしか年収の倍の借金を抱えることに。
そこで直之は家財道具をすべて売り、借金返済にあて、さらに残りの借金返済の為に倹約生活を始めることになる。
直之は本当にまっすぐな男。
正直、私は男の人がここまで細かいのは嫌ですけど(笑)。
でも直之の考え方、私は共感できる部分が沢山あるんですよね。
帳尻さえ合っていればいい。
お金が足りなければ借りればいい。
という考え方が許せない気持ちがね。
足りなければ借りればいい、その考え方当り前だった武士社会。
実際多くの下級武士たちがそうやって生活していたんだと思います。
お金を借りることよりも、体裁を保てないことの方が恥。
そんな考えだから借金はかさむ一方。
はっきり言って2人の年収の倍以上の借金があるのに、そのことに気づかずに過ごせていたことの方が不思議なぐらいですが、当時の下級武士達にとってはそれが普通のことだったのかなぁ。
直之が宣言した家計立て直し計画。
かなり強引です。でもここまでしないと借金は返せない。
むしろここまでしたからこそ、借金返済の目処が立ってきた猪山家。
だけど実際こうやって返せる家の方が少なかったのではないでしょうか。
嫡男直吉を武士として内外に示す盛大なお披露目の仕度費用が足りないと、絵鯛を出す。
家財を売り払うなんてご近所の知れて恥だという両親に、家を潰す方が恥だと説得し、母が大切にしていた着物も、嫁・お駒の嫁入り道具も容赦なく売り払う。
見栄や世間体を捨てても、同僚に冷たい目で見られようとも守らなくてはいけないものがある。
そして息子に伝えたい想いがある。
息子・直吉には4歳で家計簿をつけるように命じ、徹底的にそろばんを叩き込む。
たとえ4歳の息子であろうと、落としたお金を探しに行かせる。
父の葬儀の直後でさえ、葬儀費用を算盤で叩く。
直吉からしたらそんな父が理解できないと思ったことの方が多かったはず。
それでも直之から厳しく叩き込まれた算盤の腕が直吉のその後の人生を切り開くのだから、直之のまっすぐすぎる考え方は間違っていたわけではないんですよね。
直之は自分の力で生きていける力を息子にきちんと教え込みたかったのでしょう。
まぁ私が直吉の立場だったとして、この父に反発しないでいられたか、というとNOな感じがしますが。
まだ小さい子供なのに、お遣いに行くだけでなくて、買ったものと値段をきちんとメモしている直吉の姿がなんとも可愛らしかったのと、お駒がどんな状況になっても前向きな姿がいいな、と思って観ていました。
お駒の「貧乏も工夫だと思えば楽しい」というのは明言。
今までの生活から一変、
一切贅沢をせず倹約に励み、知恵と工夫で借金を返済していく猪山家の姿には、見習うべきものがあるように思いました。
が、正直さほど面白いと言える映画ではないと思います。
隣で旦那さん、何度もウトウトしてたし。
そもそもそんな贅沢をしていたようには見えない猪山家の借金が膨らんでしまった理由もわからなければ、倹約してる経過は描かれていても、その結果もほとんど描かれていなかったのは残念。
”武士の家計簿”と言うぐらいなんだから、借金返済中の家計簿(収支)なども描かれていた方が面白かったんじゃないかな、と思ったりもして。
さらに言うなら、猪山家以外の下級武士の状況も描かれていた方がわかりやすかったんじゃないかと思います。身分が上がると家計が苦しくなると言うのであれば、こういう状況だったのって猪山家だけじゃなかったはずだし。
武士の家計簿というよりは、猪山家の物語という感じの映画だったように思いました。
シネリーブル池袋にて鑑賞
★★☆
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