天野節子 『目線』 | 映画な日々。読書な日々。

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目線 (幻冬舎文庫 あ 31-2)/天野 節子
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閑静な高級住宅街に佇む堂島邸には、主人である新之助の誕生祝いのため、家族や友人ら11人が集っていた。だが、「めでたい発表がある」と言っていた新之助は、自室のベランダから飛び降り、亡くなってしまう。その死は、自殺として処理されたが、飛び降りる直前に掛かってきた電話の内容は誰にも分からなかった。そして、初七日。哀しみに沈む堂島邸で、新たな犠牲者が出る。謎に包まれた事件の真相を究明するべく、3人の刑事が独自の捜査を開始した。


田園調布の閑静な高級住宅街にある堂島家では、家族や友人達が集まり建設会社の社長である新之助の誕生祝いが行われる予定だった。


しかし開始時間になっても新之助が現れない。

そして発見されたのは新之助の死体。

不審点はあったものの、新之助の死は自殺として処理された。


初七日。再び堂島家に集まった家族、友人の間で殺人事件が起きる。

遺書により犯人は特定されたものの、果たしてすべての犯行はその犯人が行ったものだったのだろうか?

自殺として処理された新之助もまた殺されたのではないだろうか?


田園調布東署の刑事達は独自に捜査を進め、ある真実にたどり着く。



正直、素人っぽい小説だな、と思ってしまいました。

そもそも一人称だったり三人称だったり、書き方がはっきりしていない。

多分三人称で書いてるつもりなんだろうけど、読んでるうちに三人称ではなくて誰かの視点で描かれてたりする箇所がある。そうかと思えばいったい誰の視点で描いているのかわかりにくい箇所があってかなり読みにくかったです。


事件の真相が知りたくて頑張って先へ進もうと読むものの、無駄な描写がかなり多いのも気になりました。


例えば警察が一人一人事情聴取していくシーンが無駄に長い。読んでて飽きます・・・。

事情聴取で新たな事実が発見されるならまだしも、ほとんどみんな同じことを話してるんだから、もうちょっとここは端折ってもいいのではないか?と思ってしまいました。


また話の流れから感じる人物の印象と、作者自身が他の人の言葉で語るその人物像が一致してなかったりもして、この人は人物を描くのがあまり得意ではないのかもしれないな、と思ってしまいました。


長女の苑子なんて、最初にどうしても私立小学校に入れたい教育ママっぽい描写がかなりあって、そのせいで息子に笑顔がなかったりしてる。新之助が行方不明になったことがわかった時のヒステリックな叫び声。


だけど中盤ぐらいで「美人でおしゃべりで闊達、そして誰にでも親切で世話好きだった母に、苑子がそっくり」という表現がされていて、私が抱いていた苑子のイメージとは全く違う人物像でかなり驚いてしまいました。全く闊達ではなくむしろ闊達とは程遠くて彼女の言動から闊達と思わせる描写は一切なかったんですけどね。


このミステリー、最初の小さな事件がきっかけでもあります。

そしてタイトルの『目線』というタイトルの付け方はうまい。

だけどこの『目線』の重要なキーは本当に最後の最後まで明かされません。

あえて伏せて話が進められていきます。


ラストの謎解きはわりと面白く読めたけど、それだけ。

3人の刑事もなんだかパッとしないし、そもそも犯人があの状態で本当に殺せたのか?という疑問も残る。


色々伏線も張って頑張ってる感じはあったけど、トリックもなんだかたいしたことないし、何より無駄な描写の多さや、素人くささが気になってしまう作品でした。


★★☆