『クヒオ大佐』@シネクイント | 映画な日々。読書な日々。

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映画な日々。読書な日々。-クヒオ
1990年代初頭、クヒオは、自分はアメリカ軍特殊部隊のパイロットで、エリザベス女王とも血縁関係にあたるなどと吹聴し、次々と女性たちをだましていた。だが、実際彼は純粋な日本人で、華麗な経歴もすべて自ら作り出したものだった。弁当店を営むしのぶも彼の立派な軍服姿にころりとだまされ、懸命にクヒオに尽くすが……。[上映時間:112分]


ウソみたいな本当にあった詐欺師のお話。


奪ったのは女性たちの心と1億円!?

世界一愚かだけど憎めない

実在の結婚詐欺師の物語。


というキャッチコピーだったのですが、なんで騙されちゃうわけ?というぐらい、クヒオが笑っちゃうぐらい怪しいんですよ。本当にあんなんで騙された人が沢山いたというから驚きです。


名前はジョナササン・エリザベス・クヒオ。彼は米軍パイロット。

父はカメハメ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ。結婚すれば米軍から結婚支援金5千万円がもらえる、英国のダイアナ妃のドレスを手がけたデアイナーにウエディングドレスを作ってもらう・・・。


堺雅人が思いっきり間抜けで怪しいクヒオを面白可笑しく演じています。カタコトの日本語で女性達に近づき、あの手この手で騙そうとする。


第三者的な目で見ればクヒオが明らかにおかしいことには気づくはずなんですが、クヒオに「うっとり」しちゃった時点で盲目になっちゃっているんでしょうね。そしてきっと騙された彼女達は、クヒオの肩書きに惹かれたわけではない。彼が必死で騙そうとするが故にかける彼女達への愛の言葉や優しさにうっとりきてしまっていたり、逆に彼を守ってあげたいという母性本能が働いていたのかもしれません。つまらない現実から抜け出させてくれる、夢のような、自分が知らない世界を語る彼と一緒にいられることが嬉しかったのかもしれません。


ただ実際のクヒオは1億も騙しとったというのだから、もっと巧みに騙していたのかもしれませんが、映画のクヒオはかなりショボイです。ちゃんと騙しきれていなくてボロが出てばっかりだし。だけどそのショボかったり、怪しすぎたり、馬鹿馬鹿しすぎるところが逆に笑えました。


それにしても彼の騙す為の努力はある意味すごい。徹底的に彼女達の前で演技しつづける彼の努力は傍から見たらかなり間抜けなんですが、その間抜けな頑張りの結果、表向きはアメリカ空軍のパイロットであることや、彼がお金持ちであるとうまくみせることができているんだから笑っちゃいます。私からしたら、そんな努力できるなら女を騙してお金を取ろうとするんじゃなくて、もっとまともな道を探しなよ、と言いたくなりましたけどね。


しのぶの弟とクヒオのやり取りはかなり笑えました。多分これが映画の中で一番面白かったと思います。

「Not kill me」を「Not kill you」と言い間違えちゃうなんて。英語できないのにアメリカ人のフリしちゃう時点で間違ってますよ。この二人の電話の会話は本当最高でした。そして思いっきりばれてて逆に脅されてるのに、お金はあえてドルに両替したりして、アメリカ人だという演技し続けようとする変に律儀なところなんか、「お前は本当に馬鹿か!」と思ってしまいました。観てる私達の気持ち的は、しのぶの弟と同じでしたね。


それでもなんだか愛嬌があって憎みきれないクヒオ大佐。実際の彼もこんな感じだったのだろうか?あのほんわかした魅力に女性達は騙されてしまったのだろうか?


実在のクヒオがどうだったのかはわかりませんが、最後の方で明らかになる彼の過去はちょっぴり切なかったで。最後まで嘘を突き通そうとする彼の心の中には、嘘を本当にしたいという気持ちが強かったのかもしれません。こんな子供時代を過ごしたかった、こんな大人になりたかった、嘘を本当にしたかった、そういう彼の気持ちが「クヒオ大佐」を生んだのかもしれません。


ただ、この題材だったらもっと面白くできたんじゃないかな、というのも事実。それなりに面白くはあったんだけど、それなりに笑えたんだけど、なんかどれも小粒な感じだったんですよね。博物館学芸員の春とか、銀座ホステスの未知子の頑張りも足りなかったかな。春なんて、チラシにはエリート学芸員って書いてあったけど全然エリートっぽく見えないし、そもそも彼女が自分で「どうして私だったの?」と聞いちゃうのと同じように、私もなんでこの子なの?と思ってしまいましたから。


あとはキャッチコピーとの差かな。チラシや予告などで、クヒオはもっとうまく騙している感じを受けていて、それが見れると期待していたのに、映画の中のクヒオはたいして騙せてなくて拍子抜けな感じがあったんですよね。だからちょっと期待していた展開とずれていた分もあって、消化不良だったのかもしれません。


個人的にはこの映画のヒットはしのぶの弟の新井浩文でした。彼がぶっきらぼうに話すその一言一言がかなり面白くてツボでした。


シネクイントにて鑑賞


★★★