遺伝子を研究する大学院生・泉水と芸術的な才能を持つ2つ年下の弟・春は、仲の良い普通の兄弟だ。優しい父と三人で、平穏に、そして陽気に暮らしている。だが、この家族には春の出生に関わる哀しい“過去”があった。その原因をもたらした“ある男”が街に戻ってきた。そして、時を同じくして不審な連続放火事件が発生する。その現場には謎めいたグラフィックアートが残されていた…。[上映時間:119分]
原作『重力ピエロ 』は、大好きな伊坂さん作品の中でも特に好きな作品。だからこの原作が映画化されると知った時はうれしさと怖さ半分、でもキャストが加瀬君と岡田君だと発表になったら、もう安心でした。だって二人ともイメージぴったりなんだもん。春は私の超タイプ。その春の役が岡田君なんてうれしすぎるじゃないですか。
映画は原作のイメージ通りに仕上がっていました。それは脚本の良さに加え、加瀬亮、岡田将生、父親役の小日向文世、このメインの3人が原作のイメージ通りのキャスティングだったことも勝因の一つではないでしょうか。加瀬君と岡田君の声が結構似てて、時々今はどっちがしゃべったんだ?と思ったりするシーンもありましたよ。
『春が二階から落ちてきた』
この言葉で始まり、この言葉で終わるのは原作と同じです。
そして特に最初に春が二階から落ちてくるシーンがね、私が想像していたのとぴったり同じだったんですよ。春が超カッコイイの。春の役は岡田君じゃなきゃできなかったかもしれない、最後まで観て本当そう思いました。
兄・和泉は大学で遺伝子を研究し、弟・春は壁に書かれた落書き=グラフィックアートを消すアルバイトをしている。彼らはとても仲のいい兄弟だったが、彼らの母は若くして亡くなり、父もまた癌を患っていた。
仙台市内では連続放火事件が発生。春は放火現場に必ずグラフィックアートが残されていることに気づく。そしてそこに残されていた暗号が、遺伝子配列に関係しているということを発見。放火と落書きと遺伝子の関係は?
ストーリーは結構原作に忠実でしたが、原作でかなり細かく説明されている遺伝子についてはかなりさらっとした描き方でした。でもこれはこれできっと正解。原作はこの遺伝子と放火の関係を解くミステリー要素も結構多く占められていましたが、映画は原作が描いていたうちの「家族の絆」の方に重点を置いていたので、このミステリー部分は正直多分そんなに重要視しなかったんですよね。
また嘘をつくときの癖、ラストの対決のシーンなど、原作と多少違う部分はありましたが、それでも原作の世界観はそのまま、『最強の家族』の物語が描かれていました。
賞賛に値する父
強くてカッコイイ母
頭が良くて弟思いの優しい兄
心から兄を慕う弟
24年前に起きた忌々しい出来事。だけど咄嗟に神様に相談して、「自分で考えろ!」と言われた父が即座に決断した答え。
そんな決断をすぐにできる人は少ないはず。
だけど和泉と春の父はすぐに決断した。
そして彼らは最強の家族になった。
誰になんと言われようと、周りから後ろ指さされようと、彼ら家族の絆は本物だった。家族の愛は重力を超える。
原作にあった名台詞。本で読む分には素敵な言葉でも、実際口にしたら格好つけすぎてたり、違和感があるものってありますよね?伊坂さんの小説の台詞ってそういうものが多いと思うんです。だけどその名台詞の一つ一つがすごく自然だったんですよね。
『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ』
『楽しそうに生きていれば、重力なんて消える』
『子供の頃から、大事な時には兄貴がいたから、だから、いないと不安なんだよ』
夏子さんの登場シーンは笑えました。あの写真の数々に笑わずにはいられなかったですよ。これはかなりうまい演出。これは映像でだからこそ見せられる面白さだったかもしれません。
そんな夏子さんだけが気づいていた春の心の傷。ストーカーは侮れないです。
春が真剣に考えて考えて考えて、そしてやったこと。
父はそれを「大事なこと」と言うんですよね。
このことについては賛否両論だと思うんですが、私は断然”アリ”派なんですよ。だから多分春には和泉と同じことを言ってしまうと思います。
だって春はジョーダンバットを持って、悪者をやっつけに行っただけなんだから。
期待を裏切らないいい映画になっていたので、満足です。
でも原作を読んでいない人は原作を読んで欲しい。映画では描ききれていなかったところが原作には沢山あります。長い話を2時間にまとめる、というのは、それだけ削ってしまっていることにもなるので、是非2時間では描ききることのできなかった「重力ピエロ」の世界を原作でも堪能して欲しいです。
ラッシュライフもゴールデンスランバー も映画化ですよね。
黒澤も青柳も堺雅人を持ってくるとは・・・。
こちらも楽しみです。
試写会(@厚生年金会館)にて鑑賞
★★★★