- 少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)/湊 かなえ
- ￥1,470
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高2の夏休み前、由紀と敦子は転入生の紫織から衝撃的な話を聞く。彼女はかつて親友の自殺を目にしたというのだ。その告白に魅せられた二人の胸にある思いが浮かぶ――「人が死ぬ瞬間を見たい」。由紀は病院へボランティアに行き、重病の少年の死を、敦子は老人ホームで手伝いをし、入居者の死を目撃しようとする。少女たちの無垢な好奇心から始まった夏が、複雑な因果の果てにむかえた衝撃の結末とは?
『告白 』がすごかったのでね、新刊が出ると知ってすぐに予約しちゃいました。『告白 』、私は好きでしたけど、後味の悪さもあって賛否両論。次はどんな作品がくるのだろう？と思ったのですが、こちらも後味の悪さは相変わらず、さらに「人の死ぬところが見たい」という二人が主人公なんだから結構悪趣味です。私は嫌いじゃないですけどね。
物語はある一通の遺書から始まります。
そして高校生の由紀と敦子の一人称で交互に語られていく。『告白 』と同じですね。
でも今回の作品『少女』には、沢山の毒や悪意がありながらも、ユーモアも交え、そしてさらに少女たちの友情も描がかれているところが良いなぁと思いました。正直衝撃度や迫力は『告白』の方が断然上。だけど2作目の『少女』もなかなか読み応えのある一冊でしたよ。
同じ中学から同じ高校に行くことになった由紀と敦子。親友だったはずの二人の間には、あることがきっかけで微妙に息苦しい空気が漂うようになってしまった。小学五年生の時以来、喜怒哀楽を一切見せない由紀は敦子を冷めた視線で見つめる。敦子は由紀に嫌われていないか、裏サイトに誰かから悪口を書かれていないか、いつもビクビクしている。
そんな二人は、影を帯びた転校生の紫織から、親友の自殺を見つけたという話を聞かされる。本当の死を知っているから映画を観ても泣けない、そう恍惚と語る紫織姿を見て、『死体を見たい、身近な人が死ぬ瞬間を見てみたい』と思うようになる由紀、『死を悟れるようになりたい』と思う敦子。
二人は夏休み、それぞれ「死」を見たいがために、敦子は老人ホーム、由紀は病院へボランティアへ行くことにする。
由紀は常に冷めている感じで、敦子のことも冷静に、むしろ見下したように語る。だから最初は由紀は人目ばかりを気にする敦子のことを馬鹿にしているのかな、と思っていたんですよね。
一方、由紀のことが大好きなのに、あることがきっかけで由紀を信頼しきれなくなってしまった敦子。由紀が何を考えているのかさっぱりわからなくなってしまった彼女は、常に不安で怯えていて、剣道で全国優勝したことがあるとは思えないほど弱々しく、かわいそうな感じさえ受けていました。
そんな全く性格の違う二人は、紫織の話を聞いて同じことを思う。『人が死ぬ瞬間が見たい』と。
結構な悪趣味ですよね。身近な人の死を語る友人をうらやましく思い、自分もそれを経験したいと思ってしまう女子高生って。
悪趣味だけど、彼女達にはそれぞれ『死』を知りたいと思う理由があります。そう思ってしまうほど辛い思いをしていた。でもね、彼女達が抱えていた辛さはわかるけど、だからって死を見たいって思ってしまうその気持ちは正直私はわからなかったなぁ。
ただそんな不純な動機ではあっても、二人はそれぞれボランティアとして出向いているので、ボランティアとして働きます。そしてそこで出会った人たちによって、『死』を見ようとしていたはずが人助けをしたりなんだかちょっとイイコトをしはじめちゃったりするところがいいんですよ。人間らしいというか、なんというか。だけどそうやってせっかく二人はイイコトをしたはずなのに、悪趣味な好奇心から始まった因果なのか、それが思わぬ結果を招きます。ちょっと予想外の展開に驚きでした。まさか・・・そうきましたか。
でもね、由紀と敦子は大丈夫でしたけど、正直由紀の彼氏は怖かったですよ。完全にいっちゃってますよね？それを知ってもなお、彼と一緒にいられる由紀はある意味すごいと思っちゃいました。
正直あまりにも身近なところで登場人物が繋がりすぎているところがご都合主義的な感じもしましたが、展開は見事でしたね。
そして何より由紀の思いがすごくよかった。私、こんなことしてもらったら本当きっと涙止まらなくなるよ。最初は由紀の冷たくて何を考えているのかわからない感じが、敦子じゃないけどちょっと怖い感じだっただけに、その心の奥にあった優しさに感動でした。でもそんな由紀が軽い気持ちでしたことで、ある人を追い詰めてしまうことになるとは・・・。
死とは何かを知っている彼女が、まさか簡単に死を選ぶだなんて思ってもいなかった。（中略）
でも、本当に、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
あたしの親友も、きっと今頃はそう思っているはず。
『あたし』は知らないことを知っていたはずの『あたしの親友』。彼女は果たしてその死をどう思ったのか、それがちょっと知りたいと思いました。
湊かなえさんの三作品目はどんなのがくるのかなぁ。また楽しみです。
★★★☆