有栖川有栖 『女王国の城』 | 映画な日々。読書な日々。

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女王国の城
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書評 /ミステリ・サスペンス


舞台は、急成長の途上にある宗教団体の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、4人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。〈城〉と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し……。


本が好き! より献本していただきました。


有栖川有栖さんの本を読むのは初めてでした。シリーズ物の4作目ですが、私のように前3作を読んでいなくても大丈夫なような作りにしてくださっているそうです。読んでいればなお楽しめたんだと思いますけどね。

献本を申し込んだ時から覚悟はしていましたが、上下二段、500ページ越え、やっぱりかなり長かったです。本のお値段もちょっと高め。


前作から15年ぶりの新刊で、時代設定は前作から半年後の1990年。

宇宙からの来訪者・ペリパリの降臨を待つ宗教団体・人類協会の城に向かった江上を追って神倉に向かったアリス、マリア、望月、織田。その城で起きる殺人事件。警察との接触を頑なに拒む人類協会、城に閉じ込められた推理小説研究会(EMC)のメンバー、そして過去に迷宮入りしていたもう一つの殺人事件の謎。


クローズド・サークルものですが、携帯電話が普及していない時代だからこそできる設定でした。これ、今の時代設定だったらどうやったってクローズド・サークルものにはできないですからね。


500ページもあるからか、比較的ゆっくりと話は進んでいきます。あまりにもゆっくりなので、正直ミステリーのわりに緊迫感はさほどありません。殺人事件が起きているというのに、なんだか余裕な雰囲気が漂っていたんですよね。


城に閉じ込められたEMCのメンバーはなんとか外部と連絡を取ろうとしたり、脱出を試みたりするのですが、なかなか成功しません。人類協会自体はさほど怪しい集団には思えなかったし、彼らに危害を加えるようには思えないのに、外部との接触は頑なに拒み、彼らを監禁しつづけます。その理由が全く理解できずに、アリス達と同様に私も結構いらいらしてしまいました。


そんな中、一人冷静で余裕な江上先輩。江上先輩は事件の真相を少しずつ解明していきます。この全く慌てない堂々とした姿がカッコイイです。


また複雑な城の状況を所々図解してくれているので、頭の中でアリス達がいる場所をイメージしやすかったのが良かったです。


そしてミステリーの中にもアドベンチャー&アクションあり?聖地からの脱出シーンは結構ドキドキで自分がマリアになったかのような臨場感を味わえました。脱出してからは鬼ごっこはかなり辛そうでしたけどね。まさに四面楚歌状態。


ミステリーを読む時はいつもだいたい私も推理しながら読むのですが、この本に限っては何をどう推理していいかわからず、推理することを諦め、ただ結論を知りたいが為に読み進めました。読者への挑戦も受けられませんでしたよ。


江上によって明かされる事件の真相。正直連続殺人事件の真相としては結構地味で、大きな驚きがあるわけではありませんでした。でも小粒ながらも1つ1つが納得のいく説明ですごくよく練りこまれていたのを感じました。

唯一、拳銃があった場所だけは最初の方から予想できてましたが、いつ?どうやって?は全くわからなかったし、何より人類協会が頑なに外部との連絡を絶ちたかった理由がかなり意外でした。そういう意味もあるんだなと妙に感心。


このシリーズ、いつ出るかわからない次の5作品目で完結になるようですが、どうやら「双頭の悪魔」がとても評判が良いようなので、順番が逆になってしまいますが今度そちらも読んでみたいと思います。


★★★