垣根涼介 『君たちに明日はない』 | 映画な日々。読書な日々。

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君たちに明日はない (新潮文庫 (か-47-1))/垣根 涼介
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リストラを専門に請け負う会社に勤めている真介の仕事は、クビ切りの面接官。昨日はメーカー、今日は銀行、女の子に泣かれ、中年男には殴られる。はっきり言ってエグイ仕事だ。それでもやりがいはあるし、心も身体も相性バッチリの恋人もいる。そして明日は……? 笑って唸って泣かされる、恋と仕事の傑作エンタテインメント!


文庫の新刊にあったのが気になって手に取りました。なかなか面白かったです。


リストラを専門に請け負う会社に勤めている村上真介の仕事は、要請を受けた会社に出向き、リストラ候補者となった人たちと面接し、彼らを早期退職に追い込むこと。真介はあらゆる業界のリストラ候補者達と面接をし、何で私が?という面接者をことごとく正論・理論で言いくるめていきます。そしてさりげなくリストラ候補者だった陽子と恋に落ちたりしながら、真介は面接を続けていきます。


真介の仕事は確かに残酷だし、エグイ。それでも真介は、面接者の経歴にきちんと目を通し、リストラ候補者になった理由を的確に本人に伝える。そして泣きつかれようと、殴られようと、恨まれようと、真介は自分がやるべき仕事を遂行していく。この真介がなかなか格好良くてできる男なんですよ。


実は真介もかつて広告代理店に勤めていた時にクビを切られた社員だった。そしてそのときの面接官だった今の会社の社長に引き抜かれて、この仕事を始めた真介。


正直真介の広告代理店での働き方は確かにふざけていたかもしれないけれど、営業マンは数字さえやっていれば別に文句を言われる筋合いないと思うんですけどね。私は真介の計算高さや頭の良さは結構好きです。そしてその真介の考え方がリストラ請負の仕事にはひどく有効だと言った社長。それ以来、真介はこの仕事を続けている。


一切今まで接点がなかった人だとは言え、人のクビを切る仕事って結構精神的に辛そうな気がします。その人の人生を左右してしまうわけだし、リストラ候補者になってうれしい人なんているはずないし。だから時々やりきれない気持ちにもなる。それでもこの仕事はやりがいがあるし、何より真介に向いている。リストラ候補者の訴えをきちんと聞きながらも、彼らに言い返せないぐらいの説得力で早期退職に追い込む真介。


良かったのはACT3の「旧友」

かつての同級生と面接することになった真介。面接の時は冷たい面接官にしか見えない真介の優しさ、旧友を思いやる気持ちがなんとも言えずいいです。面接されている人はその真介の誠意にはなかなか気づけないと思いますけどね。

「私は面接をする際には、その相手の将来のことも出来るだけイメージングして対応させていただこうと心がけています。それがこの仕事をやる、私の最低限のモラルだと思っているからです。」

この真介の姿勢が本当格好いいですね~。


そして若干の私情をはさんで面接者・昌男の将来を考え、最善の道へと導いてあげようとします。


「仕事が人を変える」ことは絶対にあると思います。

人には向き不向きがあるから、どんなに出来る人だって合わない仕事や環境にいたら力を発揮できないままですからね。昌男の勝負が上手くいくといいな、と思いました。昌男の妻・彰子もいい女でしたね。


また最後に登場する真介の昔の彼女もカッコイイですね。さすが真介が惚れた女だけあるな、なんて思いました。


★★★